林桂選

2006年3月29日上毛新聞掲載


晴れの空蛍光ペンの青の色
 中之条中1年 新井実穂子
【評】「蛍光ペンの青い色」は、「晴れの空」のたとえ。「晴れの空」は「春の空」のように季語を使った方が深い表現になるでしょう。
大根の白さが今日の広い空
   渋川小野上中1年 一場  輝
【評】「が」以降に展開する後半が、論理や現実の範囲では浮かんでこない感覚的なものです。前半と後半のイメージの距離感が絶妙。
グラウンドさよなら告げる春の風
      妙義中3年 吉岡 大地
【評】グランドにさよならを告げるのは「作者」。終わった三年間の部活を思っての言葉でしょう。卒業の「春の風」です。
桜咲くそんな頃には何してる
      妙義中3年 矢嶌みなみ
【評】桜の咲く頃には、新しい生活が始まっているのはたしかです。でも、いまはそれがどこでどんな形なのか想像できません。期待と不安。
みぞれふり妙義山が白くなる
      妙義中3年 三田 隼人
【評】「妙義山が白くなる」がうまい。これは積もったためではなく、霙が降るときの視界のようすでしょう。霙の妙義の描写として秀逸。
春雨がきのうの夜に庭にふる
      妙義中3年 清水 泰河
【評】「きのうの夜に」がおもしろい。おそらく昨夜は音だけ聞いて雨を確認せずにいて、朝に庭のようすを確認したのです。
歌声が常に聞こえる春浅し
  渋川小野上中3年 中澤 奈美
【評】早春の季節感を「歌声が常に聞こえる」で表現。歌声に気持が向いてゆくという中に、春を喜ぶ思いが動いています。
教室の時計も急ぐ二月かな
   渋川小野上中3年 佐藤 未菜
【評】二月は、二、三日短いだけなのにあっという間に過ぎる感じです。まして受験のシーズン。「時計も急ぐ」の誇張表現がおもしろい。
電柱のてっぺん見てた春の風
   渋川小野上中3年 佐藤 駿一
【評】「見てた」のは、「作者」でしょうが、「春の風」とも読めます。なぜ、そんなところを見ていたのかは謎。でもいかにも春らしい。
福寿草つめたい空にうつし出す
   渋川小野上中3年 長久保徴子
【評】福寿草の咲く季節。空にはまだ冷たい空気が残っています。福寿草の黄色い暖色が、一層映えるのです。感覚のよい作品です。
満たされた未来を映して桜咲く
     安中一中3年 岸田  晃
【評】満開の桜が持つ充実感を「満たされた未来」というたとえで表現しています。「映して」の表現の妙。感覚も、視点もいい句です。
明日卒業少しさみしい帰り道
     安中一中3年 佐藤 綾香
【評】卒業前日の下校の気持ち。通い慣れた通学路も最後と思うと「少しさみしい」。「少し」に前日の微妙な感覚が表現されています。
春の風卒業までの砂時計
     安中一中3年 青柳友里奈
【評】「卒業までの砂時計」の砂は、「作者」の心の中で落ち続けているのかもしれません。春の風が卒業間近を感じさせます。
帰り道抱き締めたくなる春の風
      六合中3年 山本 圭佑
【評】春の訪れを狂おしく感じる表現として、おもしろい。良寛は春を迎える思いを「むらぎも(群肝)の心うれしも」と詠んでいます。