鈴木伸一選

2006年5月17日上毛新聞掲載


たんぽぽのわたげをのせた風がくる
前橋山王小5年 岩井 千晶
【評】タンポポの絮(わた)を乗せて、岩井さんのところに暖かな風がふいてきます。春の神様から届けられた、すてきなプレゼントみたいですね。
テスト中テスト用紙ににらまれる
前橋山王小5年 小池 友稀
【評】この気持ち、よくわかるなあ。解けない問題があったりすると、本当にこんな感じがするよね。とても正直な俳句で、いいと思います。
水たまりしずく落ちれば花がさく
前橋山王小5年 田中 琴音
【評】雨上がりの情景でしょう。水たまりにしずくが落ちて、花のように波紋が広がります。一瞬のできごとを、しっかりと書きとめました。
3階のまどから春がよく見える
前橋大室小5年 高尾 里奈
【評】五年生に進級して、はじめて三階の教室になったのでしょう。春景色が遠くまでよく見えて、気持ちも自然とはずんでくるようです。
さくらさく桃ノ木川のむこうがわ
前橋桃川小6年 橋本  香
【評】川の向こう側に続くサクラの並木。こうして少し離れた所から眺めると、一段と美しく思われます。学校への行き帰りが楽しいですね。
桜散る俳句作りにとまどうよ
東吾妻原町中1年 山本 雄大
【評】はじめて俳句を作るときは、だれでもとまどいを感じるものです。でも、何度か続けていると、こつが分かってきて楽しくなりますよ。
桜咲き花びらが舞う夢の中
東吾妻原町中2年 上田 美鈴
【評】サクラの花びらが風に舞う様子は、夢とも現(うつつ)ともつかない不思議な美しさがあります。昔から多くの日本人を魅了してきた美しさです。
みな不安スタート見守る桜かな
東吾妻原町中3年 関  郁弥
【評】新学期というのは期待と不安が交錯し、気持ちも落ち着かないものです。中学三年生となれば、なおさらでしょう。私も、そうでした。
風の中つくしがいっぽんたっていた
渋川北中2年 唐沢 翔汰
【評】小さなツクシの中の大きな生命力が、簡潔な表現によって、はっきりと伝わってきます。唐沢君がツクシをよく観察した賜たまもの物でしょう。
ひらひらと蝶舞うときに春のにおい
渋川北中2年 井上 由梨
【評】チョウは飛びながら、かぐわしいにおいを撒き散らしているかのようです。井上さんの感性がとらえた、春という季節のにおいです。
さくら咲くなにかはじまる予感する
渋川北中2年 天田 弥希
【評】春は、確かに何かの始まりを予感させる季節です。もちろん、その予感を現実のものとするためには、行動しなければなりませんが。
春の風教室ぬけて空のはて
中之条中2年 柳沢 剛平
【評】教室を吹き抜けていった春風が、やがて空の果てへと至る。教室という日常的な場から、思い切ってイメージを飛躍させたのがいい。
部活動新入生と汗ながす
中之条中2年 濱野 大輔
【評】共通の目標を掲げ、それに向かって汗を流し、努力を続けてゆく部活動。そこには、学年を越えた連帯感が自おのずと生まれるようです。
道ばたの林の緑透き通る
中之条中2年 篠原  舞
【評】初夏ならではの透明感のある空気が、とてもよく感じられます。思わず深呼吸をしたくなるような、すがすがしい里山の光景ですね。
砂時計春の季節が落ちていく
中之条中2年 山崎 明菜
【評】砂時計は、時の流れを本当にリアルに感じさせるものです。じっと見ていると、「今」という時間を大切に生きねば、と思えてきます。
空を見て風を引っぱるつくしかな
渋川小野上中3年 佐藤 莉奈
【評】「風を引っぱる」という把握に感心しました。空へ向かってけなげに伸びてゆこうとするツクシの様子が、ぱっと目に浮かんできます。
坂道にさわがしいほどシバザクラ
渋川小野上中3年 丸山  唯
【評】シバザクラが地をはって広がり、色鮮やかな絨毯(じゅうたん)を敷いたみたい。ちょっとカラフル過ぎて、騒がしい感じもしないではありませんね。
雨一つ新芽について光りけり
渋川小野上中3年 木暮 孝薫
【評】一滴の雨粒は、萌え出た新芽をはぐくむ、いのちの水であるかのようです。とてもみずみずしく、心が癒やされる作品だと思いました。
消しゴムのかどがなくなる五月かな
渋川小野上中3年 樋田 亮介
【評】新学期が始まって一か月。新しかった消しゴムもかどが取れて、だいぶ丸くなりました。日常の中に、季節のうつろいを発見した俳句。
日が包み祖母の両手に柏餅
高崎片岡中3年 岡田 仁美
【評】祖母が両手で大切そうに持つ柏餅。さらに、その手を暖かな日差しが包んでいます。気持ちのこもった柏餅の、何とおいしそうなこと。
稽古中竹刀の先に風光る
高崎片岡中3年 中里 麻利
【評】作者は剣道部所属なのでしょう。むろん稽古(けいこ)には真剣に取り組んでいるのですが、そうした中にも季節を感じ取る余裕があるのがいい。
木の下にボールのような子猫かな
高崎片岡中3年 高橋 大樹
【評】「ボールのような」という的確な比喩(ひゆ)で、愛らしい子ネコの様子を活写。子ネコを見る作者の目に、愛情がこもっているのが好ましい。
公園に家族連なり八重桜
高崎片岡中3年 青梅 友樹
【評】おおぜいの家族連れでにぎわう公園。「連なり」という表現にユーモラスで温かみのある視線が感じられ、思わず笑みがこぼれます。
朝七時噴水周辺花曇
高崎片岡中3年 内田 健太
【評】一見、ぶっきらぼうな報告調の書き方という印象ですが、実は、これが思いのほか効果的。花曇の雰囲気が、よく出ていますものね。
ブランコで青い空をけり上げる
富岡妙義中3年 三ツ木 綾
【評】「けり上げる」という思い切った表現に若さがみなぎり、好感が持てます。生き生きとした作者の表情が、目に浮かんでくるようです。
どこにいてもおいかけてくる桜かな
富岡妙義中3年 奥平 彩乃
【評】周りにサクラの木は見当たらないのに、花びらが風に乗って来ることってありますね。そんな驚きが、この作品を生んだのでしょう。