林桂選

2006年5月24日上毛新聞掲載


校庭のしだれ桜にあり登る
下仁田小坂小5年 永井 詩織
【評】「校庭」「しだれ桜」「あり」と段々小さなものにズームしてゆく書き方がいい。「登る」姿が、読者の中で大きくなります。
桜の木鳥がとまってゆれている
下仁田小坂小5年 茂木 幹太
【評】桜の花の蜜を吸うために鳥が枝にとまっているのです。花で姿はよく見えないのですが、花枝がゆれているので、分かるのです。
鳥たちが飛んでしずくのダイビング
前橋山王小5年 むとう裕子
【評】雨のしずくをたたえた木の枝でしょう。鳥が飛び立つと、しずくが落ちるのです。「ダイビング」のたとえ表現がおもしろい。
卒業式涙ひとつが勇気になる
下仁田小坂小6年 斉藤 典明
【評】卒業の涙は六年間が充実していたからこそのものでしょう。そして、その涙が次の生活への勇気を与えてくれることを感じています。
一年生桜の花びら私にくれた
前橋桃川小6年 藤井 菜々
【評】一年生の世話役の六年生。「花びら」は、一年生のお礼の気持ちでしょう。一年生のかわいらしさと、それが分かる六年生のすてきな句。
木のえだが忘れ物のジャンパーもっている
前橋桃川小6年 鯉渕 優介
【評】誰かが、木の枝にかけておいたものでしょう。かけられた木は、誰かこのジャンパーを忘れていませんかと呼びかけているように見えます。
登校班桜の天上桃の木川
前橋桃川小6年 高柳亜理沙
【評】「天上」は「天井」でしょうか。桃の木川沿いの桜並木の花トンネルをくぐっての登校です。楽しい、心の弾みが分かるような句です。
風の子が花びら取りっこ大さわぎ
前橋大室小6年 奥野江理奈
【評】風に舞う桜吹雪。それは風の子どもが、花びらを取り合っているためだと考えました。桜吹雪が一層楽しく、美しく見えてきます。
春の雨かさに桜がついている
前橋二中1年 青木 拓也
【評】桜を散らす春の雨。その下を通ってきた傘には、花びらが付いていました。惜春の情と言いますが、思いはこんな時に生まれます。
メロンパン食べながら行く木の下を
前橋二中2年 小林 孝文
【評】「メロンパン」と具体的に書けたのですから、「木の下を」も、桜とか夏木立とか、具体的な様子で書けるともっとよくなります。
一年生白いシューズが光ってる
吉井入野中2年 渡邊のぞみ
【評】何から何まで新しいもので身を固めた一年生。その中でも、「白いシューズ」に一年生らしさを発見したのが作者です。感性がいい。
夜桜を部活帰りに見上げてる
中之条中2年 宮内 杏子
【評】桜のもとで、部活動をしていたのかもしれません。でも、花を見る余裕はなかったでしょう。部活の後のほっとした気分で見る夜桜。
セカンドで笑っているよたんぽぽが
中之条中2年 阿部 椋汰
【評】二塁付近に咲いたタンポポ。「笑っているよ」がほのぼのとしています。立派な球場ではなさそうですが、楽しい球場でしょう。
太陽と青空にあう日曜日
中之条中2年 唐沢 翔太
【評】「あう」の表現がおもしろい。もちろん、日曜日以外にも会っているはずですが、日曜日の気分があうことを感じさせるのです。
こいのぼり輝く星へ口開ける
中之条中2年 平形友里香
【評】大きな口が星に向けられて、今にも飲み込みそうなこいのぼり。夜のこいのぼりの句はあまり見かけません。それだけでも手柄です。
桜さきテニスコートをてらす朝
渋川小野上中2年 横山ゆかり
【評】「てらす朝」がいい。「花明かり」という言葉がありますが、朝の空気と花の明るさがひとつになった爽やかさが感じられます。
消しゴムの角が四角い四月かな
渋川小野上中2年 新井 美晴
【評】「四角い四月」の「四」の字が消しゴムの四角に見えてくるような作品。新学期の新たな気分も感じられて楽しい句です。
空高く希望ふくらむ桜風
東吾妻原町中2年 南雲  暉
【評】「桜風」という言葉は初見。作者の造語なのでしょうか。美しい言葉です。新学期を迎えた心の輝きを感じさせる句となっています。
せかそうかあたまが見えるふきのとう
渋川北中2年 高橋  望
【評】寒い時期の植物の成長はゆっくり。フキノトウも頭が見えてから大きくなりません。「せかそうか」といっても慌てないのがフキノトウ。
一面に広がる桜風にゆれ
渋川北中2年 永井佐和子
【評】この句の「桜風」は「広がる桜」「風にゆれ」と切れるもの。何本もの桜の木の花の空間は明るいものです。風で桜の光がゆれます。
花びらが自由をもらい風にのる
渋川小野上中3年 野村 健太
【評】「散る」というとネガティブに響きますが、それを「自由をもらい」とポジティブにとらえています。「風にのる」につながります。
夏来いとノートの落書き消して待つ
渋川小野上中3年 斉藤 千尋
【評】ノートの落書きを消す行為と、夏を待つ気持ちとの接点を探すのは難しい。しかし、その謎がこの句の魅力。感性のいい句。
晴れの日の春昼の祝い飛行機雲
高崎片岡中3年 松井 理貴
【評】春の晴れ渡った空。そこに残された「飛行機雲」に「祝い」の気持ちを見つけた感性がいい。春の気分が感じさせたものでしょう。
雪柳雨のしずくではずみだす
高崎片岡中3年 松本小夜子
【評】釣り竿のようにしなっているユキヤナギの細い枝は、少しの雨にも反応しそうです。「はずみだす」の表現が巧みです。
池の中スポットライト花筏(いかだ)
高崎片岡中3年 笹口 和秀
【評】池にできた花筏。丸く集まった花びらは、池にスポットライトが当たっているように見えるのです。若い感性でないとできないたとえ。
光る朝春が風の音(ね)歌いけり
東吾妻原町中3年 千田 高央
【評】春の朝を「光る朝」と表現。言葉の切れ味がいい。「春が風の音」を(あるいは「で」)歌うという屈折表現も、詩表現として巧み。