鈴木伸一選

2006年6月14日上毛新聞掲載


あたたかい春の声だと空も言う
沼田薄根小5年 芦川 卓矢
【評】春が来た喜びを、まるで空も語りかけてくるようだというのです。この句を読んだら、私の耳にもいろんな春の声が聞こえてきました。
おはようとつばめ横ぎる通学路
下仁田小坂小5年 神戸  司
【評】日常生活の中に、しっかりと季節感をとらえています。「横ぎる」という言葉で、軽やかに飛ぶツバメの姿も、ぱっと見えてきますね。
日がしずみ悲しくなっても月が出る
前橋笂井小6年 須田 まい
【評】日がしずむと、何だか急にさびしくなったり悲しくなったりします。でも、それをなぐさめてくれるように、きれいな月が出てきます。
春の風しゃくやくのかおり飛びちるよ
前橋笂井小6年 高柳 佳穂
【評】シャクヤクの花は独特のいい香りを放ちますから、「飛びちる」という表現が生きるんですね。ただ、季節は春というより初夏の感じ。
春とともに去っていった町ののらねこ
群馬大附小6年 深町 真嗣
【評】近所の野良ネコが、春が終わると共に姿を見せなくなりました。どこでどうしているのかなあ、とちょっぴり心配になった深町君です。
目にしみた海のむこうの夕焼が
富岡妙義中1年 村上 央典
【評】「海のむこう」というとらえ方がいい。まだ見ぬ国へのあこがれや夢が広がり、夕焼けを目にしみるほど美しく感じさせたのでしょう。
夏が来て生徒総会行なった
渋川小野上中1年 朝比奈一磨
【評】事実がありのまま書かれていますが、その分、はじめての生徒総会に臨む緊張感や心の高ぶりが、ダイレクトに伝わってくるようです。
青い空光の種をまいている
渋川小野上中2年 新井 美晴
【評】「光の種」という把握がすばらしい。キラキラと輝く光の粒子が、空いっぱいに広がるような感じがします。季節は、夏でしょうね。
教室が暗く感じる5月かな
渋川小野上中2年 横山ゆかり
【評】五月は、新学期が始まって一カ月あまり経(た)ち、ちょっと疲れが出て気分も沈みがちになる時期。今年は、日照時間も少なかったですし。
椅子揺らし雲をながめる昼休み
渋川小野上中3年 樋田 亮介
【評】「椅子揺らし」という記述で、のんびりとした昼休みの雰囲気が、よく伝わってきます。季節とすれば、やはり春がふさわしい感じ。
夏へむけ扉を開く鍵見つけ
中之条中2年 福島 弘樹
【評】季節の扉を開く鍵は、もちろん想像の産物ではありますが、半面、なるほどそれってありそうだな、と思わせる説得力も持っています。
校庭に一人たたずむ帽子かな
中之条中2年 高橋千沙都
【評】たたずんでいるのは帽子をかぶった人ですが、それを「たたずむ帽子」と省略して表現するのが、短詩形の方法。これが効いています。
アオガエルじしゃくのようにくっついた
中之条中2年 木下沙世子
【評】四肢(しし)の指先にある吸盤で、枝や葉の表にぴたりととまっているアオガエル。「じしゃくのように」は、それをずばりととらえた表現。
夏の風と一緒に来るぞ県大会
中之条中2年 岡部 瑞稀
【評】運動部所属の人たちにとって、県大会は夏の最大のイベント。この句からも、岡部さんの意気込みと緊張が、ひしひしと感じられます。
自転車で入道雲に突進だ
中之条中2年 山田晏寿美
【評】作者の年齢に見合った思い切りのいい表現に、好感を持ちました。夏という季節そのものに、全身で飛び込んでゆくような印象ですね。
かけぬける風は空色初夏の味
中之条中2年 小池 若奈
【評】さっと吹き抜けていった風の清涼感を、「色」と「味」とでうまく表現しました。口の中がすーっとするような、気持ちのいい俳句。
夏の空どこまで続く青い道
前橋二中2年 中村 菜実
【評】夏の空に、どこまでも続く道を思い浮かべた中村さん。「青」という色がすがすがしい若さを感じさせ、とてもいいなあ、と思います。
春雷のあとの青空星がふる
吉井入野中2年 三木 啓至
【評】春雷の後の青空が、そのまま夜を迎え、やがて満天の星が光り輝くのです。その情景を脳裏に思い描けば、おのずと心も満ち足ります。
初夏の日々風を感じてひた走る
六合中2年 本多 一樹
【評】部活動で毎日、ランニングをしているのでしょう。苦しいときもあるでしょうが、そんな中でも季節を感じ取るゆとりがあるのがいい。
週末を畑で過ごす初夏の日々
六合中2年 湯本  智
【評】畑仕事の手伝いをしているのでしょう。大変だろうとは思いますが、だらだらと過ごすより、はるかに有意義な週末に違いありません。
青空に夏風吹いて雲をころがす
六合中3年 小島亜希穂
【評】「雲をころがす」という表現がいいですね。形を変えながら次々に流れてゆく雲の動きが、とても生き生きとしたものに感じられます。
青き空燕飛びかう平和かな
渋川北橘中3年 阿部 春乃
【評】「平和」という重いテーマを、きちんと考えようとしている姿勢に共感。今の平和が本物かどうか、私もあらためて考えてみましょう。
わたげ飛ぶ私の息で春を生む
渋川北橘中3年 高梨奈緒美
【評】タンポポの絮(わた)に息を吹きかけます。飛ばされた種は来年、どこかで花開きます。種を飛ばした作者は、あたかも春の女神のようですね。
炭酸の泡になりたいこの暑さ
渋川北橘中3年 狩野  誠
【評】暑いときの炭酸飲料はおいしいものですが、いっそのこと自分が炭酸の泡に変身してしまえば、もっと涼しいというのです。なるほど。
京都の朝静かな町に笑い声
前橋六中3年 榊原 由夏
【評】けたたましい笑い声ではなく、友だち同士の、心の通い合った温かい笑い声だと解したい。京都には、確かにその方が似合っています。