林桂選

2006年6月21日上毛新聞掲載


さくらの木花の花火をうちあげる
高崎国府小5年 市村友香莉
【評】花の咲いた桜の木全体のようすを、打ち上げ花火に見たてました。「花の花火」の「は」音が言葉のリズムがよく整えています。
春風がいっぱいふいてまたあした
沼田薄根小5年 太田千香子
【評】春風の中で一日遊んで、友だちと別れるときの「またあした」。春風にもお別れのあいさつをしているのかもしれません。秀作です。
そよ風にふかれて姉が昼ねする
下仁田小坂小5年 永井 詩織
【評】土曜日か日曜日のお姉さん。あるいは中学校に入ったばかりで、毎日の勉強や部活に疲れているのかもしれません。やさしい視線の句。
チューリップ虫のおしろをさかせてる
下仁田小坂小5年 石井 佑樹
【評】チューリップの花をお城に見たてました。蜜を吸いにやって来る虫たちを守るお城です。花をお城に見たてる発想がおもしろい。
そよ風にふかれて私も風になる
下仁田小坂小5年 林 亜紀乃
【評】「私も風になる」がいい。そよ風の気持ちよさに、風と一体になる感じなのでしょう。永井さんのお姉さんもきっと同じでしょう。
風車初夏の風と待ち合わせ
下仁田小坂小5年 松本 美咲
【評】風が吹いてくるのを待っている風車。「待ち合わせ」ですから、約束はできているのです。風車はしばらくすると必ず回るはずです。
春の風修学旅行をつれてきた
高崎国府小6年 磯貝  萌
【評】待ち望んでいた修学旅行がやって来ました。その気持ちを「春の風」に重ねています。「つれてきた」の表現にも工夫がみられます。
ホームラン打って見上げる青い空
前橋桃川小6年 青木  祐
【評】同じような句は多いのですが、「青い空」に重ねた作者の爽快感は、他の誰のものとも違っていることでしょう。
春の風電車の音をひびかせる
前橋二中1年 坂本  知
【評】春風に乗って届く電車の音です。「ひびかせる」の使役形表現が巧み。「吹きおこる秋風鶴をあゆましむ」(石田波郷)があります。
生い茂る緑と一緒に僕の空
前橋二中2年 只木 琢也
【評】植物がどんどん生い茂ってゆく強い生命力と、自分の中に呼応する力があることを感じているのでしょう。「僕の空」が力強い表現。
山の木々空と混じって初夏になる
中之条中2年 金井 実紀
【評】「山の木々空と混じって」がいい。稜線の木々が茂ってその姿を変えてゆくのでしょう。夏の到来をおもしろい視線で捉えました。
光はじく榛名湖の水すきとおる
中之条中2年 望月 恵介
【評】光をはじき輝きながらも、底に降りてゆく光が深さを感じさせる榛名湖。その二面をとおしての湖の描写力は見事です。
妹が素足で走る田んぼかな
中之条中2年 小渕 彩香
【評】田植えの中での一場面でしょう。最初は恐る恐るでも入ってしまえば、足に伝わる田の泥の感覚を喜んで元気に走り回る妹さんです。
青空に夏風が運ぶ木のにおい
中之条中2年 山田 礼子
【評】青嵐という季語がありますが、まさにそれでしょう。スケールの大きい句になっています。木々の匂いを空にまでふりまく風です。
春風の背中が見える緑の葉
渋川小野上中2年 新井 晴美
【評】緑の葉を吹き分けてゆく春風。それを「春風の背中が見える」と表現したのでしょう。春風の後ろ姿を見送るイメージです。
夕立があんぱん欲しさやってくる
渋川小野上中3年 野村 恵子
【評】「欲しさ」の後に「に」が欲しいところ。永田耕衣という俳人は、「あんぱんの葡萄の臍や春惜しむ」などあんぱんをよく詠みました。
木漏れ日が新しい朝を迎えてる
渋川小野上中3年 宮 ゆりか
【評】木漏れ日のまぶしさ。光は日々新たに輝くことを感じさせます。「新しい朝」は、そうした感覚を踏まえてのものでしょう。
立っているだけで決闘の灼熱かな
渋川小野上中3年 斉藤 俊介
【評】「念力のゆるめば死ぬる大暑かな」(村上鬼城)を下敷きにしているでしょうか。「決闘」は、鬼城の「念力」に負けないアイデア。
雷が鳴ってきそうな試合かな
渋川小野上中3年 平方 嗣士
【評】下手な試合をして、監督の雷が鳴ってきそうだというのではもちろんないでしょう。空模様が急変しての試合。気もそぞろになります。
風が呼ぶ五月の屋根につばめの子
渋川小野上中3年 野村 詩織
【評】「屋根の」ならば、「風が呼ぶ」のは「つばめの子」。「に」なので、「風が呼ぶ」のは「五月」でしょう。五月の枕詞のような響き。
のそのそと日差しをあびる毛虫かな
渋川小野上中3年 佐藤 大樹
【評】日差しの中を移動の毛虫。外敵に襲われる危険に、精一杯に体を動かしています。しかし「のそのそ」にしか見えない滑稽さと悲しさ。
幸せもいっしょにさがすクローバー
中之条中3年 綿貫 美咲
【評】四つ葉のクローバー探し。四つ葉を探すのは幸せになれると信じるからです。四つ葉探しというよりは幸せ探しだと気づいたのです。
雨に濡れ京の匂いがしみやすく
六合中3年 山本 勇紀
【評】京都の雨に濡れた作者。しかし、雨が衣服に染みこむのと一緒に、京の匂いも染みこんでくるのを感じます。旅情のなせるわざです。
草笛をならして空へと音おくる
高崎片岡中3年 佐々木賢人
【評】「空へと音おくる」がうまい。草笛の音が広がってゆくようすを、大きいスケールで描いています。気持ちよく吹いている草笛です。