鈴木伸一選

2006年6月28日上毛新聞掲載


修学旅行行きはもうじゅう帰りはろばだ
前橋桃川小6年 茂原 大亮
【評】旅行先ではなく、行きと帰りの様子に着目したのがユニーク。行きは元気いっぱいだったのに、帰りはすっかり疲れちゃったんですね。
高徳院大仏じっとぼくみてる
前橋桃川小6年 清水 征弘
【評】鎌倉の大仏がやさしい表情で、静かに清水君を見ています。何だか心の中まで見られているようで、自然と気持ちも引きしまります。
八幡宮白い鳩が光ってる
前橋山王小6年 松井 雄介
【評】白いハトは平和のシンボルと言われていますが、それが日差しを浴びて光っているというのが印象的。場所は、鎌倉の鶴岡八幡宮かな。
朝の海浜辺にのこる波の跡
前橋山王小6年 根岸 幸司
【評】江の島近くの海岸を、みんなで散歩したのでしょう。潮風も海鳥の鳴き声も波の跡も、すべてが修学旅行の大切な思い出になります。
雨がふり大仏の目にはなみだあり
前橋山王小6年 長谷川みき
【評】鎌倉大仏の顔を、雨が流れ落ちます。もし、それが世の中のいろんな出来事に大仏が流した涙であったとしたら、悲しいことですね。
ゆうやけで赤く染まった鎌倉で
伊勢崎名和小6年 水戸  葵
【評】鎌倉の夕焼けは、群馬で見るよりずっと美しく感じられたのでしょう。修学旅行では、ふだんよりも感覚が鋭くなるのかもしれません。
アメンボが水の上でぼんおどり
伊勢崎名和小6年 西村 南美
【評】水の上を行ったり来たりするアメンボの様子を、「ぼんおどり」にたとえました。軽妙なタッチの作品で、楽しく読むことができます。
夏祭りやっぱりはぐれた私の弟
前橋月田小6年 遠藤 美穂
【評】はぐれたと言っても深刻なものではなかったことが、ユーモラスな書き方から分かります。それでも、やはり心配だったでしょうけど。
あげは蝶私の心を飛んでゆく
富岡南中1年 石井 綾奈
【評】美しいアゲハチョウは、石井さんの夢や希望の象徴なのかもしれません。こんなふうに自分の内面を見つめることは、とても大事です。
初夏の空ゆらりゆらりと雲がゆれ
富岡南中1年 市川  絢
【評】「雲がゆれ」がうまい。なるほど初夏の空ってこんな感じだなあ、と読者を納得させる力があります。私も、空を眺めたくなりました。
きり晴れて山の奥から鳥の声
前橋六中1年 福田 夏紀
【評】赤城山の林間学校での作。舞台の幕が開くかのように霧が晴れ、可憐(かれん)な歌い手である鳥たちの美声が、作者の耳に聞こえてきたのです。
カッターの船首でなびく学級旗
前橋六中1年 平光 凛也
【評】カッター訓練は大変だけど、その分、中学時代のいい思い出になるはず。船首に掲げられた学級旗は、友情と団結力のシンボルですね。
夏の空海のにおいを強くする
中之条中2年 阿部 椋汰
【評】太陽がぎらぎらと輝く夏の空。その強烈な光の中だからこそ、海のにおいも一段と強く感じられるのでしょう。感覚的にすぐれた作品。
背伸びして木の葉にさわった帰り道
中之条中2年 原田 真由
【評】「背伸びして」から真っ直ぐな若さが伝わり、好感が持てます。季語としての「木の葉」は冬ですが、ここではさわやかな初夏の印象。
ふと空を見上げる君に初夏の風
六合中2年 本多 一樹
【評】さわやかな青春ドラマを観(み)るような印象の句。「君」が見上げた空は、青々と晴れていたことでしょう。「初夏の風」も効いています。
田植えどき小さな苗にも雨が降る
渋川小野上中3年 丸山  唯
【評】大きな苗にも小さな苗にも、雨は平等に降り注ぎます。自然の恵みを受けて、小さな苗もこれからどんどん生長してゆくことでしょう。
梅雨の日々雫の中の世界見る
高崎群馬南中3年 間  英梨
【評】降り続く雨に、自分のまわりの世界が、まるで大きなしずくの中にあるかのような気がするのです。作者の詩的な感性に惹ひかれました。
口笛が吹けずに終わる夏の空
高崎片岡中3年 松井 聡美
【評】季節としての夏の終わりでしょうか。夏のある一日の終わりでしょうか。やや感傷的な内容ですが、それも作者の年齢に見合ったもの。
アルバムに入れる今年の夏の空
高崎片岡中3年 佐藤 純輝
【評】卒業アルバム用の写真撮影でしょうか。義務教育最終年の夏空をしっかりと記憶にとどめ、卒業までの日々を大切に過ごしてください。
柄杓から落ちるは光と夏の音
安中一中3年 石井  透
【評】清水寺の音羽の滝でしょう。この水は延命水と言われ、参詣客はこぞって手をすすぎます。柄杓(ひしゃく)からこぼれる水が、いかにも涼しそう。
炎昼に訪ね歩いてねねの道
安中一中3年 平尾 烈基
【評】「ねね」は、言わずと知れた豊臣秀吉の正室で、清水寺に近い高台寺が墓所。波乱に満ちたその生涯に、しばし思いを馳(は)せた作者です。
雨にぬれ朱色かがやく春日造
前橋南橘中3年 上野 紗織
【評】「春日造(かすがづくり)」は、奈良の春日大社本殿の建築様式。朱と緑が目にも鮮やかですが、雨に濡れると、それがさらに美しく感じられるのです。