鈴木伸一選

2006年7月26日上毛新聞掲載


空の池ザリガニ型の雲がわく
高崎金古南小5年 中沢 大地
【評】青空を大きな池に見立て、そこにザリガニの形の雲を発見した中沢君。季節は書かれていませんが、やはり夏がふさわしいでしょうね。
夏が来る虫もアイスもてんこ盛り
前橋山王小6年 山口 城見
【評】「てんこ盛り」という表現が、とてもおもしろい。昆虫好きな人や、冷たいものが好きな人にとって、夏は一番いい季節ですものね。
東けい寺緑ゆらしてかけ込むぞ
前橋清里小6年 本村 美咲
【評】鎌倉の東慶寺は駆込寺(かけこみでら)と呼ばれ、昔はここに逃げ込んだ多くの女性を救ったそうです。そうした歴史に基づいた、とてもじょうずな句。
すずしい風で葉の合唱がはじまった
前橋清里小6年 有坂 優美
【評】風がふき、木の葉がさわさわと音を立てます。その瞬間、透き通るように美しい合唱が始まったと感じた有坂さん。感性がいいですね。
畑のなすむらさき色の水ふうせん
前橋桃川小6年 鯉渕 優介
【評】はち切れそうなほど大きく育ったナス。つやつやとして、まるで紫色の水ふうせんのように見えるのです。着想が、とてもおもしろい。
プール見てにこっと笑う雨あがり
前橋桃川小6年 若月 胡桃
【評】雨が上がり、日が差してきました。この様子ならプールに入れそうだな、と思わずにっこり。学校生活の一こまを、素直に描きました。
洗たく物中から見てる梅雨の空
前橋若宮小6年 富沢 大輔
【評】部屋干しされた洗たく物が、何となくつまらなそうに、雨模様の空を見上げているというのでしょう。いかにも梅雨時らしい俳句です。
にじのようみんなのかさが歩いてく
前橋若宮小6年 高橋 祐里
【評】雨の中、みんなが色とりどりの傘をさして歩いてゆきます。「にじのよう」という美しい言葉が、雨もいいなあ、と思わせてくれます。
ねぎぼうず土からでてきたロケットだ
前橋若宮小6年 鈴木 達也
【評】まだ、つぼみの状態のネギボウズでしょう。茎の先に、ハートを逆にしたような形のつぼみがついて、確かにロケットに似ていますね。
七夕は私が産まれた日でもある
前橋笂井小6年 南沢 彩未
【評】七夕とか子どもの日とかいった特別な日に生まれた人って、ちょっとうらやましいなあ。特に七夕なんて、ロマンチックでいいですね。
かたつむりからをかぶってひみつきち
桐生新里中央小6年 伊藤 充志
【評】私も子どものころ、秘密基地を作って遊びました。多分、伊藤君も同じでしょう。そしてカタツムリも、秘密基地仲間というわけです。
つゆ時のすこしさみしい晴れ間かな
渋川小野上中1年 齊藤 天志
【評】梅雨の晴れ間は、つかの間の晴天であるため、心底から伸びやかになるという感じは少ない。そんな微妙な心理が伝わってくる作品。
夏の夜青や緑の風あびて
渋川北中2年 永井佐和子
【評】色のない風に、色を見て取った作者の感性がいい。むろん、それは暑苦しい風ではなく、清涼感たっぷりの風だったに違いありません。
梅雨入りで深刻そうな僕の顔
渋川北中2年 星名 隆磨
【評】深刻と言っても、それほど重くはない感じ。作者は、梅雨で沈みがちな気分を紛らわすため、あえておどけてみせたのかもしれません。
休みの日夏の思い出つくらねば
渋川北中2年 清水香奈未
【評】意識して思い出を作ろうとしても駄目なときもあるし、何気ないことが大切な思い出になるときもあります。あまり焦らないのが大事。
期末勉ノートに夏の風がふく
中之条中2年 角田 瑠美
【評】期末テストの勉強に余念がない作者ですが、それでも、ふと集中力が途切れることもあります。そんな時に感じた夏の風なのでしょう。
水色の時計が刻む夏の日を
中之条中2年 山田 礼子
【評】水色の時計は、きっとすがすがしい青春の時間を刻んでいることでしょう。夏らしく伸びやかで、しかも清潔感があるのがいいですね。
春風に先に読まれる一ページ
中之条中3年 飯塚 勇輝
【評】読んでいた本のページを、春風がめくりました。春風が、作者より先に次のページを読んだのです。きっと面白い本だったのでしょう。
利根川に人が集まり夏を釣る
中央中等教育学校3年 諸田  司
【評】もちろん、人々は魚を釣っているのですが、それを「夏」という季節を釣っていると表現。こう言われると、確かにそんな気がします。
楽譜なし1フレーズの夏の音
高崎片岡中3年 中里 麻利
【評】雷の音や花火の音などをはじめ、一フレーズの夏の音にはいろんなものが考えられます。どれも楽譜に書けない印象的な音ばかりです。
炎昼のなかで走りし僕の夏
高崎片岡中3年 猿谷 良太
【評】作者は、運動部所属なのでしょう。焼けるような炎天下をひたすら走ったことが、中学生として最後の夏の大切な思い出になりました。
初夏の昼風に吹かれる竜安寺
下仁田中3年 小山 結花
【評】観光客や修学旅行生でにぎわう竜安寺ですが、名高い石庭の前に座すと、不思議と周囲の喧騒(けんそう)が消え、涼しい風が吹くように感じます。
鳥の音が涼しく響く二条城
前橋二中3年 古川 裕貴
【評】「涼しく響く」という把握がいい。広大で緑豊かな二の丸庭園あたりでの作かと思いますが、いかにも二条城にふさわしい感じです。