鈴木伸一選

2006年9月20日上毛新聞掲載


満月の夜空を見上げ待つ電車
前橋西高1年 中野 公敬
【評】部活などで下校がちょっと遅くなったある日。駅のホームで見上げた満月に、作者はどことなくさびしい秋の気配(けはい)を感じたのでしょう。
堤防は果てなく続く夏休み
熊谷女子高1年 小泉 実里
【評】大きな河川に築かれた堤防が、何だか果てしなく続いているように見えるのです。解放感とアンニュイが混じったような夏休みの気分。
汗だくも輝けるのなら悪くない
熊谷女子高1年 駒沢 綾子
【評】汗だくになって何かに熱中するのはダサいという風潮もありますが、先日の高校野球などを見たら、やっぱりそれは違うと思いますね。
夏休みかばんに増えたキーホルダー
熊谷女子高1年 町田 千里
【評】あちこちに出かけ、キーホルダーを買い集めたのでしょうか。友だちの旅行みやげかもしれませんが、ともかく夏休みらしい明るい句。
風止んで空を切りとるアキアカネ
熊谷女子高1年 松村紫生里
【評】秋の気配の漂い始めた空に、飛んでいるアキアカネの軌跡が、はっきりと見て取れるのでしょう。「空を切りとる」という把握がいい。
部活終え入道雲も笑顔かな
熊谷女子高1年 棚沢由布子
【評】目いっぱい部活に打ち込んだ後の充実感が、とてもよく伝わってきます。入道雲も笑顔で「お疲れさん」と言っているように思えます。
自転車で通う坂道韮の花
熊谷女子高2年 神宮菜々子
【評】葉を食用にするニラは、夏になると白い小花をたくさん咲かせます。目立つ花ではありませんが、そこに詩情を見出すのも俳句の特性。
せみの声透き通る様に聞えるこの季節
富岡実業高3年 清水 未来
【評】俳句の場合、「透き通る様に」ではなく、「透き通る」と断定してしまうことも大事。感覚的にすぐれているだけに、ちょっと惜しい。