林桂選

2006年9月27日上毛新聞掲載


真っ青な青空眺め勇気わく
渋川青翠高1年 下田 真希
【評】「真っ青な」「青空」の重複が惜しい。「真っ青な」を生かすためにも、「青空」の「青」は消した方がいい。たとえば「夏空」など。
漆黒のぼやけた空気螢舞う
渋川青翠高1年 高橋 優李
【評】「漆黒のぼやけた空気」は、曇天で湿度の高い宵闇を思わせます。そして、いかにもホタルが舞うのにふさわしい天候でもあります。
薔薇の花こんな恋愛してみたい
渋川青翠高1年 中島まなみ
【評】バラの花の咲き誇るようすを、恋愛に見たてました。花を感情に見たてています。花言葉も、同じようにして生まれたのでしょうか。
逝く夏のモロヘイヤを摘みてをり
熊谷女子高1年 鈴木 由香
【評】代表的な健康野菜のモロヘイヤ。家庭菜園で育て、その葉を摘みながら一夏を過ごしたのでしょう。逝く夏の感慨としては異色。
夏休み友の土産で旅行する
熊谷女子高1年 古川 未央
【評】家族旅行などで様々な所に出向く友達。そのお土産で、各地を旅行した気分を味わうことが可能です。部活の交流の一側面でしょう。
青い空蝉より元気な少年の声
熊谷女子高1年 柴山  渚
【評】ここでの「少年」は小学生くらいの男の子でしょう。セミに負けないくらいの大きな声で、遊びに熱中している姿が思い浮かびます。
新盆の祖母の帰りを待つ灯り
熊谷女子高1年 坂本 三奈
【評】お祖母さんを亡くしてのお盆。「待つ灯り」がいい。人間が灯りに抱く感情の原点のようなものを感じさせてくれます。
割引券だらけで財布閉まらない
熊谷女子高1年 内田 早紀
【評】この「笑い」は、俳句的というより川柳的かもしれません。しかし、割引券をいっぱい持って生活する作者像に共感する人も多いはず。
寝てる間に最後のアイス食べられる
熊谷女子高1年 三浦 麻実
【評】好きなものを最後に残すという人にとって、その最後の一品が突如消えた驚きと悲しみは、たかだかアイスという問題ではありません。
セミの声私に暑さをもってくる
熊谷女子高1年 大野あずさ
【評】セミの声と暑さは、俳句ではセットになっていてよく見る題材です。しかし、「暑さをもってくる」とまでは誰も簡単には言えません。
来月は残暑休みとはゆくまいか
熊谷女子高2年 堀越友美子
【評】少し戯(ふざ)けた言い方の中に、夏休みの終わりを惜しむ微妙な気持ちがあります。言っても詮(せん)方ないが、言いたくなることはあります。
風吹いてすすきゆれたら君思ふ
富岡実高3年 井上  健
【評】「君思ふ」というモードは、時と場所を選びません。風に揺れるススキを見ても入れますが、きっと違う場でも可能でしょう。
青白い闇夜に浮かぶ笑う月
富岡実高3年 新井 桃子
【評】「青白い闇夜に浮かぶ」とシリアスな設定をしておいて、「笑う月」と転じてみせます。良い意味で、読者の期待を裏切って成功。