林桂選

2006年10月11日上毛新聞掲載


子規の忌に一つ目標立てにけり
前橋西高1年 向後 麻衣
【評】目標が正岡子規に関係するかどうかは不明。しかし、子規は志の人だったことは確か。自分の志を問うのには相応しい人でしょう。
堂々と黒々歩く甲虫
熊谷女子高1年 野口美由紀
【評】いたってシンプルな甲虫(かぶとむし)の描写。それゆえに甲虫の存在感を表現することに成功しています。小さな昆虫に感じる大きな存在感の不思議。
草むしりふき出す汗を自慢する
熊谷女子高1年 百瀬 綾花
【評】汗も一定限度を超えると、自慢の種になります。自分の熱心な草むしりの態度をアピールするのに、これ以上のものはありません。
夏の猫私の日陰も占領中
熊谷女子高1年 村田 夏姫
【評】「私の日陰」は、私自身の影とも、私が入ろうとしている小陰とも読めます。前者の方が動くに動けない作者の顔が浮かんで愉快。
自転車に乗って夕焼け空を飛ぶ
熊谷女子高1年 野田 茉李
【評】「自転車に乗って」から「夕焼け空を飛ぶ」への飛躍がおもしろい。現実から想像の世界へ簡単に渡ってみせてくれています。
始業式十人十色の日焼け跡
熊谷女子高1年 平山万里子
【評】「十人十色」を、文字通りそれぞれ違った肌の焼け具合に転じて表現したもの。それぞれ違った夏休みの過ごし方の名残を見ています。
ドアひらき人と熱気が乗車する
熊谷女子高1年 大塚友加里
【評】冷房の効いた電車のドアが開くと、外の暑い空気は一気に押し寄せます。それを人と同じ「乗車」に見たてたところが表現の妙。
夕暮れをアゲハ蝶が横ぎった
熊谷女子高2年 三村 春奈
【評】「夕暮れ」は、時間と空間の両方が意識されているようです。アゲハ蝶には何かの啓示を感じますが、作者にもその意味は不明。
長電話麦茶のグラス結露して
熊谷女子高2年 斉藤 玲香
【評】冷たい麦茶をグラスに注いでからの電話。長電話のための準備だったのかもしれません。グラスに結露を見いだす視点がいい。
この夏の思い出たちは色褪せず
熊谷女子高2年 山鹿 由莉
【評】「色褪せず」が巧み。過ぎ去った夏。しかし、充実して過ごした日々は、忘れることのできない思い出となって、鮮明に残るのです。
風鈴の明るく影のありにけり
熊谷女子高2年 飯田 智香
【評】高浜虚子の「帚ははきぎ木に影といふものありにけり」を思い出させます。「明るく影の」が巧みな表現。明るい場所に吊つるされる風鈴の描写です。
赤とんぼすうっと逃げて憎らしい
富岡実高3年 時田 美保
【評】「憎らしい」は、ストレート過ぎる表現ですが、トンボに逃げられた直後は、みなこんなストレートな感情に支配されることでしょう。