林桂選

2006年10月25日上毛新聞掲載


放課後の悲しき風が運ぶ秋
前橋西高1年  都丸 貢実
【評】なぜ「悲しき風」なのか分かりませんが、作者の感情移入があります。ここでの「秋」は、その悲しみを助長しています。
まばたきをして秋の山秋の風
前橋西高1年 富澤 泰充
【評】まばたきまでのワンシーンごとに秋の山も秋の風も、その姿を変えて感じられるようなのでしょう。感性がいい句。句のリズムもいい。
にがうりを採っても食べるの父ばかり
熊谷女子高1年 利根川 遙
【評】家庭菜園でニガウリを栽培しています。健康に良いと言われても、その味を楽しむのはお父さんばかり。誰が植えたのかも分かります。
こっそりと蝉の抜け殻背につける
熊谷女子高1年 碓氷 桃子
【評】友達の背中にこっそりとシールや紙を張るいたずらがあります。それを蝉(せみ)の抜け殻でやっています。これも夏ならではのいたずら。
妹の瞳の中の夏の空
熊谷女子高1年 木村 優花
【評】姉の優しい視線を感じさせてくれる句。現実と空想の間に生きているような妹の視線を、温かい目で美しく描いています。秀作です。
花火見て彼氏が欲しいと言った友
熊谷女子高1年 荒井  萌
【評】花火を見にいったときの友の言葉。どうせなら彼氏と見たいと思ったのでしょうが、これでは同行の作者の立場はなくなります。
今はもう集めていませんセミのぬけがら
熊谷女子高1年 渡邊 晴佳
【評】誰も一度は集めたことがある空蝉。収集をやめるのは子どもを卒業すること。もっとも、詩人の伊藤信吉は大切に持っていたそうです。
海に行く予定だったな高一の夏
熊谷女子高1年 田中麻理恵
【評】受験勉強の日々を、高校一年の夏休みには海に行って思い切り遊ぼうと思って耐えてきたのでしょう。しかし、実際の高一の夏は別。
汗だくの君がかぶせた麦藁帽
熊谷女子高1年 渡辺 早織
【評】君が自分の麦藁わら帽子をとって、「作者」にかぶせたということなのでしょう。青春映画の中のワンシーンのような美しさです。
青い海幼い自分が走り出す
熊谷女子高1年 上田彩有梨
【評】青い海に、初めて海を見たころの幼い感動が 甦(よみがえ)ります。心の中で「幼い自分が走り出す」のです。それを追うように作者も走り出します。
ベランダの洗濯物にせみの歌
熊谷女子高1年 綾   恵
【評】ベランダの洗濯物に取り付いて鳴き出すセミ。人工的な環境の中でも鳴く蝉は、悲しさとたくましさの両方を感じさせてくれます。
氷飲み私の喉も透きとおれ
熊谷女子高2年 小林紗世子
【評】透明な氷で喉を潤すときの感覚。冷たさが喉に広がる感覚を「喉も透きとおれ」と表現。氷一つもこんなにリリカルに表現可能なのです。
夏バーゲンゲットしたのは母の服
熊谷女子高2年 鈴木 美香
【評】「ゲットしたのは」で、最初から母の服を手にしようとしたのではないことが分かります。結果として、親孝行な娘を手に入れたのです。