鈴木伸一選

2006年11月29日上毛新聞掲載


イチョウの葉まいちりおどりささやき合う
前橋大室小5年 小保方 秀
【評】イチョウの葉が舞い散り、地面に着いて踊り、風にふき寄せられてささやき合う。こうした動きを、たいへんていねいに観察しました。
白井城ゆずのかおりにつつまれる
渋川津久田小5年 須田 春香
【評】校外学習でおとずれた子持の白井(しろい)城跡は、ちょうどユズが実り、いいかおりを放っていたのでしょう。すてきな思い出になりましたね。
はとの群れ飛びゆくために風を待つ
伊勢崎あずま北小6年 鮫島美千佳
【評】鎌倉の鶴岡八幡宮でしょう。修学旅行俳句は、どうしても同じような内容になりがちですが、この作品は、着眼点に独自性があります。
太陽も私といっしょに走っていた
前橋笂井小6年 下山 桃子
【評】持久走大会の様子でしょう。強い日差しが暑くて苦しいというのでなく、むしろ太陽が下山さんを応援し、走る力を与えた感じです。
図書館の窓たたく音落ち葉かな
太田沢野小6年 松井 稜祐
【評】図書館は静かだから、小さな物音もよく聞こえるのです。窓をたたいた落ち葉の音に、初冬の季節感がしっかりとらえられています。
大仏が夕日の色に染まってる
榛東南小6年 小川 拓郎
【評】夕日に赤く染まった鎌倉の大仏は、とても美しいと同時に、思わず手を合わせたくなるようなおごそかな雰囲気も感じられるようです。
大仏の周りに落ちば舞っている
榛東南小6年 斎藤 由樹
【評】うわついたところのない、しっかりとした修学旅行の俳句。落ち葉の舞うころの鎌倉は、とてもおもむきがあって、私も大好きです。
寒き日のこたつの中は小宇宙
渋川小野上中1年 齊藤 天志
【評】小さいころ、私はこたつにもぐるのが大好きでした。親には叱られたけど、こたつの中は、いろんな想像がふくらむ小宇宙だったから。
教室の窓を開けると冬が来る
渋川小野上中3年 樋田 亮介
【評】実際に冷たい空気が流れ込んでくると同時に、窓を開けるという行為それ自体が、心理的に冬の到来を感じさせることもありそうです。
霜おりた朝の空気を風運ぶ
中之条中2年 唐沢 洋平
【評】ピーンと張りつめたような空気が、よく伝わってきます。冷たいけれど、どこかすがすがしい冬の朝の印象を、うまく表現しました。
朝起きて日ざしをあびる月曜日
中之条中2年 松尾 美月
【評】さあ今週もがんばるぞ、という健康的な意志が感じられ、好印象。「麗しき春の七曜またはじまる」(山口誓子)を思い浮かべました。
秋の風スッとしみこむ母の声
館林一中2年 中矢 大智
【評】お母さんの言葉が、すがすがしい秋風のように、作者の胸にスッとしみたのです。短いけれど、含蓄のある一言だったのでしょうね。
冬の朝ひやりと冷たい足の指
館林一中2年 石神 栞理
【評】自分の足の指の冷たさに、自分で驚いてしまうことって、確かにありますね。日常生活を通して、冬の季節感をとらえたのがよかった。
帰り花心の中を風通る
高崎片岡中3年 堀   佑
【評】冬の暖かさに時ならず開いた花は、美しいけれど、どこか物寂しい印象。その印象と、「心の中を風通る」がつながっている感じです。
道端に導くように帰り花
高崎片岡中3年 高橋  勲
【評】見方によっては、帰り花は季節に反した不思議な現象でもあります。そう思って眺めれば、何だか異界へと導かれるような気もします。
思い出と落ち葉が残る文化祭
六合中3年 熊川 裕也
【評】文化祭が終わり、静かになった学校。落ち葉が舞い、ちょっと寂しいくらいですが、思い出だけは、いつまでも鮮烈に残るのでしょう。
校庭を秋を見つけて歩いてく
渋川北橘中3年 信沢 有紀
【評】見慣れた校庭も、眺める角度を少し変えるだけで、新しい何かが見えてくるかもしれない。信沢さんには、その何かが見えたのですね。