鈴木伸一選

2006年12月13日上毛新聞掲載


秋時雨紅茶を満たすマグカップ
前橋西高3年 荒川 紘佑
【評】紅茶の温かさに気持ちがほっとしたという感じがある半面、季語「秋時雨(しぐれ)」の働きなどから、どことなく物寂しい気分も感じられます。
何となく部屋にこもれり白秋忌
前橋西高3年 須藤 直樹
【評】北原白秋の忌日は、十一月二日。ほのかな感傷性を帯びた耽美(たんび)的な作風と、何となく部屋にこもるという気分が、うまく合っています。
熱が出て氷枕の子規忌かな
前橋西高3年 萩原龍之介
【評】明治三十五年九月十九日、正岡子規は三十五歳で世を去りました。晩年、長く病臥がした子規の生涯を、風邪の床(とこ)で思い浮かべた作者。
寒くなり部屋に静かな月の音
太田高3年 斎木俊太郎
【評】さりげなく「月の音」とありますが、実際はかなり大胆で飛躍した発想。何しろ、部屋にいて月の運行する音を感じているのですから。
帰り道ホットコーヒー冷めてきた
利根商高3年 野上 直人
【評】缶コーヒーをポケットに入れたまま、つい飲みそびれてしまったのでしょうか。日常の中に、冬の季節感がうまくとらえられています。
指先の十の冷たさ息かける
育英短大2年 外山 智恵
【評】十本の指の先それぞれが、冷たくなっているのです。「十の冷たさ」は、それを俳句的に省略した表現。これが、とても効いています。