林桂選

2007年1月10日上毛新聞掲載


帰り道はだざむくなり風がなる
前橋大室小5年 高尾 里奈
【評】「風がなる」の「なる」は「鳴る」で、冬のモガリブエと呼ばれる現象でしょう。切られるような肌寒さと、切り裂く風の音。
いわしぐもどこまでつづくサイクリング
前橋大室小5年 浜岡 宥人
【評】爽やかなサイクリングのようすを「いわしぐもどこまでつづく」でうまく表現しています。遠くまできく視界と光と風を感じさせます。
教室に秋の光がおどってる
赤城養護小児医療センター分校小5年 長壁 千笑
【評】「おどってる」がいい。窓からさす秋の日の温かみとまばゆい光が感じられます。楽しい教室の雰囲気も出ています。
青い海白い波うついわし雲
前橋大室小6年 山田 莉子
【評】大景を詠むのは、簡単そうで難しい。青い海と白い波。青い空といわし雲。空と海だけの大きな風景を、気持ちよく詠んでいます。
大仏の顔はなんだかお母さん
榛東南小6年 高橋 志輔
【評】「なんだか」という不確かな気持ちを挟んだ後の「おかあさん」という断定がいい。思わず現れた母への思慕が表現されています。
ちょうどいい青空見えない雲の量
太田沢野小6年 加藤 鈴花
【評】一面空をおおった雲。でも、厚くおおっている感じではないのでしょう。それが「ちょうどいい」という作者の判断に表されています。
夕焼けが半熟卵にそっくりだ
太田沢野小6年 高橋さとえ
【評】夕焼けの太陽を「半熟卵」に見たてました。それも目玉焼きの半熟卵でしょう。面白い見たては、それだけでも俳句を成立させます。
六年間走った校庭ありがとう
前橋山王小6年 小林 祐太
【評】卒業間近。学校のあちこちに思い出は残っています。一番の思い出の場所は校庭。素直な「ありがとう」の言葉が心に響きます。
お母さん土産は熊を避ける鈴
渋川小野上中1年 樋田 真季
【評】短いお母さんの旅行。日帰りかせいぜい一泊。行く先も遠くはないでしょう。娘のための熊除けの鈴が買えるようなところなのです。
階段に光があたる休み時間
中之条中2年 吉田 知世
【評】どこか孤独で寂しそうな視線です。休み時間の日差しをためた階段。人のいない風景に、癒されている感性がそう思わせるのです。
どこまでも連なってゆく霜柱
中之条中2年 金井 実紀
【評】一カ所崩れた霜柱から、地面が持ち上がっていたことを知ります。すると幻の霜柱が地面の下に連なって広がって見えてくるのです。
自転車の後ろに乗ってる冬の風
中之条中2年 田中  湧
【評】自転車での背の寒さを「後ろに乗ってる冬の風」と表現しました。後ろに乗っているのですから、どこまで行ってもついてきます。
雲のない青空ひとつ秋の風
渋川小野上中3年 宮 ゆりか
【評】「青空ひとつ」に感心。どんなに広くても空は一つであり、無二の存在です。青空に感じた「一つ」は深い存在へ届いています。
笑顔咲く小春日和の鬼ごっこ
高崎片岡中3年 天井 莉奈
【評】「咲く」がいい。笑顔が「咲く」という表現は新鮮で力があります。子どもたちの鬼ごっこを見る目も、小春日和のように温かです。
草紅葉まずは始めに復習から
高崎片岡中3年 茂木 瑞葵
【評】復習そして予習と順序だてて勉強することにしているのでしょう。「草紅葉」を見る目には、急(せ)く思いと落ち着こうとする思いが同居。
父の背と感じて触れる銀杏の木
高崎片岡中3年 峰岸 泰基
【評】銀杏(いちょう)の木肌に父の背を感じながら触ったといいます。もちろん「父性」に対する「作者」の思いが表現されているのです。
深夜〇時窓辺で笑うオリオン座
高崎片岡中3年 蓬澤  栞
【評】「笑う」がいい。遅くまで勉強しているのでしょう。静寂な中の孤独な時間。オリオンに励まされる思いを、こう表現したのでしょう。
あの頃にもう戻れない時雨かな
高崎片岡中3年 平田 大輝
【評】「あの頃」は、幼年の心の黄金時代をさすのでしょう。遠ざかって行く黄金期に募る郷愁。大人になる価値があるのか反問する瞬間。