鈴木伸一選

2007年3月21日上毛新聞掲載


山笑う私も笑うカレーパン
高崎城山小6年 田中  瞳
【評】「山笑う」は、明るく生き生きとした春の山の様子を言う季語。おいしいカレーパンに、田中さんも思わず笑顔になったのでしょうね。
春遠し静かに思いみかんかな
六合中1年 市川 昌樹
【評】人間がいくら焦ったところで、季節の運行を速めることはできません。自然の流れに逆らわず、心静かにミカンをほおばる市川君です。
春近し霧たちのぼる窓の外
渋川小野上中1年 唐沢 達也
【評】小野上を流れる吾妻川周辺は、霧がよく発生します。窓から見た霧の流れが近づく春を知らせているというのは、まさに実感でしょう。
赤ペンが無くなる春のテスト後
渋川小野上中1年 樋田 真季
【評】誤答のチェックなどで、テスト後の赤ペンはフル稼働というわけですが、そんな中にも、ユーモアを感じさせるゆとりがあるのがいい。
風光り残りの日々を刻んでる
渋川小野上中3年 佐藤 磨依
【評】まばゆいような明るさを感じさせる春ですが、一方で、中学生としての時間は刻々と減ってゆくのです。ちょっと切なくなりますね。
お母さん歩けば春風吹きにけり
渋川小野上中3年 佐藤沙也果
【評】家事などをてきぱきとこなすお母さんの起居動作が、目に浮かぶようです。暖かな春風が、お母さんに対する作者の愛情を伝えます。
また一つ雲流れてく卒業まで
渋川小野上中3年 飯塚 泰志
【評】一つ、また一つと、風に流れてゆく雲。卒業までのカウントダウンを告げているようで、胸が何となく締めつけられる感じがします。
楽しくもさびしくも見える桜の木
渋川小野上中3年 宮 ゆりか
【評】楽しさとさびしさは、一枚のカードの表と裏のようなものなのでしょう。卒業を間近に控えた作者の心の中が、自(おの)ずとうかがえます。
入試前ノートも忙し春一番
渋川小野上中3年 佐藤 大樹
【評】ただでさえ入試前はあわただしく落ち着かないのに、春一番の強風が、さらにあわただしさを助長する感じなのです。実感でしょうね。
センパイに送ったメールに桜咲け
中之条中2年 安済 里佳
【評】「桜咲け」は、受験の合格を祈る言葉であると共に、作者がメールにこめた、春のような暖かい気持ちを表したものでもあるでしょう。
妹がずっと見ていたひな人形
中之条中2年 山口ゆか子
【評】妹さんの姿に、作者は幼いころの自分を重ね合わせていたのかもしれません。お姉さんらしいやさしさが、自ずとにじみ出た俳句です。
カーテンが春の光をたくわえる
中之条中2年 岡部 瑞稀
【評】陽光を浴びたカーテンが、春の暖かさを蓄えているというのです。手で触れれば、その暖かさがじんわりと伝わってくることでしょう。
弟の手のひら大きな春にぎる
中之条中2年 竹渕 貴博
【評】たとえ弟の手は小さくとも、大きな春をしっかりとにぎっているのです。「春」とは、未来への夢や希望と同義であると理解しました。
グラウンド春を目指して駆け抜ける
中之条中2年 関 ひかり
【評】伸びやかな若々しさに、好感の持てる作品。類想句はあるものの、こういう健康的で真っすぐな作風は大切にしたいなあ、と思います。
帰宅中余寒がしみる口内炎
高崎片岡中3年 斉藤 央樹
【評】立春が過ぎても残る寒さを「余(よ)寒かん」と言います。口内炎の痛さと寒さに顔をしかめながら家路を急ぐ作者の姿が、目に浮かぶようです。
金閣寺木々とかさなる夏の空
川場中3年 林  大輝
【評】金閣寺は修学旅行の定番で、類想も多いのですが、この作品は、情景がしっかりと書けています。構図の取り方がよかったのでしょう。