鈴木伸一選

2007年4月4日上毛新聞掲載


六年生おくるれんしゅう春はそこ
高崎城山小5年 吉川 和那
【評】六年生を送る会か卒業式の練習でしょう。在校生の中心としての責任感と、六年生を見送るさびしさが、混ざり合っているようです。
卒業式六年間が走ってく
群馬大附小6年 福島沙也加
【評】六年間のさまざまな出来事が、走馬灯のように頭の中を駆けめぐります。卒業式の句としては類想もある半面、この素直な思いは大切。
雪解けの水と流れるこの想い
館林一中1年 田口 穂波
【評】内面のわだかまりが、雪が解けるようにほぐれていった。自分の思いが相手に届かず、流れ去ってしまった。二通りに読めるようです。
背中追うかけ声合わせる春の午後
渋川小野上中1年 佐藤智菜津
【評】部活でランニングをしているのでしょう。みんなで気持ちを一つにして、かけ声を合わせてゆく。そこから大切な連帯感が生まれます。
皿の上天ぷらのってる春の風
渋川小野上中1年 樋田 真季
【評】季語の使い方がうまい。皿の上の天ぷらとは無関係のようでいて、春の風が天ぷらのおいしさを自然に引き立てている感じなのです。
アルバムの最後のページ桜色
渋川小野上中2年 新井 美晴
【評】実際に桜色のページだったと同時に、アルバムを見終わった後の、懐かしく暖かな心持ちを、「桜色」と表現したようにも思えます。
本を読む青い教室一人かな
渋川小野上中2年 佐藤 史佳
【評】「青」に神秘を感じるか、さわやかさを感じるかは、人それぞれですが、私は「一人」から、この句には前者がふさわしいと考えます。
加湿器がくもらす頭テスト中
渋川小野上中2年 佐藤 良樹
【評】問題が思うように解けないときは、つい自分以外の何かのせいにしがちなもの。私も同じだったので、作者の気持ちはよく分かります。
あんパンを一口かじって桜見る
中之条中2年 唐沢 由弥
【評】ある日ある時の些細な動作をぱっと切り取り、季節感豊かな俳句にした作者の手腕は相当なもの。「桜」は、扱いの難しい季語ですが。
春がくるぶかぶかのくつを買ってみる
中之条中2年 小渕 結香
【評】「ぶかぶかのくつ」が、春らしい大らかな気分によく合っています。こんな気分で歩けば、風景がずいぶん違って見えることでしょう。
午後一時春が階段かけのぼる
中之条中2年 唐沢 惇実
【評】「午後一時」という断定が、たいへん効果的。気温が上昇し、一気に春めいた陽気になったということが、実感豊かに伝わってきます。
水道の水の痛さがまだ冬だ
中之条中2年 高橋 拳斗
【評】冬の水は冷たさを通り越して、確かに痛い感じ。春遠からじとは言え、水の痛さに、まだ冬は去らずということを実感した高橋君です。
真っ青な空を動かす春一番
中之条中2年 小林 真衣
【評】春一番は荒々しさの半面、春の到来に胸が躍るような感じもあり、それが、空全体が動くという雄大な発想につながっているようです。
桜咲く思い出残るあの坂に
中之条中2年 桑原 成美
【評】ちょっと感傷的な表情が魅力的で、青春のさまざまな物語を感じさせる作品。芭蕉に、「さまざまの事おもひ出す桜かな」があります。
数学の答えは風の中にある
中之条中2年 安済 里佳
【評】風の中で感覚が伸びやかになり、解けなかった問題が解けるということでしょうか。反対に、風が答えを持ち去ったとも読めますが?。
春になり君の街まで歩くんだ
中之条中2年 関 万葉子
【評】青春性豊かな作品で、明るく健康的な内容に好感が持てます。作者のきびきびとした足取りや、軽やかな靴音まで聞こえてきそうです。
駆け出した春の大きなグラウンド
中之条中2年 関 ひかり
【評】「大きな」は、実際の規模をあらわしていると同時に、伸び伸びとした春の気分が、作者にそう感じさせたということもあるでしょう。
別れへと向けて膨らむ芽と悲しみ
六合中3年 黒岩 剣大
【評】日に日に育ってゆく木の芽のように、四月からの新生活への期待が膨らむ一方で、友達や先生と別れる悲しみもつのってゆくのです。