林桂選

2007年4月11日上毛新聞掲載


すずしくてやわらかいこの秋の風
高崎城山小5年 斉藤  渚
【評】「すずしくて」は、一般的な感覚ですが、「やわらかい」には、作者の個性が感じられます。「この」の使い方も臨場感を増して巧み。
青い空一面広いまほうの絵
前橋大胡小5年 生方菜々美
【評】空を「まほうの絵」にたとえました。たしかにこんなに大きい絵は他にありません。このたとえでみんなが気づけるようになりました。
消しゴムの減りが早いと梅が咲く
渋川小野上中1年 樋田 真季
【評】もちろん消しゴムの減りと、梅の花が咲くのは無関係。でも、春に向かう季節の華やぎの中に、消しゴムも参加しているような趣です。
スキーバス先生たちと長話
群馬聾学校中1年 浜名 祐一
【評】スキー教室に向かうバスの中。限られた空間は人間の関係をより濃密にしてくれます。先生と楽しい「長話」ができる貴重な時間です。
こんにちは春の明日に会いに行く
中之条中2年 岡部 瑞稀
【評】春に向かう気持ちが巧みに表現されています。今日よりは明日は暖かくていい日に違いないというだけで明るい気持ちになります。
怒ったり泣いたりしてる空の雲
中之条中2年 宮崎 彩夏
【評】気候の変化を、人間の表情にたとえて表現。「空」にも「雲」にもかけて読めますが、空にかけて読むと、雲の意味がおもしろくなりそう。
飼いねこの日なたぼっこはヒザの上
中之条中2年 玉井  希
【評】膝ひざの上で日向ぼっこをしている猫。当然、膝の持ち主である「作者」も、日向ぼっこをしてることになります。のどかな愛猫との時間。
鳥が飛ぶくもり空にもひかりある
渋川小野上中2年 横山ゆかり
【評】無季語ですが、季感は春。「鳥が飛ぶ」のも活気を取り戻した春の空のようすですが、曇り空にも感じる光こそ春そのものです。
風吹くやゆられて伸びるつくしんぼ
渋川小野上中2年 小野 敦也
【評】「ゆられて伸びる」がいい。風はゆらすことで、ツクシの成長を促しているようなのです。春の穏やかな日和が感じられます。
水上は降り止まぬ雪白い街
群馬聾学校中2年 石関 祥子
【評】スキー教室で訪れた水上の町の印象を、叙情的に美しく描いています。「白い街」は、雪と美しさに覆われている街の表現です。
雪落としリフトで落とすスキー板
群馬聾学校中2年 原沢 美帆
【評】リフトに乗りながら、スキー板についた雪を落とそうとして、スキーまで落としたという失敗。これも思い出に残るでしょう。
こんこんと雫集まる洗面器
高崎片岡中3年 飯塚 喬子
【評】洗面器に集まる雫(しずく)なら、わずかずつのはず。それを「こんこんと」と水が豊かに尽きないようすで形容して、水の本質に迫っています。
蒲公英の根を掘り続けて三十分
高崎片岡中3年 篠原真太郎
【評】誰も一度は経験のありそうな話。タンポポを掘ろうとして、その根の深さに往生します。しかし往生際良くはあきらめきれないのです。
ふらここを思い出乗せて強く漕ぐ
高崎片岡中3年 松井美早紀
【評】「ふらここ」はブランコのこと。春の季語です。「ふらここを」は「強く漕ぐ」にかかります。「を」が巧み。「思い出乗せて」もいい。
春の雲夢を含んで空高く
高崎片岡中3年 藤田  賢
【評】「夢を含んで」がいい。「夢」は、誰も春の雲に感じていたことだったでしょう。時に詩は明確に気づき指摘する言葉になるのです。
蒲公英を走る少年ゆらしけり
高崎片岡中3年 藤田  賢
【評】部活のロードワークの一場面を思い浮かべればいいのでしょうか。トレーニングする少年への共感をタンポポとの関係で描きます。
春浅し空の青まだ見慣れずに
高崎片岡中3年 船津満里奈
【評】空の春らしいようすにとまどう思いが「まだ見慣れずに」の表現。一気呵成(かせい)に動く春という季節の感じがよく描かれています。
蒲公英の色より輝く高校生
高崎片岡中3年 富田 幸義
【評】「蒲公英の色より輝く」には、高校生活への憧(あこが)れが表現されています。この気持ちを忘れることなく、充実したものにしてください。
新しい自分に変身春の風
高崎片岡中3年 松本 綾芽
【評】春は新たな自分がはじまる予感に満ちた季節。しかも、進学し、新たな環境が待っているとなればなおさらです。「変身」がいい。
なあ蝶よ時間が無いんだ戦まで
高崎片岡中3年 平井 天馬
【評】現代社会に抱く危機意識を、蝶(ちょう)に話しかける言葉として表現しています。蝶は、ここでは人間社会から超越した存在の象徴です。
蒲公英の首輪作りに夢中なり
高崎片岡中3年 小林 由佳
【評】小さな子どもをみてのものか、思い出の中の自身の姿でしょう。何にでも夢中になれた幼いときの姿を、あらためて思っているのです。
班行動日陰がこひし夏の空
川場中3年 角田 真璃
【評】修学旅行の班行動でしょう。びっしり組んだ行動計画を遂行するために、日陰で一休みする心の余裕もなくなっているのです。
神社からあびる朝日はあたたかい
渋川小野上中3年 野村 恵子
【評】朝日をみられる神社は、身近にある小さなものでしょう。「あたたかい」には感謝の思いがありそう。願掛けがかなったのでしょうか。
シャーペンのペン先光る春の風
渋川小野上中3年 宮 ゆりか
【評】小さなものを輝かせる春光。春が小さなものに集まって輝かせるという感覚です。見つめ続けたペン先だからこそでもあります。
放課後に孤独な春風吹きにけり
渋川小野上中3年 飯塚 泰志
【評】放課後一人になった時間。春風の表情も一変して、孤独な趣が感じられるのです。単純化された表現なのに屈折した文脈が巧みです。