鈴木伸一選

2007年5月30日上毛新聞掲載


春の山ヤマトシジミの青をおう
高崎城山小5年 近藤 充人
【評】ヤマトシジミは、本州から南の各地でみられる小形のチョウ。「青をおう」というするどい表現が、読者に鮮やかな印象を与えます。
春風は一人であそぶのつまんない
前橋山王小5年 富山 瑞稀
【評】せっかくあたたかな春風がふいているのだから、一人で遊ぶのはつまらないということでしょう。自分の気持ちが素直に書けています。
友達が春にどんどんできていく
高崎堤ヶ岡小5年 原田千有希
【評】中には、友達を作るのが苦手な人もいます。友達作りが得意な原田さんなら、きっとそういう人の気持ちも分かってあげられるはず。
田植えでね自分のお米できるんだ
高崎堤ヶ岡小5年 中西 梨歩
【評】授業で田植えをしたのでしょうが、秋の収穫が今から待ち遠しいですね。すくすくとイネが育つよう、がんばって世話をしてください。
あかね空山もいっしょに風呂上がり
前橋桃井小5年 武井 亜樹
【評】ちょっと早めのお風呂から上がって、美しいあかね色に染まった遠くの山を眺めている武井さん。読者の心も、ほっと安らぐ俳句です。
一年生私の後ろで春と歩く
前橋大室小6年 高尾 里奈
【評】新しく登校班に加わった一年生が、高尾さんの後ろを楽しげに歩いているのでしょう。「春と歩く」という表現が、とてもいいですね。
そうじして汗かくはだに風がふく
前橋大室小6年 品川菜都貴
【評】汗が流れるくらい一生懸命そうじをしたからこそ、風の気持ちよさも格別なのです。作品全体から、すがすがしさが伝わってきます。
口あけてプールがぼくらを待っている
前橋粕川小6年 布施川将道
【評】まだ水の張られていないプールを、大きな口にたとえたのでしょう。プールが声を上げて、布施川君たちを呼んでいるような感じですね。
すぐ横に緑があるよトロッコ電車
前橋笂井小6年 藤原 千夏
【評】すがすがしい緑の中を縫うように走ってゆくトロッコ電車。窓がないので、その緑がすぐそばに感じられ、本当に気持ちよさそうです。
あつすぎて空がゴロゴロうなってる
高崎国府小6年 町田  航
【評】あまりの暑さに人間だけでなく、自然全体がうなっているように感じられるのでしょう。雷を、おもしろいとらえ方で描いた俳句です。
数学はとても大変春の空
六合中1年 金平 空智
【評】自分の気持ちを素直に書いただけのようですが、そこにぽんと「春の空」が付くと、いかにも俳句らしい味わいが出るから不思議です。
ねむってるわたしの上に朧月
高崎中尾中1年 重田  遥
【評】実際には、睡眠中に空にかかる朧(おぼろ)月を意識することはできません。が、想像の世界の中なら、十分可能です。それが「詩」というもの。
日永だな部活の帰りに日が笑う
高崎中尾中1年 大町 佑太
【評】はじめての部活は大変なことも多いでしょうが、この句を見ると、大町君は部活を楽しく感じていることがよく分かり、ほっとします。
のびのびと若鮎泳ぐ神流川
神流中里中2年 茂木 淳美
【評】自分の住む土地への愛情を、明るく詠(うた)い上げているところに好感が持てます。伸び伸びと清流を泳ぐ若アユに、作者の姿が重なります。
シャーペンがノートをつついた暑さかな
渋川小野上中2年 斉藤 結衣
【評】文具を、意思あるもののように描いたのが面白い。「つついた」という表現が効果的で、暑さに閉口している感じが、よく出ています。
兄が着る服が小さい夏びより
渋川小野上中2年 樋田 真季
【評】去年は着られた服が、今年はもう小さい。身体がめざましく成長する時期にある人たちというのは、本当にまぶしいくらい輝いています。
双葉でる小さな春のもくじかな
渋川小野上中3年 新井 美晴
【評】春を本にたとえれば、小さな双葉は、目次の最初。これからページを次々めくるように季節が進み、双葉もぐんぐん成長してゆきます。
くもり空風で流れるねむけかな
渋川小野上中3年 佐藤 良樹
【評】季節は書かれていませんが、やはり晩春の雰囲気でしょうね。眠気が風に運ばれ、クラスメートに次々と伝染してゆくような感じです。
春になり大空いっぱい青になる
中之条中3年 唐沢 翔太
【評】春到来の喜びにあふれた作品で、読者の心も晴ればれとしてきます。中七下五の思い切った表現に、若々しさが感じられるのもいい。
葉桜の後ろを通る電車かな
前橋二中3年 岡部 理沙
【評】前橋二中は町なかにあり、校庭と住宅の間を縫うように電車が走ります。事実がスパッと切り取られ、臨場感豊かな俳句になりました。
雨上り町が森のにおいになる
前橋二中3年 新井  朔
【評】空気のにおいが普段とは違う雨上がり。季節が今ごろなら、草木の緑も鮮やかによみがえり、「森のにおい」が無理なく納得できます。
夏近しボールが今日も空高く
前橋木瀬中3年 梅沢友里恵
【評】学校生活の中から、季節の移り変わりをとらえているのがいい。季節感覚を磨くと、毎日の生活がぐんと豊かなものになってきます。
桜の木見ているだけで眠くなる
前橋木瀬中3年 金垣 雪音
【評】満開のサクラだと思いますが、そこには人を眠りに誘(いざな)う魔力でもあるのでしょうか。単なる睡眠不足では、詩的じゃありませんものね。
自転車を飛ばして見える初夏の色
前橋木瀬中3年 今村佳那子
【評】じっと立ち止まっているのではなく、スピーディーに動きながら詩情をとらえてゆくといった書き方に、さわやかな若さを感じます。
真昼時なんだか遠いせみの声
中央中等教育学校3年 潮見  萌
【評】太陽が照りつけ、めまいがするような夏の真昼。私たちの感覚も普段と違う働き方をして、セミの声が遠くに聞こえるのかもしれません。