林桂選

2007年6月20日上毛新聞掲載


夏近しあやめは朝がた開いてる
高崎堤ヶ岡小5年 高橋 良輔
【評】つぼみの形と花が開いたときの形が大きく違うアヤメの花。朝になって開いているのを見つけたときの驚きが感じとれます。
春の風やさしく冷たい空の息
高崎金古南小5年 藤本 沙絵
【評】「空の息」がおもしろい。春風に感じるやさしさ冷たさも、「空の息」だからだと感じたのです。空が生きて呼吸している感じです。
そよ風がぼくの体をかきわける
前橋桃川小5年 越塚 奎太
【評】「かきわける」がおもしろい。「ふきぬける」だと、強い冬の風ですが、春のそよ風は体のあちらこちらに当たっているのがわかります。
太陽さん「どーだどーだ」とあつ自まん
前橋桃川小5年 丸山 沙蘭
【評】「あつ自まん」は、字余りになっても「暑さ自慢」とした方がいいでしょうね。太陽の輝きを「どーだどーだ」で表現したのはいい。
シャボン玉すずしそうな水の玉
前橋桃川小5年 小倉 広夢
【評】シャボン玉をよく観察しています。「水の玉」は即物的な見方で、「すずしそうな」が感覚的な見方。それを一つに重ねています。
ひまらやすぎ春の風にゆられておばけにばける
前橋山王小5年 後藤 瑞生
【評】大きなヒマラヤ杉なのでしょう。茂って暗く見えているのです。風に揺れる枝は、お化けが手まねきしているように見えます。
春の風一年生をおいかける
前橋大室小6年 高尾 里奈
【評】元気よく校庭を走り回っている一年生。まるで春風と追い駆けっこをしているようです。元気な一年生の姿を描く表現として秀逸です。
あおあおと若葉ゆられて夏の朝
前橋二之宮小6年 下境 洸樹
【評】「若葉」の言葉で、「あおあおと」のようすは分かってしまいますが、この句ではイメージを重ね塗りする強調表現になっています。
昨日今日明日明後日雨が降る
渋川小野上中1年 樋田 拓也
【評】昨日に続く今日の雨は、明日も明後日も降り続くように思わせるものなのです。梅雨時の重苦しい季節の感じをうまく表現しています。
春の風ぼうけんしながらやってくる
高崎中尾中1年 平山 みか
【評】「ぼうけんしながら」がうまい。一気にこちらに押しかけてくるのではない春風の不思議な感じが、この言葉から感じられます。
薔薇の花王子と姫の舞踏会
高崎中尾中1年 福村 冬美
【評】薔薇(ばら)の花から広がる童話の世界のイメージでしょう。王子と姫が出会う舞踏会の華やかな場面が重なって見えてくるようなのです。
五月晴れ山の中には鳥の声
高崎中尾中1年 高野 瞭介
【評】五月晴れの空を背景に浮かび上がるような山。その山の中からは鳥の声が響いてきます。晴れ晴れとする気持ちのよい五月のようすです。
五月晴れ子犬すやすや眠ってる
高崎中尾中1年 新井  遙
【評】遊び疲れて眠る子犬。五月の季節の心地よさを満喫しているかのよう。子犬に対する愛情も、それを通しての幸福感も感じられます。
自転車をおして夕焼け見て語る
安中松井田東中2年 堀口  拓
【評】下校のようすをドラマの一場面のように描いています。友と夕焼けに向かい、自転車を降りて押しながら語っているのです。
夕ぐれが運んでくれる千の星
みなかみ月夜野中2年 眞庭友香里
【評】「運んでくれる千の星」がうまいです。夕暮れの闇が広がるにつれて輝き出す星を、表現しています。星の美しさが感じられる表現です。
藍植える今年は笛袋染めようか
新島学園中3年 上原  茜
【評】藍染めのために植物のアイを栽培しているのです。アイを植えながら、今年する藍染めの品を考えます。「笛袋」は茜さんならではのもの。
やわらかな光を受ける袋角
中之条中3年 山田 礼子
【評】修学旅行の奈良公園で見た鹿のようすでしょう。袋角は新たに生え替わって出てきた角で、ビロード状の皮膜に覆われています。
京の町桜の香りが今もする
中之条中3年 金子 瑠実
【評】桜の季節を過ぎての京の町訪問なのでしょう。それでも京のみやびな雰囲気が、桜の香りを感じさせてくれる気がするから不思議です。
夏空に囲まれている五重塔
中之条中3年 山田晏寿美
【評】高くそびえる五重塔のようすを、「夏空に囲まれている」で表現しました。振り仰いで、空以外に見えないような高い五重塔の姿です。
初夏の風みんなの笑顔がかがやくよ
中之条中3年 角田 麻貴
【評】言葉によるスナップのような句です。「かがやくよ」がいい。この言葉で、一瞬を長く記憶にとどめることができるようになりました。
葉桜の大空見上げ水を飲む
渋川小野上中3年 一場  輝
【評】校庭の桜も葉桜となって、視線も暑くなってゆく空に向かいます。部活の間の休憩、水を飲む前の一瞬の動作なのでしょう。