鈴木伸一選

2007年7月25日上毛新聞掲載


夏ですと知らせるように海光る
高崎城山小5年 松崎 秀信
【評】海のない群馬に住む私たちが海を見ると、人一倍感動をおぼえるのかもしれません。「光る」にも、そんな感動が出ているようです。
カエルにはソプラノアルトバスもいる
富岡小5年 曽根 静華
【評】たくさんのカエルが鳴いているのを「合唱」にたとえた俳句は多いけど、この句はそれを一歩進めて、具体的な声域で描いたのがいい。
学校帰り夕立前の風がふく
榛東南小6年 岩倉 舞香
【評】夕立の前というのは、たしかにふだんとは違う肌ざわりの風がふきますね。早く家に帰らなくちゃ、とちょっと気が急せいたりします。
夏の海浮輪プカプカさいている
榛東南小6年 青木 佳奈
【評】上五中七は当たり前の感じですが、最後の「さいている」で、ぐんと良くなりました。カラフルな浮輪の花が、ぱっと見えてきます。
父の日に家族そろってでかけよう
太田城西小6年 西倉 沙織
【評】豪華なプレゼントよりも、お父さんには、家族そろって健康で仲よく暮らせることの方がずっとうれしいはず。お父さん、そうでしょ?
桜さく新しいこといっぱいだ
伊勢崎宮郷二小6年 岡本 栞名
【評】子ども時代というのは、毎日が新しい発見との出合いでいっぱいです。大人になっても、こういう新鮮な気持ちをなくしたくないなあ。
つゆの時期夕方とってもねむくなる
前橋若宮小6年 田島華雅美
【評】梅雨どきは、心身ともに何となく重たい感じがします。ふと眠くなるのも、そのためかな。おまけに雨雲におおわれて薄暗いですしね。
プールは夏みんなはイルカすずしいな
前橋若宮小6年 友成 悠介
【評】「は」のくり返しに、夏到来の喜びがよく出ています。「すずしいな」と言わなくても涼しさは伝わるので、再考してみましょう。
建長寺みどりと歴史につつまれて
前橋荒牧小6年 中村 裕梨
【評】鎌倉の建長寺は、深い緑と長い歴史につつまれて、おごそかに建っています。修学旅行の俳句として、とてもしっかりと書けています。
見上げると大仏すわる夏の風
前橋荒牧小6年 横堀 志帆
【評】「見上げると」という表現で、横堀さんが、鎌倉の大仏の大きさをあらためて実感したことがよく分かります。「夏の風」も効果的。
雲のうえぞうのみずあび雨がふる
前橋大胡小6年 齋藤ひかり
【評】何とも楽しい俳句で、こんなふうに考えれば、雨の日もぐんとすてきになるなあ、と思いました。発想を変えることって、大事ですね。
かき氷赤いシロップ滝のよう
神流万場小6年 加藤 史也
【評】イチゴシロップをたっぷりとかけたかき氷は、見た目にも本当に涼しそう。「滝のよう」は、その涼感までもあらわしているようです。
木下闇私隠れる風が吹く
高崎中尾中1年 広橋 奈未
【評】茂った夏木立の中に入ったときの暗さが、「木下闇(こしたやみ)」。そこには心理的な暗さも加わっているので、「私隠れる」が印象に残るのです。
ドロップの色あざやかな夏の空
高崎中尾中1年 斉藤 瑞穂
【評】小さなドロップから、広大な夏空へと視線が移動することで、読み手にとてもすがすがしい気分をもたらす作品。季節感も豊かです。
噴水の水と子供が光ってる
高崎中尾中1年 橋本 真里
【評】噴水も遊ぶ子供も、夏の日を浴びて輝きます。それだけでなく、かわいい歓声までもがキラキラと光っているように思えるのがいい。
風鈴の音色が山に響いてる
渋川小野上中2年 飯塚 一樹
【評】広々とした自然空間が描かれており、涼やかな風鈴の音色と共に、読者の心を癒やしてくれます。山に響くという把握が、特にいい。
麦藁帽夕立誘うにおいかな
渋川小野上中3年 中橋 重明
【評】夏の季節感が、たっぷりと詰まった俳句。それも、どこか懐かしさを伴った季節感と言えます。「麦藁(わら)帽」の働きによるものでしょう。
しとしとと繊細な雨が降る日かな
前橋木瀬中3年 大竹 由実
【評】「繊細な雨」という把握は、文字通り作者の繊細な感性の賜物(たまもの)。私たちの心のひだに染み透り、乾きをうるおしてくれるような雨です。
あついのになぜかサッカーしたくなる
前橋木瀬中3年 深井 彩貴
【評】分かっているようで分からぬ自分の心、といったところでしょう青葉の部か。もっとも、分からないから人間らしいということもできそうです。
妹の手をひき帰る梅雨の中
富岡南中3年 萩原 雅人
【評】まだ幼い妹さんでしょうか。何にせよ、作者のやさしさが素直に出ていて、読者の心もあたたかくなります。情景も、たいへん美しい。
夏の夜星をつなげる母の指
中之条中3年 山崎 明菜
【評】母と子で仲よく夏の星空を見上げている情景というのも、たいへん美しい印象。こんなときは、自分の気持ちも素直に話せそうですね。
すき間なく果てしなくある雲の峰
中之条中3年 金井 実紀
【評】空高くまで盛り上がった積乱雲を、「雲の峰」と言います。大きくて圧倒されるようなその印象を、上五中七でよくとらえています。
雨降って心とくつがぬれてゆく
中之条中3年 鈴木  杏
【評】靴が濡れるというのは、多くの場合、あまり気分のよいものではありません。心が濡れるというのも、そんな気分を反映してのこと。
天の川未来の夢が流れてる
中之条中3年 関万 葉子
【評】未来へのまなざしに若々しさが感じられ、好印象を持ちました。夢を流れるままにせず、一つ一つ実現していってほしいと思います。
新緑や石庭眺め唯足を知れ
群馬大附中3年 高山 知己
【評】京都竜安寺にある徳川光圀(みつくに)寄進の蹲踞(つくばい)に刻まれた、「吾唯足知(われただたるをしる)」と読む文字。平和の精神を語るこの言葉が、作者の心に響いたのです。
金魚見てあの夏のこと思い出す
太田旭中3年 大久保早菜絵
【評】夜店で掬(すく)った金魚でしょう。「あの夏」と言うからには、特別な思い出があるのでしょうが、それは読者が自由に想像すればよいこと。