林桂選

2007年9月12日上毛新聞掲載


漢字テスト天井みあげて答えだす
前橋粕川小5年 戸塚将太郎
【評】「天井みあげて」は、漢字を思い出すためのポーズ。天井を見ながら、心は漢字の形を思い出そうとしているのです。
夏の朝光るのは海だった
前橋新田小5年 根本 結衣
【評】臨海学校での朝の体験でしょうか。海を光るものとして見つけたところに、新鮮な体験が書きとめられています。
やどかりが夕日をばっくに歩いてる
片品武尊根小5年 千明 礼乃
【評】小さなヤドカリなのに、大きな夕日をバックに描くことで、ヤドカリの存在感が大きく描かれています。大人には真似のできない視線。
暑い夏地球まるごとバーベキュー
前橋山王小6年 南雲 彩歌
【評】暑さの厳しかった今年の夏。確かに地球ごとバーベキューにされている感じです。救われるのは、誇張表現がユーモラスに思えること。
無意識に冷蔵庫開く父がいる
渋川小野上中1年 鈴木みちる
【評】暑さで思わず開く冷蔵庫。開けてみて特に食べたいものがある訳でもないことに気づくのです。父に見たものは自分の姿でもあります。
プールの日きゅうりをかじる小学生
渋川小野上中2年 斉藤 結衣
【評】夏休み。小学生がキュウリの丸かじりをしながら、プールに通う姿。元気で屈託のない小学生が生き生きと描かれています。
八月も今日で終わりか朝の風
渋川小野上中2年 平方 早紀
【評】涼しい朝風が吹いたのでしょう。それに促されて「八月も今日で終わりか」の感慨が湧きます。行く夏を惜しむ気持ちも加わります。
野球部の坊主に輝く夏の汗
渋川小野上中3年 一場  輝
【評】「汗」は夏の季語。「夏の汗」と重ねて、尋常ならざる汗のようすを描いています。しかも坊主頭からなのです。ユーモラス。
雨の後涼しい風の吹く日かな
渋川小野上中3年 佐藤 史佳
【評】暑い日の雨には救われる思いをすることがあります。その後の涼風はそれ以上の救い。「吹く日かな」のゆったりしたリズムがいい。
白球に太陽かさなる甲子園
中之条中3年 設楽 勇貴
【評】打ち上げられた白球が、夏の太陽と重なる瞬間。夏の甲子園大会の一場面を活写しています。多く寄せられる甲子園俳句の中でも秀作。
ゴミ箱の中身はアイスの包み紙
中之条中3年 関  優香
【評】気がつくと、ごみ箱はアイスの包装紙でいっぱい。そのごみの中身に、自分のアイス消費量の多さを改めて知るのです。ユーモラス。
ひまわりが太陽になった暑い午後
中之条中3年 竹渕 貴博
【評】ヒマワリを太陽に見たてるのは珍しくありませんが、太陽の数が増えたような暑い感覚を、ヒマワリに仮託して表現し巧みです。
遠くから花火の音する夏休み
中之条中3年 田村勇太郎
【評】花火大会。見に行かずに、遠くから響く花火の音で確認しています。夏休みも深まり、少し気だるくなった感じが描かれています。
帰り道夏まで届く影のあと
中之条中3年 唐澤 惇実
【評】「夏まで届く」の解釈は難しい。ただ夏に対する詩的なメッセージとして読者が感得できるものはあります。夏も寂寥感を持ちます。
君を待つ待合室も夏深し
中之条中3年 山田 礼子
【評】駅の待合室でしょう。帰省か、転居した「君」との待ち合わせです。「夏深し」に長らく待った気持ちも重なります。これも夏休み。
昆虫を世話する父は小学生
中之条中3年 割田美早紀
【評】昆虫を前に子どもに戻る父親像は多い。この句の手柄は「小学生」と断じた比喩(ひゆ)表現。「昆虫」は具体的な名でもよかったと思います。
水の音暑い空気を冷やしてる
中之条中3年 大前 真弓
【評】水の音は渓流などの流れの音でしょう。暑くなった夏の空気に涼味を送ってくれています。「冷やしてる」がうまい表現です。
青空に呼びかけ水をぶちまける
中之条中3年 柳田 聖子
【評】青空に何を呼びかけたのか不明ですが、「ぶちまける」という強い表現から、怒りの気持ちがこもっていそうです。原因は夏の暑さ?
流星も猫にはただの秋の草
中之条中3年 高平 彰子
【評】「流星」が「秋の草」へ転じてゆく意外性は、秀抜。猫が見ている世界は、人間には不可知。それを優れた詩的表現に昇華しています。
鬣を風に靡かすヒマワリよ
中之条中3年 小林 直人
【評】ヒマワリの花を、鬣(たてがみ)に見たてています。背高のっぽのキリンの体にライオンの頭が乗ったような不思議なイメージ。
Tシャツがさっきの風をアンコール
中之条中3年 石田 和子
【評】本当のアンコール主はTシャツを着ている人。Tシャツの袖口に吹き込んだ涼風の心地良さ。Tシャツに仮託したところがおもしろい。
海水のにおいがのこるビーチサンダル
富岡南中3年 萩原 雅人
【評】海水浴の思い出を、浜辺を歩いたビーチサンダルに残る海の匂(にお)いで甦らせます。行く夏を惜しむ季節を迎えているのです。