林桂選

2007年9月26日上毛新聞掲載


かごの下必ずコオロギひそんでる
高崎堤ヶ岡小5年 薩摩 顕蔵
【評】「必ず」がいい。もちろん客観的に考えて、「必ず」ということはありません。しかし、薩摩君の思いの中では、「必ず」なのです。
夏休み犬をなでると毛がぬける
前橋新田小5年 からさわはやと
【評】夏毛に抜けかわっている途中。夏休みになってもまだかわりきれていないのです。夏休みは犬と接する機会も増えることでしょう。
校庭のてつぼういっぱいタオルかけ
下仁田小坂小6年 林 亜紀乃
【評】鉄棒を汗ふき用のタオル掛けに使って、校庭で遊んでいるのでしょうか。「いっぱいに」に元気な仲間たちの姿が描かれています。
ざくろの実下の穴からアリが出た
前橋山王小6年 田中 琴音
【評】熟れたザクロにいち早く通うアリの姿を見つけたのです。「下の穴から」の発見がいい。アリのいちはやい行動をよく伝えています。
身長を聞くたびキリンになってみたい
前橋笂井小6年 須藤ひとみ
【評】身体計測でしょうか。なかなか伸びない身長の数値を聞くと、一時的にキリンのような長身へのあこがれが生まれるというのです。
プール行きバタフライを練習だ
太田城西小6年 菊池  駿
【評】一番難しい泳法がバタフライ。クロール、背泳、平泳ぎとマスターしてきて、いよいよ最後の仕上げのバタフライの練習なのでしょう。
梅雨明けの光りがすごくまぶしくて
榛東南小6年 戸塚 夢乃
【評】梅雨明けのまぶしい夏の太陽光。私たちが梅雨明けを実感するのは、このように具体的な事象の中であるに違いありません。
秋風といっしょに見たい青い空
榛東南小6年 細川 雄哉
【評】「いっしょに見たい」ですから、今は見ていません。きっと、暑い夏の日差しの中で青い空を仰いでいるのでしょう。秋よ来いの思い。
冷ややかな風の予言で秋になる
前橋桂萱中1年 檜山 真子
【評】「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる」(藤原敏行)の世界は、今も昔も変わることがありません。
ひまわりが明るい未来照らしてる
前橋桂萱中1年 猿山 奈央
【評】ヒマワリの花は、空間を照らすだけでなく、未来という時間まで照らしだしているようだというのです。花が与える希望の光です。
夕焼けが人間おおい赤くなる
前橋桂萱中1年 梶田 樹矢
【評】見ている人間まで赤く染める大きな夕焼け。「人間おおい」がいい。向こうにある夕焼けではなく、ここにある夕焼けの姿です。
秋の風聞こえるあの子の幻想曲
高崎中尾中1年 宮崎 海音
【評】秋風が運んでくる「あの子」の「幻想曲」。それを聞くことができるのは、もっぱら作者のあの子への強い思いに起因しています。
鈴虫の鳴く音ともに夜がくる
高崎中尾中1年 横澤 歩奈
【評】「ともに」は「とともに」でしょう。聴覚の鈴虫、視覚の夜陰。一緒にくることで、鈴虫は夜の声のような感じになっているのです。
一匹の犬が夏野を走ってく
渋川小野上中2年 唐澤 達也
【評】村上鬼城が蜻蛉や冬蜂に感情移入したように、唐澤君も犬に自分の姿を重ねて見ているのでしょう。犬に見るのは孤独で力強い姿です。
帰国して真夏の日本に戻りけり
渋川小野上中2年 佐藤  徹
【評】夏休みの海外旅行でしょうか。日本に戻るのは「真夏」に戻ることでもあると言うのです。涼しい国からの帰国だったのでしょう。
ガラス玉つめたい秋を転がして
渋川小野上中2年 斉藤 結衣
【評】感覚的な句です。金属やガラスが持つ冷感。ここではガラスの冷感から、秋の冷気をイメージしています。ガラスから広がる秋です。
月食を夜の庭でて祖母とみる
安中松井田東中2年 堀口  拓
【評】「祖母と見る」がいい。月食をわざわざ庭に出て見る心の余裕を持っているのは祖母と作者。父母の世代は忙しすぎるかもしれません。
夏祭り甘い香りが町つつむ
中之条中3年 金子 瑠実
【評】甘い香りは、屋台のいろいろな食べ物が発する香りです。町全体がその香りに包まれる感覚に、夏祭りの興奮が描かれています。
暑い夏ラムネがもっとすきとおる
中之条中3年 永井 里彩
【評】「もっと」は「もっとも」の書き誤りかもしれません。提出句形では、暑い夏が来ればラムネはもっと透き通るだろうの意になります。
甲子園白球をおう帽子たち
中之条中3年 宮崎 彩夏
【評】「帽子たち」がうまい。もちろん球児たちの象徴として使っています。離れて見守る視線、個よりは全体を見る視線を表現しています。
梨買いにとぼとぼと歩く一本道
前橋木瀬中3年 室橋 紀恵
【評】「とぼとぼと」に自分の意志で行くのではなく、お使いでゆく姿が描かれています。「一本道」には、不安と不満が見え隠れします。
受験生日に日に空気が重くなる
前橋木瀬中3年 中束 涼子
【評】受験が近づいてくる心の重圧感を、「日に日に空気が重くなる」で表現しています。「受験生」と客観視する視点があることが貴重。
夕暮れの風のにおいが秋になる
前橋木瀬中3年 今村佳那子
【評】日盛りの暑さには夏の名残ばかりが感じられても、夕暮れの涼風は既に秋の気配が濃厚です。「風のにおいが秋になる」は巧みな表現。
日陰へとどんどん進み休みけり
川場中3年 関  成美
【評】「どんどん進み」いい。決意か本能のような強さがあります。それが日盛りの暑さを避け、休むための行動であるところが愉快です。
教室でとんぼが迷うテスト中
渋川小野上中3年 横山ゆかり
【評】答案を書くのに迷っているのでしょう。そんな視線が教室に迷い込んだトンボを見つけます。誰も見つけられるトンボではないでしょう。