林桂選

2007年10月10日上毛新聞掲載


太陽のようなトマトにかじりつく
利根商高1年 林 ひろみ
【評】「太陽のような」という比喩(ひゆ)は事新しいものではありませんが、この句では「かじりつく」行為を誘発する力として成功しています。
宿題と暑さに負けてした昼寝
熊谷女子高1年 松本 澪佳
【評】答えが見つからない宿題。いたたまれない暑さ。二つから逃れる方法は昼寝。「負けて」の自己批判はユーモアの範疇(はんちゅう)でしょう。
御天道様今日も御機嫌麗しゅう
熊谷女子高1年 山本小百合
【評】猛暑の夏。熊谷はついに日本最高気温の記録地となりました。「御」の仰々しい使い方は、お手上げ状態の暑い日々の心情です。
大空を持ち上げ進むかぶとむし
熊谷女子高1年 雨宮 由佳
【評】動きの一つ一つに必要以上の力が入っているように見えるカブトムシ。「大空を持ち上げ」は、その動きを巧みに表現しています。
入道雲私の進路ももくもくよ
熊谷女子高1年 大内 唯花
【評】「もくもくよ」は、力強い意志のさまとも、迷っているさまとも読めます。恐らく二つともあるから「もくもくよ」なのでしょう。
熊谷の暑さを理由に遊ぶ日々
熊谷女子高1年 坂上 静香
【評】暑さにたえるだけで大きな仕事をしているようなもの。その上に勉強なんてムリ。遊ぶ理由は何とでも立つことを知っている作者です。
お母さんビリー体操すぐ除隊
熊谷女子高2年 関根未里香
【評】軍隊のトレーニングから生まれたというダイエット体操の指導者がビリー隊長。続けられなかったお母さんを「除隊」と呼ぶ諧謔(かいぎゃく)精神。
休み明け! 学校の階段やけにつらい
熊谷女子高2年 坂本 春香
【評】久しぶりに戻ってきた学校生活での違和感は、このように具体的で、小さな事象の中で発見されるものなのでしょう。視点がいい。
水筒を洗い忘れてピーマンの味
熊谷女子高2年 岡部 文子
【評】「ピーマンの味」がおもしろい。腐った水の味が残っているのを、こう言ったのです。思わず作者のピーマン嫌いも分かります。
シャツの中扇風機の風泳いでく
熊谷女子高2年 池原 千遥
【評】「風泳いでく」がうまい。シャツがこいのぼりか吹き流しのように感じられて、涼しそうです。一時の爽快感がよく表現されています。
あの雲に似てるね君のアイスクリーム
熊谷女子高2年 小菅 莉緒
【評】殊更に君のアイスクリームを話題にするのは、おすそわけに預かりたい下心から。どうでもよいたとえ話の「あの雲に似てるね」が愉快。
喜寿の祝祖母と入った草津の湯
熊谷女子高2年 荻野夏帆里
【評】同時作に「祖母の手をひいて登った白根山」もありました。お祖母さんの喜寿の祝いのほのぼのとした家族旅行が胸を打ちます。
お手伝いするふりをして水遊び
熊谷女子高2年 笹井 理美
【評】植木の水やりや水まきのお手伝いでしょうか。目的は自分自身の涼を求めて。もちろん、まわりの家族も先刻承知なのだと思います。
梨をむく弟の成長目を見はる
熊谷女子高2年 椙田 萌美
【評】梨を上手にむけるようになっていた弟さん。四苦八苦していたときの印象が強くあるのでしょう。具体的な場面で見えてくる「成長」。
ラムネ瓶ビー玉越しに花火見て
熊谷女子高2年 飯島友利恵
【評】花火大会の屋台で買ったラムネ。ビンのビー玉越しに花火を見たら、万華鏡のように美しく見えるのでしょうか。華やいだ気分の句。