林桂選

2007年10月24日上毛新聞掲載


夕焼けに色を移して彼岸花
高崎高1年 美細津吉泰
【評】夕闇に沈んで鮮やかな色彩を失った彼岸花の色が、しばらく夕焼けの色の中に残っているのです。「色を移した」が巧みな表現です。
猛暑の日顧問からのアイス待つ
熊谷女子高1年 大谷亜由美
【評】時々差し入れをしてくれる部顧問なのです。特に暑い日、差し入れを確信して待つ部員。日ごろの部の雰囲気も感じられてほほ笑ましい句。
「暑いね」と話しかければ「言うなよ」と
熊谷女子高2年 上野はるか
【評】挨拶(あいさつ)代わりに掛けた「暑いね」の言葉。相手は挨拶と受けとめられないほど暑さに閉口していたのです。もちろん親しい友人同士の会話。
弟と海月になりぬ宿題残し
熊谷女子高2年 難波  縁
【評】ユーモラスな句。宿題負けして骨抜きになっているようすの比喩(ひゆ)として「海月」を使っているのでしょうが、変身譚風でもあります。
夏休みコナン・ドイルを読みあさる
熊谷女子高2年 秋谷公美子
【評】夏休みにコナン・ドイルの小説をまとめ読みしたのです。ドイルは名探偵シャーロック・ホームズの作者。夏休みらしい読書法です。
向日葵の種が出来たら夏終わり
熊谷女子高2年 倉上明日香
【評】夏を向日葵(ひまわり)の種のできる期間でカウントする視点が新鮮です。「年」は稲が実る期間のカウント単位だと聞いたことを思い出しました。
父さんはずっと寝ている海なのに
熊谷女子高2年 天方 裕衣
【評】海で寝てばかりのお父さん。疲れもあるでしょうが、家族を連れてくるのが仕事のお父さん。海は帰りの仕事のための休息期間なのでは?
炎天下自分の影も見当たらず
熊谷女子高2年 妹尾 萌菜
【評】もちろん、強い日差しのもとでは短い強い影が落ちているはず。しかし、その影も消えるほどの強い日差しだという誇張表現。面白い。
いわし雲夕日に映える帰り道
安中総合高2年 宇佐美 誠
【評】初句でも中七でも切って読むことが可能。面白いのは後者の方でしょうか。夕日に照らし出された帰り道と上空の鰯(いわし)雲との取り合わせ。
栗の実や老いて美し焦げ茶色
渋川青翠高3年 重田 裕也
【評】「や」と切れ字があるので、「老いて美し焦げ茶色」は、栗の実だけのことではなくなります。他に何があるか考えると楽しくなる句。