鈴木伸一選

2007年10月31日上毛新聞掲載


コスモスの水やりしたら一休み
高崎堤ヶ岡小5年 飯塚美沙輝
【評】学校の花壇の水やりが、飯塚さんの係なのでしょう。飯塚さんが係の仕事をしっかりとしてくれるので、コスモスも喜んでいますよ。
雨の音秋のはじめの合図かな
前橋山王小5年 渡根木彩歌
【評】昔の歌人は、風の音に秋のおとずれを感じ取りましたが、渡根木さんは、心落ち着く雨の音で、秋の始まりを知ったというわけです。
犬だってダラダラしてる夏休み
前橋山王小6年 小出 ゆき
【評】夏休みは、きちんと計画を立てて、規則正しい生活を送ろうと思っていても、いざとなると、なかなかその通りにはいかないものです。
夏の空みんなのえがおみていたよ
前橋新田小5年 田子まおり
【評】「みんなのえがお」を見ていたのは田子さんだけれど、「夏の空」も同じように見ていたと読めるのが、俳句のおもしろいところです。
さらさらとしずかに通る秋の川
前橋新田小6年 黒崎 黄南
【評】秋の川に水がさらさら流れているという、中原中也(なかはらちゅうや)の詩を思い出しました。秋という季節特有の透明感のある空気が、たいへん印象的。
運動会土のにおいがいつまでも
前橋新田小6年 富沢 佳子
【評】校庭の土のにおいが、いつまでも体に残っているようだというのです。それくらい、運動会に一生懸命取り組んだということでしょう。
しばをかる祖父の背中に赤トンボ
高崎城山小5年 瀧口 芽衣
【評】さわやかな日ざしの中、芝生の手入れをするおじいさんの背に、赤トンボがとまりました。秋の季節感を、すなおにとらえた俳句です。
木にとまるトンボも少し秋休み
高崎城山小6年 吉田  葵
【評】秋休みのある学校も増えましたが、そんなに長い休みではありませんからね。「少し」という表現も、その辺から来ているのでしょう。
秋の空見ているようで見ていない
高崎城山小6年 黒沢  州
【評】秋の空に見入っているようでいて、心の中ではぼんやりと別のことを考えている?。こういうことって、私たちにはよくありますね。
雨あがり八月の空どこまでも
前橋荒牧小6年 戸村 瑞穂
【評】「八月の空」に、戦争の記憶がよみがえる人もいるでしょうし、甲子園を思い出す人もいるでしょう。いろんなふうに読める俳句です。
夏休みどこに行っても暑かった
前橋荒牧小6年 藤井 美樹
【評】記録的な猛暑の続いた今年の夏は、本当にこの句の通りでした。地球温暖化という問題を、いやでも考えないわけにはいきませんね。
マーチングぼくにワイシャツ似合わない
前橋荒牧小6年 橋本 哲也
【評】「似合わない」と言っているけど、そんなことはないと思います。ただ、慣れないワイシャツが、ちょっと照れくさかったのでしょう。
帰り道空の夕日は母の色
安中西横野小6年 板垣亜由美
【評】「母の色」という愛情豊かな表現がいい。きっと、すべてをやさしく包みこんでくれるような、あたたかい色の夕日だったのでしょう。
秋空に白いけしごむおっこちた
下仁田小坂小6年 柳沢 明音
【評】秋空の下で絵などを描いているときに、消しゴムが落ちたのでしょうか。空に浮かぶ白い雲を、消しゴムにたとえたとも読めますが?。
玄関をあけたらさんまのにおいした
榛東南小6年 宿原 崇志
【評】サンマを焼くいいにおいに、秋だなあ、としみじみ思った宿原君。「玄関をあけたら」というところに、臨場感があるのもいいですね。
夏休み何度開けたか冷蔵庫
太田木崎中1年 笹木俊之介
【評】この夏の記録的な猛暑には、本当に参ってしまいました。私も笹木君と同様、冷たいもの欲しさに何度、冷蔵庫を開けたかしれません。
夕暮れの猫見るさきにいわし雲
前橋南橘中1年 武井 美久
【評】ネコだからイワシを狙っていると読むのは、ちょっと理に落ちる感じでしょう。ここは素直に、平穏な秋の夕暮れ風景と受け取りたい。
衣替えしめるボタンが五個増えた
渋川小野上中1年 樋田 拓也
【評】十月の衣替えの後は冬服になって、しめるボタンの数も急に増えます。「五個」という具体的な書き方に、実感が伴っているのがいい。
野球部の声におどろく赤とんぼ
渋川小野上中2年 黒尾  慶
【評】野球は、練習中も常に声を出すことが大事ですものね。きびきびとした声が響き渡る校庭では、赤トンボが驚いたように飛んでいます。
秋の晩冷たく乾いた洗濯物
渋川小野上中2年 樋田 真季
【評】秋も深まり、夜には少し寒さをおぼえるころ。洗たく物のひんやりとした手ざわりに、日常の中でとらえた季節感がよく出ています。
風に乗る気まぐれな雲秋の空
前橋木瀬中3年 下田 綾乃
【評】受験を控えた作者が「気まぐれ」という言葉を選んだ裏には、自由気ままであることへのあこがれなどが隠れているのかもしれません。
稲かりの田をつき抜ける帰り道
前橋木瀬中3年 津久井 勲
【評】一直線に伸びた通学路の両側に広がる稲田は、今まさに刈り入れの真っ盛り。秋の季節感を存分に味わえる、すばらしい帰り道です。
夕日差す教室の中も秋の色
中之条中3年 篠原  舞
【評】学校生活の中に、季節感をとらえたのがいい。教室の中も外も、穏やかで落ち着いた秋の雰囲気に包まれ、読者の心もほっとします。