鈴木伸一選

2007年12月12日上毛新聞掲載


今年もねかまくら光を灯してる
前橋新田小5年 金高 結奈
【評】雪室(ゆきむろ)の中に祭壇を設け、子どもたちが甘酒やもちを食べたりする、かまくら。今年だけでなく、いつまでも続いてほしい美しい行事です。
稲かりしあっちこっちがかゆくなる
前橋大室小5年 大沢 兵雅
【評】大室小では、古代米を栽培しているんですね。この句は、その刈り入れ風景かと思いますが、「かゆくなる」に実感があるのがいい。
稲かりでかえるがうでにのってきた
前橋大室小5年 関野 凌雅
【評】秋になってイネの下にかくれていたカエルが、おどろいて飛び出してきたのでしょう。実際に体験しないと、こういう句は書けません。
秋の風ふいたらすこしいいにおい
前橋大室小6年 石野 美々
【評】秋の風は「色なき風」とも言い、無色透明な印象です。「すこし」という繊細(せんさい)な感じ方にも、そうした印象が投影されているでしょう。
登校中のびてた稲がかられてる
前橋大室小6年 太田圭一郎
【評】黄金色に実ったイネも、いよいよ刈り入れどき。朝、登校の途中でその光景を目にし、あらためて秋の深まりを実感した太田君です。
雪の中みんなで汽車になってみる
片品武尊根小6年 星野和華子
【評】みんなの白い息が、汽車の煙のように見えるのです。雪の中で元気に遊ぶ星野さんたちの姿が目に浮かぶようで、私も楽しくなりました。
秋の川いろとりどりな水の色
前橋粕川小6年 大塚  舞
【評】秋の川は、ことに水が澄んでいる感じがします。だからこそ、水中の石や水草などのさまざまな色が、くっきりと見えるのでしょう。
三日月がかすかに見える塾の窓
中之条中3年 宮崎 彩夏
【評】今は、どの塾でもかなり遅い時間まで授業を行います。この句は受験生としての日常を淡々と描いていますが、かえってそれが印象的。
電波ごし友の声から冬の風
中之条中3年 設楽 勇貴
【評】携帯電話での通話中、電波状態の影響で友達の声が聞き取りにくくなったのかもしれません。その瞬間、風の冷たさを感じたのが鋭い。
寒い朝あいさつ一つ無料だよ
中之条中3年 高橋千沙都
【評】寒い朝も、元気なあいさつ一つで、心がぐんと温まります。「無料だよ」という表現から、明るさと健康さが伝わり、好感が持てます。
寒空に横断歩道がかすれてる
中之条中3年 吉田 知世
【評】冬の空の下、塗装の薄れた横断歩道が一つ。寒々として、ある種の虚無感すら漂わせている光景ですが、それがなぜか心に残ります。
雪つもる机に向かい外を見ず
渋川小野上中3年 一場  輝
【評】勉強に没頭して、雪が降っているのを忘れていたのでしょうか。勉強に集中するため、意識して外を見ないようにしたのでしょうか。
教科書の角がつぶれて寒いかな
渋川小野上中3年 中橋 重明
【評】ふとした弾みで、角がつぶれてしまった教科書。それを見ると、実際の寒さ以上に、心理的な寒さが感じられてならないのでしょう。
秋空に心のせまさ感じけり
前橋桂萱中3年 竹花 勇太
【評】心の狭さを感じることが、むしろ私たちを成長させるのでしょう。なお、原句の「秋空や」を、掲載の形に直して採らせてもらいました。