林桂選

2008年1月9日上毛新聞掲載


「いいなぁ」と思いはじめるネコたちに
前橋桃川小5年 吉田 彩愛
【評】寒くなって、コタツで寝ているネコがうらやましい。そして、勉強しなくてもよいネコがうらやましいのかもしれません。
白菜は空っ風で甘くなる
高崎堤ヶ岡小5年 長谷川真哉
【評】寒さに出会うことによって野菜は甘くおいしくなるといいます。上州の冷たい空っ風は、甘い白菜を毎日作っていることになります。
弟をゆたんぽがわりにして眠る
下仁田中1年 岡野 峻士
【評】「ゆたんぽがわりにして」がいい。夏は暑苦しく感じたかもしれませんが、冬は別。弟さんも同じように思っていることでしょう。
部活中落葉が風でたまにふる
渋川小野上中1年 村上 大悟
【評】「たまにふる」がいい。これはたまに息が抜けて視線を落葉に遊ばせているということなのです。なかなか高度な表現です。
体育着を伸ばして着たり冬の午後
渋川小野上中2年  野村 千夏
【評】「伸ばして着たり」がおもしろい。いかにも伸縮性に富んだ素材でできている体育着らしい表現です。寒さ対策なのでしょうけれど。
ストーブの音が頭に響くなり
渋川小野上中2年 佐藤  徹
【評】「頭に響くなり」がうまい。学校の低く響くストーブの音は、確かに体に響くというよりは、直接頭で感じるような音です。
万華鏡私がのぞけば群青に
中之条中3年 平形友里香
【評】「群青に」がいい。万華鏡をのぞきながら回すと、模様が変わるだけでなく色彩の印象が変わったと感じることがあります。
こたつの中足をのばすと猫がいる
中之条中3年 松尾 美月
【評】人がいれば足がどのあたりにあるか予測がつきますが、猫とは予測がつかない出会い方をします。「猫がいる」には驚きがあります。
冬空を照らす工事の赤ランプ
中之条中3年 関  沙織
【評】工事中を示す赤いランプが暗い冬空をバックに点滅しているのです。寒そうな印象を与えるのは、人工的な風景だからでしょう。
妹と一緒に出した白いマフラー
中之条中3年 岡部 瑞稀
【評】妹さんとおそろいのマフラーなのでしょう。久しぶりに見るマフラーの印象を「白い」に託しています。お気に入りの品なのでしょう。
金色のネコの瞳に雪映る
中之条中3年 山崎 明菜
【評】猫の瞳の金色とそこに映る雪の白が美しい映像となってイメージされます。現実というよりは想像でしょうが、美しい世界です。
青空を猫もあおぐや漱石忌
中之条中3年 山田 礼子
【評】「吾輩は猫である」の作者・夏目漱石の忌日は十二月九日です。冬空を仰ぐ猫と作者。猫まで漱石のことを考えていそうな趣なのです。
すきとおる冷たい風を持ち帰る
中之条中3年 柳田 聖子
【評】冷たさの表現として「すきとおる」が使われています。家に帰っても寒さを身にまとっている感じを「持ち帰る」で表現しています。
やまゆりのひそひそ話に耳澄ます
中之条中3年 高橋  龍
【評】ヤマユリは山野草では大きく香りも強い花で存在感があります。十代のころ「山百合に向かい恋するごときかな」(林桂)と作りました。
まっ青な空に「おはよう」言ってみる
中之条中3年 渡辺 華江
【評】朝のあいさつは、友だちや先生ばかりではありません。晴れわたった空もあいさつの相手。気持ちよい一日がはじまります。
北風や我押す両手力強し
安中一中3年 戸塚 麻綾
【評】強い北風が体を押すというのは、よくある句材です。でも、誰も「両手強し」とまで具体的にたとえて表現できる訳ではありません。
なんでだろ恋もミカンも甘いはず
富岡南中3年 佐藤友里奈
【評】甘くない恋に出会ったのか、甘くないミカンに出会って詠んだのかで事情は違ってきます。でも、受け止め方に余裕があるのが魅力です。
出会いの場太陽てらす夏の恋
太田旭中3年 松元トミ子
【評】具体的ではない「出会いの場」ですが、どこであっても夏の太陽の輝く場所なのです。「夏の恋」が持つイメージを膨らませています。
藤光り朝日で覚めて高校生
太田旭中3年 大久保早菜絵
【評】藤の花が咲くころに高校生になっている自分を想像しているのか、現実の高校生を描いているのかは不明。ともあれ「藤光り」は秀逸。