林桂選

2008年3月26日上毛新聞掲載


帰り道春のにおいがたまにする
前橋桃川小5年 砂川  司
【評】「たまにする」がいい。まだ完全に春らしくはなっていないのに、時々春を感じることができるのです。春のにおいにはみな敏感です。
利根川の片側だけに雪残る
玉村中央小6年 白石 智大
【評】利根川の片岸だけ日が陰って雪が残っているのです。片側にだけ雪を発見したところがいい。当たり前と見ないのが俳句では大切です。
豆まきをしないで夢に鬼が出た
前橋大胡小6年 神山 真由
【評】豆まきをしなかったことが心のどこかに不安として残っていたのでしょう。案の定、鬼は夢の中に現れて暴れ回ります。
クリスマス絵の具の白が足りずにいた
渋川小野上中1年 齋藤 華蓮
【評】クリスマスの絵を描いて、白を使い切ってしまったのです。雪にもサンタの袋やひげにも思いっきり白を使ったのでしょう。
桜花思い出の写真笑ってて
高崎中尾中1年 今井 寛弥
【評】入学式の写真でしょう。改めて笑っている自分に気がつきます。そして、その時の楽しい気持ちもよみがえります。大切な気持ちの確認です。
春の雲自由に夢をつめこんで
高崎中尾中1年 中澤 遥菜
【評】「春の雲」で切れる初句切れの句でしょう。「自由に夢をつめこんで」いるのは「作者」。希望に胸を膨らませて仰いだ春の雲です。
早く来い山から繋ぐ雪解水
高崎中尾中1年 土屋 翔太
【評】「山から繋(つな)ぐ」がいい。雪山から一本に繋がっている雪解水をイメージしています。「早く来い」には春を待つ気持ちがあります。
布団干し昼寝がしたい春の空
高崎中尾中1年 大野 莉穂
【評】春の暖かい日差しに干された布団。その布団に寝たらいかにも気持ちよさそうです。夜を待てずに「昼寝がしたい」と思うほどです。
河川敷寒さが残る春の風
高崎中尾中1年 深澤 佑樹
【評】石が転がる河川敷は、冷たくなった石によって一層寒さが強く感じられます。風は春になっても、冬はまだ動かないように思えるのです。
朧月夜空の下の私かな
安中松井田東中2年 武井 未来
【評】朧(おぼろ)月夜の空という広がりから、一気に自分にイメージを絞り込みます。この絞り込みに自分をどう感じているかの答えがあります。
妹の楽しみはいつも雪遊び
六合中2年 山本 恵莉
【評】冬の遊びはどれも雪を相手にするものばかりの妹さん。少し距離をおいて見ている姉の視線が「楽しみはいつも」に出ています。
ぺんだこの大きさだけは負けないのに
前橋木瀬中3年 飯島あずさ
【評】「のに」の後には、勉強の点数の伸びない悔しい思いの自分がいます。きっと筆圧の強い字を書く人なのでしょう。性格も伝わります。
合格を祝ってくれたうちの猫
中之条中3年 高橋 朋恵
【評】ネコはいつものように甘えているだけかもしれません。しかし、それが合格を祝ってくれているように見えるのが愛猫家の視線です。
えんぴつのしんの冷たさ冬語る
中之条中3年 小渕 結香
【評】鉛筆の芯(しん)にも冷たさを感じるという繊細な感覚がいい。ただそれが「冬語る」ゆえだと説明してしまうともったいない感じがします。
冬終盤空いっぱいに星がさく
中之条中3年 本多 祐子
【評】夜空いっぱい広がる星を「星がさく」と表現。まるで花が咲いたかのように感じているのです。「冬終盤」という思いが反映しています。
自転車のかごに冬が入ってる
中之条中3年 渡辺 華江
【評】自転車のかごにはいろいろな物が入ります。類想句はありますが、「冬が入ってる」は抽象的ゆえイメージが広がる作品となっています。
カーテンの向こうは春の雲およぐ
中之条中3年 新井実穂子
【評】窓越し、カーテン越しであることで、別世界のように感じられる外の風景。「春の雲およぐ」は、そんな別世界ののどかな趣なのです。
春の光に温められた机かな
中之条中3年 柳田 聖子
【評】窓際の木製の机でしょう。それほど暖かいと思っていなかった部屋の机なのに、思いのほか暖かくなっていたのです。いかにも春です。
空見ても受験結果分からない
中之条中3年 鈴木  杏
【評】合否の不安を抱えながら結果を待つ日々。どこにもその答えが見つからない不安なようすを「空見ても」で表現しています。