鈴木伸一選

2008年6月18日上毛新聞掲載


木々達がはげしくおどり風作る
前橋大室小5年 星野真佑子
【評】実際は、風がふくから木々が大きくおどっているのですが、逆に木々がおどることで風を生んでいると表現。発想の転換が効果的です。
春の池えさの取り合いコイの口
前橋桃瀬小5年 黒沢 月乃
【評】何匹ものコイが、大きな口をいっせいに開けています。ぎょっとするような光景ですが、それを春ののどかな気分がやわらげています。
おにごっこけやきの下はすずしいな
前橋大胡小5年 斉藤 千冬
【評】大ケヤキの下には、大きな日かげができます。ふき抜けてゆく風も、心地よいことでしょう。私も、おにごっこをしたくなりましたよ。
似顔絵が私をみているしんけんに
前橋大胡小6年 阿久沢唯真
【評】一生懸命に描いた似顔絵には、その真剣さが表情に出るのです。似顔絵に心の中をのぞかれているようで、思わず背すじが伸びますね。
梅雨の日に肩までつかる湯船かな
邑楽長柄小6年 根岸 春奈
【評】梅雨どきは、思いがけず気温が下がることがあります。そんな日に、お風呂にゆっくりとつかるのも、季節感を味わういい方法です。
かたつむりゆっくり幸せさがしてる
高崎金古南小6年 木崎 那菜
【評】現代人は、何かにつけて急ぎ過ぎなのかもしれません。カタツムリを見習って、木崎さんもゆっくりと、本当の幸せを探してください。
雨の日はちょっぴり不思議なにおいする
前橋桃川小6年 中野 大河
【評】確かに、中野君の言う通りです。こういうちょっとしたことに気づく感覚を鈍らせないようにすれば、かならずいい俳句が生まれます。
菜の花が春への道をつくってる
前橋大胡東小6年 大嶋 優萌
【評】黄色いじゅうたんを敷きつめたような、一面の菜の花。その中を通ってゆけば、春という季節の妖精たちが待っていそうな気がします。
夏の夜花火のけむり目にしみる
前橋天神小6年 都丸 淳也
【評】庭先などで花火をするとき、うっかり風下に立ってしまうと、煙がひどく目にしみたりします。それも楽しい夏の思い出ですけどね。
夏の海見てるときれいでも泳ぐ
吉井馬庭小6年 吉田  藍
【評】きらきらと輝く青い海は本当にきれいだけど、吉田さんはそれだけでは飽き足らず、思いきり泳ぐというわけです。その元気さがいい。
空見れば雨雲近づくてるぼうず
中之条中1年 畔上みゆき
【評】てるてるぼうずに顔があれば、近づく雨雲に当惑の表情を浮かべていたことでしょう。畔上さんも、同じ表情だったに違いありません。
描いたことあるよこの花夏つばき
中之条中1年 新井 遥菜
【評】ナツツバキはシャラとも言い、ツバキに似た白く美しい花が咲きます。「描いたことあるよ」という弾んだ口調がほほえましいですね。
曇り空僕の所に垂れ下がる
中之条中1年 関  夏生
【評】曇り空が、自分の頭上にことさら重く垂れこめているように感じられたのです。心の中に、何かうっ屈するものがあったのでしょうか。
星光る友と私の仲なおり
中之条中1年 原沢 彩香
【評】中学時代に培(つちか)った友情は、その後の大切な宝物となります。「星光る」という美しい言葉は、そのまま友情の美しさへとつながります。
衣替え真白な世界やってくる
高崎中尾中2年 佐藤  彩
【評】夏服に変わり、校内がまぶしいほどの白にあふれます。「真白な世界」というたとえが、初夏のすがすがしさを、よくとらえています。
ふんわりと髪を引っぱる初夏のかぜ
高崎中尾中2年 末岡 弓佳
【評】髪をふわりとなびかせる初夏の風の感触が、とてもみずみずしく表現されています。若々しいと同時に、清潔感があるのもいいですね。
梅雨の日々毎日籠る図書館に
高崎中尾中2年 萩原 燦雨
【評】図書館に入り浸る自分を、いささか自嘲(じちょう)気味に表現。でも、本に親しむためのまたとないチャンスと考え、どしどし読んだ方がいい。
いもうとと風をとりあうあつい夏
高崎中尾中2年 細谷 莉奈
【評】扇風機の風を、妹さんと取り合っているのです。もっとも、取り合うと言いながら、最後は仲よく分け合っているに違いありません。
梅雨が来て川の流れのしなやかさ
前橋木瀬中2年 川島 史也
【評】豊かな水をたたえた川が、ゆるやかに流れています。しっとりとした梅雨どきの趣がよく伝わり、雨もいいものだなあ、と思われます。
朝どれの野菜冷やして木かげへと
嬬恋東中2年 薗田 明花
【評】キャベツをはじめ、嬬恋の野菜と聞くと、どれもがいかにもみずみずしい感じがします。涼しい木かげで食せば、さらにおいしそう。
ものさしで引く線揺らぐ夏来たり
渋川小野上中3年 樋田 真季
【評】線が乱れたことと夏の到来は無関係ですが、それをあえて関係あるもののように表現。こうした断定的表現が、俳句の印象を強めます。