鈴木伸一選

2008年7月16日上毛新聞掲載


じゅくまでのとおいみちのり夏の日々
前橋大胡小5年 田中 咲綾
【評】がんばって勉強しようという気持ちと、ちょっとつらいなあという気持ちが半々になったような、複雑な表情の俳句だと思いました。
太陽とあせとどろとで草むしり
前橋大室小5年 萩原木の香
【評】照りつける太陽。流れる汗。手足をよごす泥。一読、草むしりの大変さがよく分かります。もちろん、萩原さんががんばったことも。
なえ達が次々植えられ前ならえ
前橋桃瀬小5年 黒沢 月乃
【評】田植えの体験学習をしたのでしょう。順番に植えられた苗が、何だか前ならえをしているように見えるという、おもしろい着想の俳句。
夏の川川はゆらりとながれてる
前橋桃瀬小5年 福島健太郎
【評】「ゆらりと」という表現から、ある程度の大きさの川が想像されます。水を豊かにたたえつつ、静かに流れているといった感じですね。
プールとは魚になれる時間だよ
前橋大胡東小5年 藤井  華
【評】私は水泳がへたなので、魚のように泳げる藤井さんがうらやましく思えます。いよいよ夏本番。魚になって思いきり泳いでくださいね。
夏の海なみがよろこび音立てる
前橋山王小5年 桑原禄愛那
【評】似た作品はありますが、それでも、この句の生き生きとした夏の海らしさは、十分に魅力的。私の耳にも、波の音が聞こえてきますよ。
家の中せん風機の音雨の音
高崎城山小6年 近藤 充人
【評】梅雨どきは湿気が多いため、ひどくむし暑い日がありますね。同時に聞こえてくる扇風機の音と雨の音に、季節感がよく出ています。
シャラの木よ自分の色を何と言う
榛東南小6年 佐藤 晃征
【評】シャラの白い花には、なるほど何色にも染まらない清らかさがあるようです。何かにつけて色分けをしたがる人間は、反省が必要かも。
梅雨の中魂込めてホームラン
榛東南小6年 吉田 翔平
【評】「一球入魂」という言葉がありますが、吉田君の一打も、まさにそんな感じだったのでしょう。梅雨空も吹き飛んでしまいそうですね。
紫陽花の後ろに見える妙義山
安中松井田東中1年 山田  侑
【評】しっとりと落ち着いた趣のアジサイと、峨峨(がが)たる姿の妙義山。まるで絵画を見るような構図ですが、それをうまく俳句にまとめました。
夏の木々みんなそろって歌い出す
中之条中1年 原沢 彩香
【評】強めの風に、木々がいっせいに揺れ出したのです。それが、歌っているように見えたのでしょうが、いかにもさわやかでいいですね。
家の田にほたる戻りて父笑う
渋川小野上中1年 野村 聡太
【評】しばらく見なかったホタルが戻ってきました。それだけ環境が良くなったということでしょうか。お父さんの喜びが、よく分かります。
テスト中ひらひら飛ぶよ蝶々たち
渋川小野上中2年 小野恵里佳
【評】チョウは現実のものとも、作者の脳裏に浮かんだイメージであるとも読めます。後者の方が、多くの人の共感を呼ぶかもしれません。
皿の上鰺も反り返る暑さかな
渋川小野上中3年 樋田 真季
【評】「兎も片耳垂るる大暑かな」(芥川龍之介)という句を思い出しました。アジもウサギも人間も、あまり暑いと参ってしまうのは同じ。
銀色の空を見上げて夏をきく
前橋木瀬中2年 柿沼  光
【評】梅雨空などは鈍い銀色という感じもしますが、そうした事実関係の穿鑿(せんさく)より、作者の内面風景として「銀色の空」を理解したいですね。
すり減った黄色いチョークのような僕
前橋木瀬中2年 松浦天矢斗
【評】私も作者と同年代のころは、自分を矮小(わいしょう)化して、なかなか自己肯定感を持つことができませんでした。ですから、この句に共鳴します。
日が差して川が輝く山女かな
下仁田中3年 柳沢 大祐
【評】「輝く」が、川の水とヤマメの銀鱗(ぎんりん)の両方に掛かるのがいい。作者が釣り上げたのだとすれば、その歓声までもが輝いている感じです。
新緑の緑が映える西陣織
前橋広瀬中3年 一場 璃子
【評】修学旅行俳句は、どうしても寺社仏閣が多く詠まれますが、この作品は、西陣織の美しい色合いと新緑がうまく結びついて、好印象。