鈴木伸一選

2008年8月13日上毛新聞掲載


雷がいそがしそうに出てきたよ
高崎堤ケ岡小5年 渡辺 千夏
【評】空が暗くなったかと思うと、大きな雷鳴がとどろきます。まわりの様子が急変したことを、「いそがしそう」と表現したのでしょうね。
熱帯夜うちの子犬もねむれない
高崎城山小5年 田中ひであき
【評】私も田中君や子犬と同じで、暑いのはどうも苦手です。それでも先日、立秋になりました。涼しくなるまで、もう少し我慢しましょう。
尾瀬ぬまにニッコウキスゲいいにおい
前橋大胡東小5年 山本 佳奈
【評】尾瀬学校に参加した際の俳句のようです。似た作品はいくつかありましたが、山本さんの句の素直さと実感の豊かさが気に入りました。
夏休みいもうときゅうりをむしゃむしゃと
前橋駒形小5年 石沢 栞名
【評】キュウリはほとんどが水分なので、暑い夏にはもってこいの野菜なんですって。がぶりとかじるのが、たしかに一番おいしいですよね。
まってたよこまがたまつりでさわぐのを
前橋駒形小5年 根岸  秀
【評】お祭りというのは神様から力をもらい、思いきりエネルギーを発散させるものですものね。「まってたよ」に、実感がこもっています。
夏になる料理の色も変わってる
前橋山王小5年 南雲 陽乃
【評】「美しき緑走れり夏料理」(星野立子)という句もありますが、夏は、食材も涼しげな色のものがいいですね。豊かな季節感が魅力的。
長ぐつの緑が映る水たまり
前橋山王小6年 小泉 京香
【評】梅雨どきの俳句だと思いますが、うっとうしさや暗さがなくて、いいですね。長ぐつの緑色が、とてもみずみずしく感じられてきます。
鳥から見るかささす私は黄色の花
前橋山王小6年 渋谷  遥
【評】空を飛ぶ鳥の目で、黄色いかさをさしている自分の姿を見ているのです。こういう発想の転換は、俳句にとってたいへん大事なこと。
夕立でいもうとしがみついてくる
前橋下川淵小6年 今井 順平
【評】おさない妹さんにとって、今井君は頼りになるお兄さんです。先日は、妹さんならずとも怖くなるような激しい夕立がありましたね。
暑い夏ギラギラみなぎるぼくの闘志
前橋下川淵小6年 飛田野和真
【評】飛田野君は、何かスポーツをしているのかな。闘志を燃やして試合にのぞんでいるといった感じが、ダイナミックに表現されています。
またつるぞ夏空の下でニジマスを
高崎上郊小6年 黒崎 智史
【評】「またつるぞ」という言い方に、黒崎君の心の弾みがよく出ています。このように熱中できるものを持つのは、とてもいいことですね。
妹とビー玉ながめるラムネかな
高崎上郊小6年 鷲沢  景
【評】ラムネのビンの中のビー玉って、たしかにしげしげと眺めてみたくなりますよね。妹さんの不思議そうな表情まで目に浮かぶようです。
梅雨終わり夏のとびらに今立った
前橋粕川小6年 阿部由紀乃
【評】梅雨が明けると、いよいよ夏本番。夏休みのいろんな計画や予定が頭に浮かび、わくわくしてきます。「今立った」に実感があります。
プールの日空がプールといっしょに青くなる
前橋粕川小6年 及川 大貴
【評】プールに入るのを、今か今かと待っている及川君。空も青々と晴れ渡り、夏ならではの伸び伸びとした気分が、よく伝わってきます。
五月雨や息止めて一気に筆をはらう
赤城養護小児医療センター分校小6年信沢 睦美
【評】書道で最後に筆を払うときの緊張感が、的確に表現されています。五月雨が、それをやわらげるように降っているという表現もうまい。
遠足は若葉の下で雨宿り
赤城養護小児医療センター分校中2年尾沢 有輝
【評】みずみずしい若葉の生い茂った樹下での雨宿りとは、それだけで豊かな詩情を感じますね。遠足の、いい思い出になったことでしょう。
夕立ですぐに変わった空の顔
安中松井田東中1年 布施 大樹
【評】夕立が来るときも、去った後も、本当に空の表情が激変しますものね。そんな感じが、布施君の驚きを交えて素直に表現されています。
夏休み教室静かで夏らしい
渋川小野上中1年 中沢 玲菜
【評】人気ひとけのない静かな教室は、どこかさびしい感じがする一方で、独特の開放感も漂わせているようです。それが「夏らしい」のでしょう。
夏休み部屋には僕と夏の音
渋川小野上中1年 宮  康太
【評】出かけたり、部活動で汗を流したりするのも夏らしいですが、この句のようにたまには家にいて、静かな時間を過ごすのもいいですね。
友達がおにぎり持ってプール行く
渋川小野上中2年 野村 美咲
【評】お弁当をしっかり用意して出かけるのですから、友達はプールで一日過ごす心づもりなのでしょう。うらやましいくらいの元気さです。
せみが鳴く一匹だけがフライング
渋川小野上中3年 斉藤 結衣
【評】セミがいっせいに鳴き始める前に、一匹だけが先に鳴き出したのです。あわて者はどこにもいるものだ、と思わず苦笑してしまいます。
新緑の碓氷峠をひた歩く
高崎中尾中2年 田村  豪
【評】私の若いころの句に、「ゆく夏の東海道をひた走る」があります。表現の仕方は似ていますが、田村君の方が、ずっとさわやかですね。
風鈴とともに聞こえる波の音
高崎中尾中2年 吉田 昂正
【評】鄙ひなびた漁村風景などが思い浮かぶ一方、自宅の軒下に吊るされた風鈴の音から、かつて見た海の記憶が呼び覚まされたと読んでもいい。
玄関に夕立教える父の靴
高崎中尾中2年 吉田 優里
【評】職場から帰宅したお父さんの靴が、びしょ濡れになっていたのです。言葉にせずとも、お父さんへのいたわりの思いが伝わってきます。
三人で語る廊下に風薫る
前橋東中3年 塩沢佳奈子
【評】二人だと秘密めいてしまうし、四人以上だとにぎやか過ぎます。「三人」というのが、夢や希望を語り合うのにちょうどいい感じです。
梅雨近く雲が群れなしさわぎだす
前橋東中3年 増田 清香
【評】「群れなし」が、梅雨入り間近の空模様を端的にとらえています。何となく落ち着かない作者の内面まで推察できるようでもあります。