林桂選

2008年9月17日上毛新聞掲載


福島の川で犬たち風になる
前橋山王小5年 矢部 鈴夏
【評】犬を連れての家族旅行でしょうか。犬もいつもと違う場所を喜んでいるのでしょう。「風になる」に犬の喜ぶ姿が描かれています。
弟と二回目過ごす夏休み
前橋山王小5年 柳  侑歩
【評】弟さんは二年生でしょうか。「二回目過ごす夏休み」には、姉弟二人でお留守番をしながら過ごす時間が描かれているのでしょう。
夏休み麦わらぼうしだれのかな
前橋駒形小5年 細谷 可夏
【評】どこかに置き忘れられている麦わら帽子でしょう。誰が忘れたのだろうと思いながら、いろいろな人の夏休みの過ごし方を考えます。
金魚すくいでめきんすくってもらえない
前橋駒形小5年 石井 優衣
【評】出目金はいつまでもすくってもらえないで残っているのです。一回り大きくてすくいにくいという事情もあるのでしょう。着眼点がいい。
太陽がまだまだ遊ぼうと言っている
前橋駒形小5年 久保香那美
【評】日が長い夏。遊びを止めなくてはいけない時間でも、まだ太陽は明るい。名残惜しい気持ちを、太陽の言葉に託して表現しています。
バーベキューとうもろこしが歯につまる
高崎国府小5年 大村さくら
【評】「とうもろこしが歯につまる」がいい。バーベキューのトウモロコシは丸かじり。その結果、歯の間につまってしまうのです。
雨さんと学校のにおいひさしぶり
前橋桃川小6年 山田 歩実
【評】「学校のにおい」がいい。夏休み明けの学校です。夏休みが明けると雨の日が続きました。どちらも久しぶり。2学期のスタートです。
はんかちをぬらしてかおにあててみる
前橋桃川小6年 奥山弥奈美
【評】消夏法の一つとして考えたものでしょう。一瞬冷たくて気持ちがいいものです。ハンカチは、夏の季語として扱われています。
せみがなくすこしのかぜがいいのかも
前橋大胡小6年 はぎわらゆな
【評】気持ちよさそうに鳴くセミ。微風の心地よさが、誘っているのではないかしらと考えます。もちろん、作者にも気持ちのよい風です。
夏休み入ってからのワンピース
前橋大胡小6年 大崎 芽衣
【評】ワンピースが好きなのでしょうね。でも、学校には着て行かないのです。夏休みに入ってワンピースで過ごす毎日。それだけで楽しい。
学校のうらのいねは風みたい
前橋大室小6年 星野菜々子
【評】「風みたい」がいい。学校の裏の稲は、皆で植えたものでしょうか。大きく成長して青々と風にそよいでいるのです。
つかれたよ背中のあせじみしゃべってる
前橋粕川小6年 戸塚将太郎
【評】前を行く人の背中に汗染みが広がっています。そのひろがりに、疲労感を感じ取っています。それを汗染みの会話に見立てて表現。愉快。
蝉の声夏の暑さを引き出して
安中松井田東中1年 岩井  毬
【評】セミが鳴くと一層暑く感じられるものです。それを「夏の暑さを引き出して」と表現して巧み。季重なりを気にする大人にはできません。
セミしぐれ雨が降っても鳴きやまず
渋川小野上中1年 青木 涼太
【評】確かに雨が降っても、セミが鳴きやまないことがありますね。短い生を必死に生きるセミの姿をひしひしと感じる瞬間でもあります。
山車をひく男たちには湯気が立つ
渋川小野上中2年 佐藤 千栄
【評】どこの祭りでしょうか。山車を引く男の汗が湯気のように立ちこめている場面。暑い時期というよりは寒い時期の祭りのようです。
ベランダの取っ手も光る夏の空
渋川小野上中3年 青木 里穂
【評】ベランダのノブが夏の光に輝きます。焦点をしぼった叙述で、炎暑のようすを表現しています。ベランダも熱く焼けていることでしょう。
ヒマワリがもういいかいと聞いてくる
渋川小野上中3年 佐藤智菜津
【評】かくれんぼの鬼のように、ヒマワリが「もういいかい」と聞いてきます。夏にするべきはやりきったでしょうか。自問でもあります。
永遠の夏を手にして泳ぎだす
渋川小野上中3年 澤下 未来
【評】「永遠の夏」。終わらない夏。一心に泳いでいる間は、夏が永遠に続くように感じられるというのでしょう。青春俳句として秀作です。