林桂選

2008年11月26日上毛新聞掲載


稲かりの後は服が稲のにおい
高崎堤ケ岡小5年 渡辺 千夏
【評】稲刈りの名残を、服の稲わらの匂いに感じています。初めての体験で匂いに敏感なのか、一日お手伝いをしたのか、どちらでしょうか。
稲かりでけしきが少しかわったよ
中之条小5年 小渕 彩香
【評】稲刈り後の田んぼの広がりは、たしかに景色が変わった印象を与えます。景色に明るさが消えて、冬に向かう思いが強くなります。
秋の山オレンジソースがかかってる
中之条小5年 布施 瑠奈
【評】秋の山の紅葉を、オレンジソースにたとえました。きっとたっぷりかかっているのでしょう。おいしそうにも見えたのでしょうか。
あかとんぼ田んぼの中を泳いでる
前橋桃瀬小5年 田中 真優
【評】田んぼは、稲刈りの終わった刈田なのでしょう。ぽっかりとあいた稲刈り後の空間ゆえに、ゆったりと泳いでいるように見えるのです。
徒競走初めて一位になった年
前橋桃瀬小5年 水上 大也
【評】「なった年」に思いがこもっています。今まで取ったことのない一位。忘れられない年になるのに違いないと思っている言葉なのです。
おばあちゃんといなごとりの競争だ
前橋大胡小5年 斉藤 千冬
【評】おばあさんはイナゴの佃つくだに煮を作るのでしょう。そのためにはまずイナゴ採りです。競争して採れば楽しくたくさん捕まえられます。
夏の夜静かに光る金の星
前橋桃瀬小6年 矢島 紗恵
【評】夏の夜空に対する神秘的な思いがこもっていそうです。「静かに光る」のに「金の」輝きの「星」。最後の「星」に向う書き方が効果的です。
けしごむの白がだんだん黒くなる
前橋大胡小6年 萩原 愉菜
【評】使っているとだんだん汚れて、その汚れも取れなくなってゆく消しゴム。汚れてゆく消しゴムへの感謝と罪悪感の気持ちがあります。
月光がまどから入ってねむれない
前橋大胡小6年 剣持 哲馬
【評】満月などの光。眠るために部屋の明かりを落とすと、にわかに気になる明るさなのです。冷たく冴さえ渡る夜気が一層眼をさまさせます。
かけてある色とりどりのなわとびを
前橋大胡小6年 大崎 芽衣
【評】教室の壁でしょうか。なわ跳びの色は一つでも美しい。それがたくさん掛けられていると、カラフルで一層美しくなることでしょう。
消しゴムを最後まで使ったことがない
前橋山王小6年 田口 裕亮
【評】確かにこう言われてみると、使い切った経験がありません。小さくなるといつの間になくすか、忘れてしまっています。
一階から四階までヘチマのつる
前橋山王小6年 田村 拓人
【評】緑のカーテンで、教室の温度を下げる取り組みをしているのでしょう。校庭から見たようすでしょうね。校舎をおおうヘチマです。
開会式選手の列は色えんぴつ
前橋山王小6年 江塚めぐみ
【評】開会式に並んだ色とりどりのユニホームの列は、色鉛筆がペンケースに並んでいるように見えるというのです。見立てがおもしろい。
朝の空冷たい風がふいている
前橋桃川小6年 生方 敬太
【評】寒い季節に向かってゆくのを一番感じるのは朝。晴れわたった空にわたる風が、一番最初に冷たくなるのかもしれませんね。
秋晴れで校庭で見たつむじ風
前橋下川淵小6年 渡辺  葵
【評】「秋晴れ」がいい。つむじ風の発生は台風のように曇りの天候の中ではありません。校庭の明るさの中でつむじ風がより印象的です。
陽にあてたふとんにとびつき猫になる
邑楽長柄小6年 根岸 春奈
【評】「とびつき猫になる」のたとえがおもしろい。干された布団の暖かさに離れがたい思いになっている自分を、ユーモラスに描いています。
たくさんの落ち葉の中に立つ私
中之条小6年 宮崎 美鈴
【評】最後に「私」に焦点を絞ってゆく描き方が巧みです。落ち葉の世界の広がりから、そこにたたずむ自分の姿に思いが帰ってくるのです。
晴れわたる世界で遊ぶ鱗雲
中之条中1年 小渕 玲奈
【評】青空の うろこ鱗雲。題材としては珍しくありません。しかし、空を「世界」とし、鱗雲を「遊ぶ」と擬人化して描いて、童話の世界の仕立てです。
秋の夜飼い犬樹里亜が鼻かくす
前橋木瀬中2年 小泉 茉実
【評】犬の名前が、この句をおもしろくしています。かわいい女の子として、家族に加わって生活しているのでしょう。仕草まで人間めいてきます。
紅葉が散るのが切ないこの日かな
長野原東中3年 茂木慎太郎
【評】「この日」がいい。紅葉の散るのを見る日が続く中で、「切ない」と感じるのは今日この日なのです。自分の心の中に原因があるのでしょう。
風の音大きく聞こえたすすきかな
渋川小野上中3年 小野 真毅
【評】風音は木枯らしのようになってきているのでしょう。ススキの穂もすっかり枯れて、風に強くなびいているのです。