鈴木伸一選

2008年12月17日上毛新聞掲載


色付いた木の葉まいちる野球場
前橋山王小5年 石川 卓実
【評】シーズンの終わりごろか、シーズンオフの野球場でしょう。人気(ひとけ)もなく、木の葉がかわいた音を立てて舞い散る、少しさびしい情景。
登校中おちばがあとからついてくる
前橋山王小5年 茂木 美奈
【評】足早に歩いてゆく茂木さんの後を追うように、落ち葉が風に舞いおどります。日常の中から、冬の季節感がよくとらえられています。
北風で犬のたれ耳うら返る
前橋山王小5年 矢部 鈴夏
【評】強い北風に、犬のたれ耳もうら返ったというのです。矢部さんは犬好きに違いありませんし、またそうでないと書けない俳句でしょう。
雪の夜雪がぼくをつかまえる
前橋月田小5年 星野 裕夢
【評】雪の降る中では、自分の感覚がふだんとは違う働き方をするようです。「ぼくをつかまえる」も、そうした感覚から来たものでしょう。
宿のへやだれも見てない月を見る
前橋月田小6年 石原 誠也
【評】修学旅行の一場面でしょう。友だちがおしゃべりやゲームなどで夢中になっている中、ふっと月をながめてひと息ついた石原君です。
持久走もみじも風も走り出す
前橋大胡小6年 井崎 翔太
【評】勢いよくスタートすると同時に風を感じ、まわりの景色もぐんぐんと動きだす。持久走にかける井崎君の意気ごみが、よく出ています。
寒くなり父のふとんをせんりょうする
前橋大胡小6年 茂木 綾野
【評】お父さんのふとんは、占領したくなるほど大きくて暖かいのですね。占領されたお父さんも、きっと笑って許してくれたことでしょう。
川の中ゆらゆらゆれてるもみじ達
吉井岩平小6年 金沢 夕夏
【評】川面に映った紅葉でしょうか。川に散った紅葉が、流れとともに揺れているのでしょうか。どちらにしても、たいへん美しい光景です。
*吉井岩平小の作品は、飯野哲次先生に指導していただいたものです。
祖父を待つ時間の中に冬がある
渋川小野上中2年 村上 千織
【評】どんな状況で祖父を待っているのかは分かりませんが、待っている時間の長さや心もとない気分を、「冬がある」と表現したのが鋭い。
指先をなでる指先冷えている
渋川小野上中3年 斉藤 結衣
【評】冷えた指先をなでる別の指先も、さらに冷えているというのです。実際の寒さと同時に、心理的な寒さをも感じさせるところがうまい。
冬風を掴んだ手の平輝かし
渋川小野上中3年 佐藤智菜津
【評】「手の平輝かし」に共感しました。ある種の自己賛美とも言えますが、それが嫌みにならないのは、ひとえに作者の若さゆえでしょう。
シャープペンノックの数だけ星光る
渋川小野上中3年 沢下 未来
【評】シャープペンをノックする音と響き合うかのように、星々が光り輝くのです。受験生らしい心理が反映した抒情(じょじょう)的な俳句だと思います。
雲なき空白い校舎に秋の風
安中松井田東中3年 水沢志保子
【評】空の青と校舎の白が、まるで絵のような美しさ。そして、吹き抜けてゆく風は、とても透き通った印象。いかにも秋という感じです。
雪が舞う外眺めてはあくびする
六合中3年 黛  杏奈
【評】雪を喜ぶどころか、むしろいささか食傷気味という感じは、やはり雪の多い地域ならではのものでしょう。ユーモラスな書き方もいい。