鈴木伸一選

2009年1月7日上毛新聞掲載


あの角を曲がるとコスモス一面に
前橋大室小5年 長島  南
【評】もちろん、長島さんは角を曲がった先がコスモス畑だと、前もって知っています。だからこそ、見る前から心がはずんでいるんですね。
きらきらと武尊根小は雪化粧
片品武尊根小5年 三浦 怜奈
【評】三浦さんは、学校が大好きなんですね。そうでないと、こういう俳句は書けません。私も、雪化粧の武尊根小を見たくなりましたよ。
家にいる夢さめてベッドでなみだぐむ
赤城養護小児医療センター分校小5年 関根 菜生
【評】入院治療を続けている関根さんですが、ときにふと家が恋しくなって、涙が出てしまうのです。その気持ちが痛いほど伝わってきます。
秋の空雲の作品うかばせて
赤城養護小児医療センター分校小6年 吉田 知紗
【評】すがすがしい秋の空に浮かんだ雲が風に流され、さまざまな形に変わってゆきます。天上の神様の手による作品なのかもしれませんね。
青空に見えない寒さ流れてる
前橋桃川小6年 山田 歩実
【評】空気がぴんと張りつめたような冬の青空は、冷たいけれど、心が洗われる感じもします。「見えない寒さ」をとらえた感覚がいいなあ。
霜柱皆で支えて生きている
前橋新田小6年 平山 翔子
【評】霜柱は多くの氷柱が群立したものですから、たしかに皆で支え合っていると言えますね。人間の社会も、同じようでありたいものです。
秋終わりみんなの縄飛び切れていく
吉井岩平小6年 浅香  遊
【評】秋の間に、クラスのみんなで縄飛びに取り組んだのでしょう。懸命に練習したので、秋が終わるころには、すり切れてしまったのです。
冬の空星と遊んで帰る道
中之条中1年 上原 真衣
【評】部活帰りでしょうか。冬の夕方はあっという間に暗くなって、星が輝き始めます。特に、このところは金星と木星がよく見えますしね。
みかん食べテスト勉強始めるか
中之条中1年 山崎 剛志
【評】「始めるか」は自分を激励する言い方ですが、この後、実際に勉強をしたかどうかは書かれていません。そこにユーモアがあっていい。
冬の雲時のはやさに流されず
伊勢崎四中1年 新井 紀子
【評】ゆったりした雲の動きに、自分もこうありたいと思った新井さん。何かと忙しく過ごしている私たちに共通した思いでもあるでしょう。
冬の空明日を照らす光かな
伊勢崎四中1年 小島 大介
【評】沈みゆく夕日の光を想像しますが、月や星の光などであってもいいでしょう。何にせよ、明日への前向きな意思が感じられる点に共鳴。
雪の上ついてる足跡笑顔の数
伊勢崎四中1年 清水  唯
【評】積もった雪の上についたたくさんの足跡を見て、その足跡の主ひとりひとりが、きっと楽しく遊んだんだろうな、と想像した清水さん。*伊勢崎四中の作品は、大橋由紀先生、多賀谷聡子先生に指導していただいたものです。
落日の山並に見る冬の影
渋川小野上中1年 野村 聡太
【評】沈む夕日に遠くの山並みが輝き、同時に一段と影を深くします。雄大、かつ格調高い自然詠で、かなり大人びた作品とも言えそうです。
シャーペンの芯が折れては雪が舞う
渋川小野上中3年 佐藤智菜津
【評】勉強に集中しているときに突然、シャーペンの芯(しん)が折れたりすると、緊張の糸がぷつりと切れて、ひどく寒々しい気分になるものです。
冬さむく音がならない管楽器
高崎中尾中2年 安井明花音
【評】実際の寒さと共に、管楽器の冷たい感触も伝わってきます。さらに、音が出ないということの心理的な寒さも加わり、まさに冬の俳句。
墓参り墓石に当たる日射しかな
太田木崎中3年 大橋ちづる
【評】俳句では、「墓参り」は秋の季語。季節柄、日差しにもどこか透明感があり、明るさの中にしみじみとしたさびしさを漂わせています。
春一番歩き眼(まなこ)が乾きけり
太田木崎中3年 北島 奨太
【評】似た作品はあると思いますが、この句はこの句で、春一番の強風の中を歩いてゆく人の荒涼とした内面状態を、よく表現し得ています。
雛の声心に響く静けさや
太田旭中3年 新藤 和人
【評】鳥のひなの愛らしい鳴き声が、静けさの中で聞こえるのでしょうが、同時に、ひな人形の声なき声を聴き取ったとも読めるのが面白い。