鈴木伸一選

2009年9月23日上毛新聞掲載


夏の空絵の具で塗りつぶしたようだ
熊谷女子高1年 反町 花菜
【評】中七下五は散文的表現ですが、それがかえって真っ青な夏空に圧倒されたような作者の心を、よく伝えています。
転がったサンダル包む夏の風
熊谷女子高2年 市川  恵
【評】自宅の玄関でもいいし、海の家でもいい。どちらにせよ、転がったサンダルに、夏の開放的な気分が出ています。
告白の相談受ける青蜜柑
前橋西高2年 江原ほのか
【評】「青蜜柑」が、いかにも青春時代の甘酸っぱい恋愛感情にふさわしい。季語の効果的用法の好例と言えそうです。
校則を守ると夏は暑いんです
熊谷女子高1年 新井 理彩
お母さん起こしてくれず始業式
熊谷女子高1年 小峯 舞奈
歩道橋暑さがさらに増して行く
熊谷女子高1年 佐々木麻由
遅刻して血液型のせいにする
熊谷女子高1年 松本 美紀
背に風を感じた夏は過ぎ去ってく
熊谷女子高2年 杉本 麻弥
長月に十七才が動き出す
前橋西高2年 内田 貴裕
【総評】豊かな表現力は俳句でも大事ですが、これは、みなさんがどれだけ多くの言葉を習得しているかによって、かなりの差が生じます。例えば、「好き」という言葉がありますが、これと似た感情をあらわす他の言葉を、いくつ挙げることができるでしょうか。「愛する」「恋する」をはじめ、「慕う」「惚(ほ)れる」 「気がある」「首っ丈(たけ)」「ぞっこん」とか、やや古典的な「懸想(けそう)」「恋慕(れんぼ)」などという言葉もあります。「好き」という言葉しか知らなかったら、「好き」としか言えませんが、他の言葉を知っていたら、TPO(時・所・場合)に応じて使い分けることができます。俳句も、描く内容に応じた言葉の使い分けができるようになれば、さらに面白みが増すことでしょう。