鈴木伸一選

2009年11月3日上毛新聞掲載


青いかさガラスの水玉落ちてくる
前橋粕川小5年 長沢 夏帆
【評】青いかさを伝って落ちる、ガラスのような雨つぶ。他の色では、こういう美しさは出なかっただろうと思います。
風がでて物がゆれてる生きている
前橋荒牧小6年 小柏 叶夢(かなむ)
【評】自然の物だけではなく、人工的な物までもゆれています。そこに、本来は無い「いのち」を感じ取ったのがいい。
なつになれクワガタのとれるなつになれ
前橋桃木小6年 武井 裕紀
【評】「なつになれ」のくり返しから、武井君の願いの強さが伝わってきます。その願いが、どうかかないますように。

※前橋桃木小の作品は、小野沢映子先生に指導していただいたものです。
コスモスを包んで広がる青い空
中之条中2年 高橋 実央(みお)
【評】かれんなコスモスを包みこむように広がる、すがすがしい青空。読者の心も自然とおだやかになってくる俳句です。
秋になり風まで映す水たまり
中之条中2年 冨沢 仁志
【評】目には見えない風までも映す水たまり。この繊細な感覚は、確かに秋という季節にこそふさわしいと思われます。
秋晴れに八ツ場の橋脚そそり立つ
渋川小野上中2年 野村 聡太
【評】八ツ場ダム建設計画には、賛否両論があります。野村君自身は、そそり立つ橋脚を見て、どう感じたでしょうか。
星月夜卑弥呼もこの空見てたかな
渋川小野上中3年 佐藤 千栄
【評】想像力で時空を旅するというのは、詩的な営みとして大いに共感します。「見ていた」と断定した方がいいかも。
衣替え制服かたくひきしまる
渋川小野上中3年 鈴木みちる
【評】季語としての「衣替え」は、夏ものの衣服にかえることですが、この句は冬ものへの切り替え。下五に実感あり。
十五個の秘密を探る残暑かな
みどり東中3年 久保 綾香
【評】京都竜安寺の石庭にある15個の石は、どこから眺めても一度にすべてを見ることはできません。不思議ですね。

※みどり東中の作品は、諏訪智子先生に指導していただいたものです。
愛犬の思い出の場所散歩道
前橋桃瀬小5年 福田 智佳(ともか)
登校前ねむる草木に声をかけ
前橋山王小5年 高橋 尚大(なおと)
さむいあさみあげてごらん月がある
前橋下川渕小5年 吉川 綺華
セミの声ペダルが進むどこまでも
前橋荒牧小6年 塩原 百華
秋風を追い越し走る運動会
中之条中2年 小池 悠介
コスモスも晴れた夜空をながめてる
中之条中2年 斉藤 杏佳(きょうか)
自転車も秋風に乗る登下校
中之条中2年 関  和希
秋風の気分しだいで遠回り
中之条中2年 関  直人
秋の空たすきをつなぐ声響く
中之条中2年 高橋 知久
空見上げ俳句ひらめく秋の夜
中之条中2年 宮崎 卓弥
栗をむくばあちゃん優しい目をしてる
中之条中2年 山口 怜子
秋惜しむ我が身を捨てに草原に
吉岡中2年 武藤 翔太
ハロウィーン心のランプに火を灯し
前橋木瀬中3年 内田悠希子
自販機のHOT見つけて秋が来る
渋川小野上中3年 新井 哲弥
秋の風まとって走る兄と犬
渋川小野上中3年 小野恵里佳
きりの中今日気がのらぬ塾通い
渋川小野上中3年 佐藤立偉迅(たいと)

【総評】ジュニア俳壇には、毎週たくさんの作品が寄せられていますが、そのほとんどが学校からの団体応募です。学校では遠足や運動会などをはじめとして、いろいろな行事がありますから、これらをきっかけに俳句づくりを始めるというケースも多いでしょう。実際、時季になると遠足や運動会などの俳句の投稿が、ぐんと増えます。が、その中で入選する作品は、あまり多くはありません。なぜかと言うと、みんなが同じものを見たり、同じ行動をとったりすれば、どうしても同じことを感じ、同じことを考えがちです。これ自体は別にいけないことではないのですが、俳句としては、どれも似たものになってしまう傾向が強くなるからなんですね。「バス遠足おしゃべりもうたもとんでゆく」(秋田県小3・荒谷咲子)、「しんけんな顔が風切る運動会」(大分県小6・高田英雄)のように、人が気づかないことに気づいた、つまりは発見のある俳句を、是非お手本にしてください。