林桂選

2009年11月24日上毛新聞掲載


かれ葉道俳句がなかなか現れない
前橋山王小5年 関根百 萌花(ももか)
【評】俳句の題材を探しながら歩く枯れ葉道。しかし、なかなか見つかりません。「現れない」がうまい表現です。
いとこ来て線香花火をかこむ夜
前橋荒牧小6年 佐藤 健太
【評】夏休みを利用して、いとこが泊まりに来たのでしょう。小さな線香花火を囲んで遊んだ夜。大切な思い出です。
若冲を観る上野にも銀杏降る
邑楽南中1年 根岸 春奈
【評】伊藤若冲は江戸期の画家。国立博物館の展覧会を見に行ったのでしょう。余韻が銀杏の色彩にまぶしく重なります。
蟷螂に冒険しろよと応援す
吉岡中1年 富岡みずき
【評】カマキリのかけた応援の言葉は、心の中では自分への応援の言葉になっています。もっと冒険したい自分に。
白鳥や群に集えど孤独かな
中之条中2年 大川 拓海
【評】群れの中の孤独。それは人間の群衆の中の孤独に通じるものでしょう。作者が見ているのは自分自身の孤独です。
ヘチマくん景色に飽きたか体曲げ
渋川小野上中3年 小野恵里佳
【評】曲がって伸びたヘチマ。同じ風景を見あきて、体を動かしたからと考えました。「くん」とあわせてユーモラス。
平等院十円玉の超拡大
沼田中3年 吉野 慈図(じず)
【評】十円玉の平等院の方が早い体験。だから本物も、十円玉を基準に考えます。転倒した感覚が面白い句です。
初めてのカレーづくり野外すいはん
前橋桃瀬小5年 角田 里帆
秋になりとおくのたきびみえてくる
前橋駒形小5年 小野 夏実
友達と遊んだ帰りの秋の風
前橋山王小5年 神村 尚輝
ゆうやけが宇宙いちめんを焼きつける
高崎新高尾小5年 中井 一成(いっせい)
朝顔が庭の木のぼりゆれている
前橋荒牧小6年 佐藤 健太
秋の風音を出しては楽しんで
前橋大胡東小6年 木村 美香
ベレー帽空とおそろい空色だ
前橋大胡東小6年 小林 亜美
青空をぞろぞろ歩く白い雲
前橋細井小6年 粕川 実夢
こてきの音(ね)練習ぶそくの音がする
高崎馬庭小6年 鈴木 杏奈
かまきりが草むらのなかおいでおいで
高崎堤ケ岡小6年 小林  周
秋風が大仏の背にたいあたり
榛東南小6年 宇都 竜司
秋風に乗せてはなったシュートかな
中之条中2年 斉藤 翔太
トンボ浮く晴天の日の水たまり
中之条中2年 高平 翔大
コスモスのゆれを観察してる猫
中之条中2年 新井 遥菜
秋晴れの空に輝くヘリコプター
中之条中2年 鎌田 理緒
台風でテンションあがる弟たち
中之条中2年 竹渕 優真
快晴の空にひとつの風が来る
中之条中2年 堀込 千愛(ちあき)
寺の中夜寒のようなはださむさ
みどり東中3年 新井 涼太
秋風で冷たく乾く洗濯物
渋川小野上中3年 鈴木みちる
草揺れる鉛色の空の下
前橋木瀬中3年 長嶋  慶
稲雀いないと妙に殺風景
前橋春日中3年 反町 麻椰
目を空に十一月の眩しさよ
前橋春日中3年 藤原 麻衣
歌声が窓辺に響き秋の風
前橋富士見中3年 永森 周平
金木犀(きんもくせい)合唱練習思い出す
前橋富士見中3年 近藤 亮太
風にのる旬の香りが走りけり
沼田中3年 千吉良美里

【総評】オノマトペ(擬音語・擬態語)を上手に使うと楽しい句ができます。鳴き声の犬の「ワン」、猫の「ニャン」のような表現が一般的ですが、よく聞くと違って聞こえるかもしれません。萩原朔太郎は猫の鳴き声を「おわあ」「おきやあ」と表現しました。中原中也はブランコの揺れる様子を「ゆあーんゆよーんゆやゆよん」と表現しています。新しい表現を見つくることは新しい世界を見つけることにつながります。また、篠原鳳作は「しんしんと肺碧きまで海のたび」と詠みました。「しんしん」は新しい言葉ではありませんが、静かな様子を表す言葉を、肺の中いっぱいに青い海の空気が広がる様子に転用しています。新しい使い方を工夫したのです。皆さんも新しい言葉、新しい使い方に挑戦してみてください。