鈴木伸一選

2010年10月26日上毛新聞掲載


尾瀬の秋森が生きてる気がするよ
片品小5年 深見 千穂
【評】森は生きている、と知識としては知っていても、実際に行ってみなければ、真に理解することはできないのです。
コスモスが散歩の道を教えてる
前橋大胡小6年 阿久沢佳菜
【評】コスモスが道案内をしてくれているみたいで、すてきです。日常の中に、俳句がしっかりと根づいていますね。
秋晴れに父と一緒に稲を刈る
渋川小野上中3年 朝比奈美穂
【評】こうして親子で一緒に汗を流すというのは、本当にすばらしいと思います。おいしいお米が取れたことでしょう。
そばの花小さな希望地にあふれ
中之条中3年 新井 遥菜
【評】善意にあふれた俳句で、心が洗われる思いがします。小さな希望を一つずつ、みんなで実現してゆきましょう。
栗のいがうんともすんとも言わないよ
中之条中3年 斉藤 有希
【評】いがぐりを擬人化したとも、反対に人間をいがぐりにたとえたとも読めます。どちらにせよ、何とも面白おかしい句。
秋の空ピアニカの音鳴っている
前橋下川渕小5年 柴田 真也(まさや)
朝からねあきの風がじんどってる
前橋大胡小5年 北條 歩美
午後四時にとんぼ見つけて秋が来る
前橋朝倉小6年 加藤 真依
秋の風森の香りをまとってる
前橋駒形小6年 田尾 水稀(みずき)
秋の空夏より雲が上にある
前橋月田小6年 石原 遥子
秋になり風の大きさゆらゆらと
前橋粕川小6年 深沢 祐介
もみじ落ちいすにすわってゆったりと
伊勢崎赤堀東小6年 山下愛咲美
見上げればスカイツリーと夏の空
藤岡神流小6年 飯島麻里沙
妹の指さす方に天の川
高崎中尾中1年 上原 雅也
蟋蟀(こおろぎ)が何かの予言を伝えてる
高崎中尾中1年 成瀬  圭
夕焼けで赤い絵の具がおわりそう
中之条中1年 篠原  瞳
ポイ捨てのあきかんおどる秋の空
中之条中1年 西山 理歩
紅葉がぐねぐね回るいろは坂
渋川金島中2年 福嶋 勇紀
朝寒に上着を手にし扉開け
渋川金島中3年 飯塚 佳乃
秋雨の音に心がとけてゆく
渋川金島中3年 石田  悠
友達のメガネが変わる秋の色
渋川赤城北中3年 近藤 紗希
神様の手のひらみたいな彼岸花
中之条中3年 宮崎 菜奈

【総評】毎年この時期になると、運動会の俳句が各地の学校からたくさん寄せられます。どの作品からも、子どもたちが懸命に競技に取り組む様子がうかがえ、ほほえましい限りですが、ただ、俳句としてはかなり似た作品が多いのも事実。この点に関しては以前にも書きましたが、大事なことなので、もう一度くり返します。たとえば、「運動会一位になってうれしいな」といった句が、学校・学年を問わず相当数見られます。子どもたちの気持ちが率直に表現されていて、これはこれでいいのですが、文学的、あるいは詩的な感動となると、やや薄いと言わざるを得ません。そして、その一番の原因は、「うれしいな」というふうに、自分の気持ちを説明してしまったことにあります。だとしたら、「うれしい」と言わずに、うれしさを伝える他の表現を探し出せばいいわけですね。そこで、例として「汗光る」としてみましょう。「運動会一位になって汗光る」。キラリと光る汗に、一位になれた誇らしさとうれしさが、自然と感じられるのではないでしょうか。もちろん、これはあくまでもサンプルに過ぎません。もっといい表現がたくさんあるはずですから、ぜひ考えてみてください。