鈴木伸一選

2012年4月5日上毛新聞掲載


風ふいて春がこっちに向かってる
前橋勝山小5年 近藤 りの
【評】吹く風が、春がもうすぐやって来ることを近藤さんに教えてくれたのです。何だか心がうきうきしてきますね。
パソコンが独りでうなる春の暮
前橋山王小5年 栗原 正明
【評】「春の暮」には、どことなく物憂い気分が漂います。そこにパソコンのうなる音を取り合わせたところがうまい。
食べくらべはっさくいよかん春近し
前橋桃川小5年 斉藤 優維
【評】二つの柑橘類を食べ比べ、その甘酸っぱい味に春の到来を感じ取ったのです。なかなか繊細な感覚だと思います。
家庭科で針を使った春深し
伊勢崎赤堀小5年 青木 花鈴
【評】ひと針ひと針、注意しながらゆっくりと縫い物をしています。「春深し」という季語が、たいへん効果的です。
赤ちゃんはもう八ヵ月風光る
伊勢崎赤堀小5年 伊井 梨菜
【評】自分の弟か妹でしょうか。いずれにしても、すくすくと成長している赤ちゃんの様子が見て取れ、ほほえましい。
もようがえ広くなったよ春の空
伊勢崎赤堀小5年 金井 結夏
【評】部屋の模様替えをしたのでしょう。気分がすっきりすると、何となく空まで広くなったように感じられるのです。
春の風みんなとあえてうれしいな
みどり大間々南小5年 東宮 千裕
【評】「みんな」は、クラスのみんなのことでしょうね。季語「春の風」によって、自分の思いを素直に表現しました。
七色の光が映るチューリップ
中之条名久田小5年 福島 里佳
【評】さまざまな色のチューリップが、春の日差しを浴びて光ります。まるで虹のような美しさに目をうばわれます。
教室で最後のチャイムがなりひびく
前橋細井小6年 八幡 拓洋
【評】卒業式当日の情景。小学生として耳にする最後のチャイムの音が、八幡君の胸に深く響き渡ったことでしょう。
春がきたともだちいっぱいつれてくる
前橋荒牧小5年 宮崎 晃汰
雪おとしイタズラしてくる大ケヤキ
前橋大胡小5年 杉浦 日南
あそぶ場所なかなかないな冬の雲
伊勢崎赤堀小5年 川原 帆貴
くだらない事で笑える春の夕
伊勢崎赤堀小5年 清水 貴史
ピアニカのれんしゅうするぞ風光る
伊勢崎赤堀小5年 宮崎 真衣
息白くすぐに見つかるかくれんぼ
みどり大間々南小5年 森 菜々子
木々かれるあと少しだけ小学校
前橋永明小6年 阿部 将大
かぜひいて参加できない雪遊び
前橋月田小6年 吉田 早紀
卒業の春が近づく一週間
伊勢崎赤堀東小6年 越塚 早紀
春の風感じて本から目を上げる
渋川赤城北中1年 石田ほのか
青空が優しく見てる木の芽たち
渋川小野上中1年 金子 佳彦

【総評】子どもたちは春休み中なので、今回は学校で俳句づくりの指導にあたっておられる先生方、あるいは本年度から指導を始めてみようとお考えの先生方に向けて、少しお話しをしてみます。
 「俳句は五・七・五と十七文字で書き表される一番短い詩です。俳句には季節を表すことばである季語を入れます。何でもよいから、見たこと、感じたこと、思いついたことを俳句にしてみましょう」
 これは、実際に他県のある学校での俳句づくりに先生が配布したプリントだそうです。季語の説明もいささか唐突ですが、最大の問題は「何を見たらいいのか」「何を感じたらいいのか」という手だてが、子どもたちに対してまったく示されていない点にあります。これでは、子どもたちは大海に投げ出されたのと同じです。やはり、ここで先生方の具体的なサジェスチョン、たとえば子どもたちと一緒に校庭に出たような場合には、草花の様子や活動する虫たちなど、子どもたちの身近にあるがゆえにかえって見逃しがちなものを、それとなく示唆し、気づきを促すということが重要になってきます。
 いまさら申し上げるまでもない当たり前のことですが、こうした当たり前の指導の絶えざる繰り返しが、子どもたちの観察力や発見力を少しずつ育ててゆきます。手間のかかる作業ですが、ぜひとも実践していただきたいと思います。
              (学校・学年は投稿時のものです)