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こころ・生活・食
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生活習慣病とは?

肥満
群馬大学医学部附属病院 内分泌・糖尿病内科
講師 清水弘行

脂肪組織の重要な役割  現代社会ではダイエットに関する多くの情報がはんらんしています。そのため不適切なダイエットを行ったことによる健康障害で病院を訪れる方も増えています。そこで、いつも悪役とされる脂肪の意味とともに、肥満が意味することや治療を必要とする肥満とその治療法について知識を深めていただきたいと思います。

 体の脂肪の意味は?
 体についた脂肪には大きく分けて二つの種類があります。一つは皆さんが見てすぐにわかる全身の皮膚の下(皮下)にある白色脂肪組織(白い色をした脂肪)です。白色脂肪組織は皮下のほか、お腹の中にある内臓についた脂肪もその仲間です。白色脂肪組織の主な役割は過剰になったエネルギーの蓄えです。肥満で問題となるのは、この白色脂肪の増加です。また、もう一つの脂肪としては、生まれたての時期には大切な役割をしている褐色脂肪組織(褐色の脂肪。特に幼小児期に左右の肩甲骨の間や腎臓の周りにあるとされています)があります。褐色脂肪組織は細胞の中にミトコンドリアという器官をたくさん持ち、体の中における熱の産生にかかわり、幼小児期における体温の維持に重要な役割を果たしていますので、大切な脂肪ということになります。この褐色脂肪組織が活動的ですと熱をたくさん作りますので、太りにくく、やせやすいということにもなります。

肥満の判定  体についている主な脂肪である白色脂肪は、図1に示したようにいろいろと大切な役割を果たしています。飢餓のときに必要なエネルギーを補給し、いろいろな生理活性物質(体の他の場所に作用を発揮する物質)を放出して健康維持に重要な役割を果たしています。また、脂肪組織には断熱(保温)作用もあります。今は悪役とされがちな内蔵の脂肪にも内臓を正常な位置に保ち、外からの衝撃に対して保護する役割があります。ですから体に適当な量の脂肪が存在することは、ヒトの健康維持には欠くことのできない重要な点です。非常にまれですが、体の脂肪が著しく少なくなることにより脂肪組織から分泌される有益な生理活性物質がなくなり、糖尿病になってしまうこともあります。ですから肥満のお話を始める前に、極端な減量は健康には非常に有害となることをまずご承知おきいただいたうえでお話を始めさせていただきます。

肥満はどんな状態でしょうか?
 では医学的に肥満とはどのような状態を指すのでしょうか。肥満とは体に必要以上に多くの脂肪が蓄積した状態を指します。肥満の判定には、従来は標準体重よりどのくらい太っているかを示す肥満度(%)がよく用いられていました。現在では主に表1に示したような身長と体重からBMI(Body Mass Index)を計算して、その値から肥満の程度を診断します。日本人において最も体重増加に伴う合併症の発現が少なく、長生きできるBMIは男女ともに22kg/m2とされています。BMI25kg/m2以上が肥満となります。

肥満症の診断  日本肥満学会では、減量治療の必要な肥満を肥満症として重要な治療対象と考えています。日本肥満学会の肥満症の診断基準を表2に示しました。肥満症としては糖尿病などの表2にあげたような肥満に特有な合併症(健康障害)を有しているかどうかが大切です。肥満症は単なる体型の問題ではなく、病気を合併した病的な状態ですので治療の対象となります。

 また、肥満の診断には体脂肪量の測定も大切です。体脂肪量の判定にはインピーダンス法による体脂肪量の測定方法が広く用いられています。多くの機器が市販されていますので測定されたことがある方も多いと思います。この測定方法の原理は、脂肪には電流が流れにくいという特性を利用して、体に流れる微量な電流を測定することにより体の脂肪量を推定する方法です。その正常値は表3のようになっています。男女差もあります。しかし、測定結果は体の中の水分量(汗や食後の水分増加など)にも影響を受け、測定方法(両足で測る方法と両手で測る方法などがありますが)や一日における測定時刻によっても影響を受けて異なる値を示すので、あくまでも参考値としてお考え下さい。一回、一回の結果で一喜一憂する必要はありません。体脂肪率の長期的な変化を観察したい場合には、いつも同じ時刻に同じような服装で測定されることをお勧めします。

体脂肪率  肥満の合併症には、表2に示した肥満症の診断にも用いられる病気の他に乳癌、子宮癌や大腸癌などの悪性腫瘍、胆石などの病気もあります。肥満は生活習慣病だけではなく、いろいろな病気のもとになるので減量が重要となるわけです。

どうして太るの?
 それではどうして太ってしまうのでしょうか。やはり一般的には食べ過ぎや運動不足が一番の原因です。体内へ入ってくるエネルギー(食事など)と消費されるエネルギー(発熱や運動など)のバランスによりエネルギーが余分になるかどうかが決まります。消費されるエネルギーには基礎代謝(呼吸や循環などの生命維持に使われるエネルギー)、生活活動代謝(日常生活の活動によるエネルギー)と食事誘導性代謝(食事に伴い消費されるエネルギー)があります。

 この中で基礎代謝は年齢とともに減少するので、若い方と中年以降の方では消費エネルギーが異なるわけです。そして、消費されずに余分なエネルギーが脂肪として体内の脂肪組織に蓄積されるわけです。それが過剰になった状態が肥満ですから、消費されるエネルギー以上に体内にエネルギーが過剰に摂取されると太ってくるのです。

好い肥満と悪い肥満  最近、肥満者が増加してきている社会環境要因としては、高脂肪食品の増加と自動車の普及による運動不足があります。群馬県の自家用車の普及率は日本でもトップ・クラスのようですので、日常の運動不足も重要です。ファースト・フード食品、スナック類や清涼飲料の多量摂取も若年者の肥満には大きく関与しています。また、心理ストレス解消目的の夜食症候群や気晴らし食い症候群も増加しています。特に、このような食行動異常が顕著な方は早急に専門家への受診をお勧めします。

 でも、太った人が多い家族もありますね。遺伝はないのでしょうか。肥満の原因は一般的に「遺伝30%、環境70%」ともいわれています。そこで肥満に関与する遺伝子の研究も広く進められています。現在の代表的な肥満遺伝因子としては、体における熱の産生(エネルギーの消費)を決める遺伝子の一つにb3-アドレナリン受容体変異があります。この遺伝子に変異(異常)があると太りやすかったり、減量抵抗性(やせにくい)であったりすると報告されています。日本人では約三人に一人がこの変異を持っているようです。最近の私たちの臨床研究成果でもこの遺伝子をもっている肥満の方では抗肥満薬による体重減少がこの変異をもっていない方の半分くらいしか期待できないことが明らかになってきているので、遺伝も肥満医療の大切な因子といえるでしょう。

内臓肥満の簡単な診断法は?  しかし、他にも肥満にかかわるいろいろな遺伝子異常が現在までに判明していますが、その多くはそのような遺伝子に異常が存在すると、乳児のころから著しい肥満を示しますので一般的な肥満の原因とはならないようです。この分野の研究は現在、目覚しく進んでいるの、今後もっと重要な遺伝因子が判明してくるかもしれません。

また、他の病気があることにより肥満を来たす場合もあります。一つにはホルモンの異常があります。代表的な病気としては副腎ホルモンがたくさん分泌されるクッシング症候群があります。この病気では手や足は太くなりませんが、体が太くなる特徴的な肥満体型になり、糖尿病や高血圧を合併してきます。また、頭部のけがや脳腫瘍などで肥満を来たすこともあるので、特に日常生活が最近変化したなどの心当たりがなく、急に体重が増加してきた場合には他の病気が隠れていないかを医療機関で調べてもらい、まずその病気の治療を優先させる必要があります。しかしながら、このように他に病気があり、肥満をきたされる方(症候性肥満)は実際には少なく、一般的にはこのような他の病気を合併していない単純性肥満の方が多く、肥満者の95%を占めるとされています。

悪い肥満はどんなタイプ?
 太り方、脂肪のつき方にも個人差があります。体全体が太っていると感じている方、下半身が気になる方、いろいろだと思います。脂肪のつき方にも男女差とともに個人差もあります。皮下にたまる脂肪(皮下脂肪)よりもお腹の中、腸や肝臓などの内臓の周囲にたまる脂肪(内臓脂肪)の方が悪いとされています(ハイリスク肥満)。

 これには理由があります。内臓脂肪はたまりやすく溶けだしやすく、内臓脂肪から溶けだした脂肪が直接肝臓に働くことにより、肝臓に対するインスリンの働きを弱め、脂肪肝(肝臓に脂肪が異常にたまった状態)や血圧の上昇の原因にもなります。男性や閉経後の女性にこの内臓脂肪が増える内臓脂肪型肥満が多く、特に四十歳を過ぎると増加する傾向が強いようですので注意が必要です。

 一方、皮下脂肪はつきにくく落ちにくい特徴があります。若い人や閉経前の女性にはどちらかというとこの皮下脂肪がたまる皮下脂肪型肥満が多いようです。

 内臓脂肪型肥満の診断方法としては、放射線を使いCTスキャン検査で臍の高さにおける皮下脂肪面積(S)と内臓脂肪面積(V)を測定し、その比率(V/S)で決めています(表4)。V/S比が0.4を越えると内蔵型肥満と診断されます。腹部の超音波検査により内臓脂肪の蓄積を推定する方法もあります。また簡単な方法としては、腹囲(臍の周りの長さ)を測定する方法があります。腹囲が男性では85cm以上、女性では90cm以上の方では内臓脂肪の増加が強く疑われます。さらに臍の脇と脇腹の皮下脂肪の厚さも加えて表5のような計算を行い、判定する方法もあります。すなわち、腹囲の割りに皮下脂肪の少ない方が要注意ということです。

生活強度と一日の所要エネルギー  また、上半身型肥満の診断としてウエスト/ヒップ比が用いられています。ウエスト/ヒップ比で男性は1.0以上、女性は0.9以上が上半身肥満とされています。ウエスト/ヒップ比もほほ同じような意義があるとされています。このような指標が高い方は、たとえBMIがkg/m2以下の正常範囲内でも肥満の合併症のハイリスク群といえますので、このような方も内臓脂肪の減量が必要となります。

 それでは健康に悪い内臓脂肪が増える原因には何があるでしょうか。アルコール摂取や運動不足により内臓脂肪が増加すると言われています。そこで内臓脂肪を減少させるにはアルコールを控えたり、運動習慣をつけることが大切だということは理解していただけると思います。喫煙も内臓脂肪の増加に関係するとの報告もあるようですので、やはり注意が必要です。

運動交換表 有効な肥満解消法は?
 今まで肥満、特に内臓脂肪型の肥満は健康に良くないことを話してきました。ではその肥満を解消する方法には何があるでしょうか。まずは生活習慣の改善です。肥満の元になる食生活の見直しが大切です。理想体重1kg当り一日に必要とされる摂取カロリーは25―35kcalです。ですから平均的な男性171cmの方では理想体重が約64kgになりますので、一日に必要とされるカロリーは大体2000kcal前後となるわけです。もちろん表6に示したように労働の強さ(強度)により所要エネルギー量が異なります。重労働をされる方の場合は、その必要量も労働量に比例して必要カロリーも増大するわけです。また、栄養バランスのとれた食事も非常に大切です。

 上手な食事療法のこつとしては、一日三食を規則正しく食べることや調理はうす味で油をあまり使わない料理方法を選ぶことです。ここで注意していただきたいのは、油に溶けやすいタイプのビタミンの吸収を少なくしますので、あまり極端に油を抜いた食事もいけません。盛り付けも一人ずつにすることで自分の食べた量が把握できます。食事は一口一口よくかんで召し上ることで脳内の食欲抑制物質であるヒスタミンの分泌が高まるので、少ない食事で満腹感が得られるはずです。毎日の積み重ねが大きな成果を生むわけですので日々、少しずつの努力が大切です。

肥満症の治療目標  食事療法とともに肥満の生活療法の双へきをなすのが運動療法です。運動は基礎代謝を増加させ、ストレス解消にも役立ちます。具体的には先にお話したような肥満に伴う合併症のない方では、一日三単位(240kcal)の運動を行うのがよろしいでしょう。食事療法のみでは除脂肪体重が減少してインスリン感受性が低下してしまいますので、運動療法を併用した減量が大切です。

 具体的な運動の種類は有酸素運動で身近にあり、毎日出来る持続性のあるものが良いと思います。主な運動や生活に伴う消費カロリーの目安を表7にあげました。具体的な運動としては毎日、持続的に可能なウオーキングが一番でしょう。腕を振りながら、かかとから着地してつま先で地面をけるように歩きましょう。うっすらと汗をかく程度の速さで歩くのがよろしいと思います。過度の肥満の方で膝に自信のない方は、水中での浮力を利用してプールなどでのウオーキングを行ってみるのも膝への負担が軽減されて有効です。

ダンベル体操イメージ  また、ダンベル体操は直接的に減量に結びつく効果はあまりないようですが、体脂肪の減少には有効であることが明らかとなっています。過度の肥満の方で膝に障害のある方は、無理な歩行運動は膝をさらにいためてしまいます。決して無理しないで整形外科の先生とよく相談し、適切な運動を選ばれることをお勧めします。

 それでは減量の目標はどこにおくべきでしょうか。現在、日本肥満学会では現体重の5%の減量をはかることで、肥満に伴う合併症が改善されるとしています(表8)。ただ、超肥満と呼ばれるような方では、さらなる減量が必要です。一般的には現在の体重を5%減少させることで肥満に伴う合併症が解消します。

 実際、私どもの外来でも生活習慣の改善により、5kg程度の減量が図られた時点において糖尿病、高脂血症、脂肪肝、高尿酸血症の改善や消失がみられます。しかしながら、超肥満の方では10%の減量が必要となります。1kgの体脂肪は7000kcalのエネルギーをもっているので、一日700kcalの摂取カロリーを減らすことにより100gの体重減少が期待されます。一カ月間続けることにより、3kgの減量が期待できるわけです。一般的には一カ月に1―2kgの減量が理想的と思います。極端なダイエットにより急激に減量を図ろうとしても、多くは脱水による体重減少でリバウンドしやすいようです。運動を併用してゆっくり減量することで、全身の筋肉量を減らさずに体脂肪を減少させることが重要です。急激な減量による筋肉の減少は、逆に結果として糖尿病になりやすい体になってしまう危険性が潜んでいます。

 ただ、生活習慣の改善にも限りがあり、どうしても充分な減量が図れないBMI30kg/m2以上の方では、入院管理下において超低カロリー療法も行われています。具体的には入院していただき、特に重篤な合併症がないことを確認した後に、一日420kcal(84kcalの特殊なダイエット食品を一日五回服用)を摂取して減量を図ります。この間、いろいろな異常が生じないか、厳重に経過を観察する必要があります。このような厳重管理下で治療が行われると、四週間で平均体重123kgの方が110kgまでの減量に成功しています。ただし、この治療に用いられる食品はこのように少ないカロリーでも充分、必要栄養素が補われるように工夫された特殊食品ですので、どんな食品でもこの低カロリーを行っても大丈夫というわけではありません。非常に危険ですので、これを安易にまねたような極端な減量は避けていただきたいことを申し添えます。

 また、生活療法によってもBMI35kg/m2以上でさらなる減量が必要な方では食欲を抑制し、体の熱産生を盛んにすることにより減量を図ることの出来る薬剤も処方することが可能です。はじめは少量から服用し、副作用がないようでしたら一日三回服用して食欲を抑制する薬です。私どもの臨床データでは、やせにくい遺伝子を持っていない方は三カ月間で約8kgの体重減少が期待できることが分かっています。しかしながら、このような薬剤は食欲を抑えますが、連続使用可能期間が十二週間と限られているので、薬剤を中止した後に強い空腹感を生じる方が少なくなく、リバウンドのもとにもなる可能性があるので安易な服用は止めていただきたいと思います。

 さらに超肥満の中には、肥満症によりこのまま減量出来ない状態が継続すると心不全などを引き起こしてしまい、命にかかわる問題になってしまうような患者さんもいます。このように長期間の生活療法や薬物療法でもどうしても充分な減量が図れず、BMIが40kg/m2以上が継続され方やBMIが35kg/以上で重篤な合併症を有し、早急な減量が必要とされる場合には胃や小腸を小さくする手術が日本でも行われています。現在、群馬大学においてもそのような手術が可能となるよう準備中です。

最後に
 肥満は糖尿病などの生活習慣病のもとです。そして、過度の肥満や病気の合併は肥満症としてすでに病気の状態です。日々の心がけ次第で生活習慣病にならないで済むかもしれません。ご自身はもちろん、大切な家族のためにも自覚を持って食生活に注意し、運動習慣を身につけ肥満の解消に励みましょう。

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