健康通信倶楽部
健康通信倶楽部
.
.
こころ・生活・食
« Back
.
.
large small

健康百科

血尿のはなし
群馬大学大学院 医学系研究科泌尿器病態学
教授 鈴木和浩

鈴木和浩

種々の疾患が潜む血尿出血部位で異なる症状

 血尿は尿の中に血液が混ざっている状態で、肉眼で明らかに分かる「肉眼的血尿」と、検査ではじめてわかる「顕微鏡的血尿」に大きく分けられます。例えば、皆さんが受けている健康診断や人間ドックで診断される「尿潜血陽性」は後者にあたります。尿は腎臓で作られ、腎盂、尿管を通って膀胱にたまり、尿道から排出されます。男性には膀胱の下に前立腺があります。尿に血液が混ざるのは、こうした臓器におこった病気のサインであることがあります。しかし、尿潜血が何年も指摘されていて、特に体調に変化のない方も多いのではないでしょうか。今回の健康百科では「血尿」について分かりやすく説明したいと思います。

顕微鏡で見た血尿

本当に血尿?
 ある日、外来に見えた方が「最近、尿が赤く、血尿が出るのです」と話されました。顔を見るとやや黄色く、眼球結膜(しろめ)も黄色に染まっています。検尿の所見を見る前に、コップにとってもらった尿をみると黄褐色の尿でした。最近、疲れやすく食欲もなくなってきたとのことでした。これは急性肝炎によるもので、ビリルビンという黄疸の原因物質が尿に排泄されて、患者さんには「血尿」に見えたのです。

 また、別の患者さんが「尿の色が濃くなって、血が混ざるようです」と来院されました。よく聞くと最近、夜の尿が近いので、水分をできるだけ控えているということでした。検尿所見は特に異常ありませんが、コップに採った尿は褐色で濃い尿でした。このように、尿の色は摂取する水分の量や排泄される物質(ビタミン剤を飲んだ後の尿がきれいな黄色になることを経験したことはありませんか?)によって影響され、時に血尿のように見えます。

健診で「尿潜血陽性」といわれたら
 健康診断や人間ドックでは検尿が必ず検査項目に入っています。尿の中の潜血反応、タンパク、糖を主にチェックしますが、詳しく見るところでは顕微鏡で見た尿の所見も出てきます。尿潜血陽性の場合に多くは試験紙による反応で、血液中のヘモグロビンという赤い色素を検出するものです。この反応が陽性と初めて言われたときには、ぜひ泌尿器科で一度検査をしてもらってください。泌尿器科では尿を遠心して尿の中にある赤血球や白血球、細菌(図1C)を濃縮して顕微鏡で観察します。尿潜血が陽性でも実際には赤血球が見えない場合もありますし、通常より小さかったり、大小不同の赤血球が見えたり(図1B)、通常の赤血球(図1A)が見えることがあります。私たちはこの情報を非常に大切にしています。小さかったり、大小不同のものは腎臓の中で血液がろ過されて尿が作られる際に出現した可能性がありますし、通常の赤血球はどこかで出血が現在も起こっていることを念頭におきます。

尿路と血尿の出現の関係

 また、尿タンパクを伴っているかどうかも非常に大切です。尿タンパクを伴う場合には、腎炎や腎症なども注意します。検査の内容は後で述べますが、尿潜血陽性の場合には、薬や手術といった治療を必要とする病気が隠れていることは90%くらいの方にはないようです。しかし、残り10%の方には泌尿器科で治療が必要な病気が隠れていますので、特に初めて尿潜血陽性といわれた方は受診をお勧めします。

尿に血が混ざった!
 明らかに血尿だ、という場合には、いくつか大切なことがあります。まず、血液がいつ混ざるのかが重要です(図2)。尿全体が血尿なのか、排尿のはじめに血液が出るのか、排尿後に血液がたれるのか。これは尿が排出される解剖を考えるとよく分かります。

 排尿のはじめだけに血液が出るのは、膀胱にたまった尿は正常ということですから、血液は尿道にあるということです。特に男性の場合には前立腺からということもあります。尿全体がはじめから終わりまで赤いのは膀胱内や腎臓、腎盂、尿管といったところから出血している場合です。

 これに対して排尿の終わりに血液が混じるのは、膀胱の出口に炎症があったりして尿が出終わるときに粘膜がこすれて出血したり、前立腺部からの出血であることがあります。

 このように同じ血尿でも出血部位によって特徴があります。また、痛みや発熱などの随伴症状が大切です。これは病気の質を判断する大切な情報です。肉眼で見て血尿や出血があった場合には、泌尿器科で治療が必要な病気が隠れていることが多く、受診が必要です。

膀胱ファイバーによる所見

どんな検査をするの?
 尿潜血陽性の方は検尿の再検を行い、尿路の検査として超音波検査(エコー)で腎臓や膀胱内の観察、造影剤という注射をしてレントゲンをとる排泄性腎盂造影(IVP)、尿の中の細胞をみる尿細胞診、膀胱鏡(膀胱ファイバー)で膀胱内の観察などを行います。肉眼的血尿が見られる方では膀胱ファイバーでの確認が必須で、尿道から前立腺部の状態、膀胱内の病変の有無、尿が尿管から出てくる尿管口からの血尿の排出の有無などをみます(図3)。これに前に述べた検査を組み合わせ、さらにCTスキャンなども必要により施行します(図4)。

どんな病気が考えられるのでしょうか?
 尿潜血陽性の場合、多くの方はすぐ治療すべき疾患が関係していることがないことを述べました。しかし、エコーで腎のう胞やごく小さな腎結石が見つかることはよく経験されます。「ではどうして血が出るのですか?」という質問を受けます。これは腎臓から尿が出るときに血液が少しもれて出てくる場合が多いですが、今回施行した検査では発見されなかったごく小さな病変がある可能性もあって、定期的な検査の大切さをお話しています。

CTスキャンによる腎癌

 泌尿器科ですぐに治療する必要のある病気として、最も注意しなければならないのが悪性腫瘍です。腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌が代表です。特に膀胱癌では痛みなどを全く伴わない血尿(これを無症候性血尿と呼びます)が特徴です。これらは手術が必要な病気です。また、近年増加している前立腺癌や前立腺肥大症も血尿で見つかることもあります。良性の病気では尿路結石(腎結石・尿管結石・膀胱結石)がもっとも多く、典型的な場合には背部の叩打痛や側腹部痛を伴います。また、女性に多い膀胱炎でも排尿の終わりに血尿が見られることがあり、特有の痛みを伴います。腎臓の血管系の異常でも血尿が見られ、腎動静脈瘻や左腎静脈が上腸間膜動脈によって圧迫されるナットクラッカー現象が代表です。さらに、女性に多い遊走腎も原因となります。

 このように血尿には種々の疾患が潜んでいる可能性があります。「一度血尿があったのですが、その後は出なかったので…」という方もいらっしゃいます。「初めて尿潜血を指摘された」「血が尿に混ざった」場合には、泌尿器科に受診してください。


健康通信倶楽部トップページへ戻る



△TOP



Copyright © Jomo Shimbun, Inc. All rights reserved.