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最先端医療の現状を訪ねて

インプラント義歯の構造 インプラント歯科治療
群馬大学医学部附属病院 歯科口腔外科・歯科
講師 笹岡邦典

高度先進医療に対応したインプラントの応用

●インプラント歯科治療とその歴史  インプラントとは元来、生体内に挿入、または移植された材料を意味します。インプラント歯科治療は身体内に何らかの材料による器具を埋入し、これを用いて失われた歯を補綴し、咬合・咀嚼を可能にする歯科治療技術です。

代表的な症例

 歯は主にう蝕、歯周病によって失われます。ここに人工の歯を入れて咬合・咀嚼できるようにするためには、少数歯欠損に対しては簡単に固定式のブリッジができますが、多数歯欠損には@取りはずし式の義歯によるかAインプラント治療により土台を用意してブリッジにするかB取り外し式の義歯と組み合わせるか―いずれかの方法に頼るしかありません。

 このインプラントを利用して失われた歯を補う方法がインプラント歯科治療です。装着感が良く、取りはずしてケアをしなくてもよい義歯を入れたいという欲求は昔から強く、これを可能にするインプラント歯科治療はすでに三十年近い歴史があります。昔は材料学が進歩していなかったため、臨床成績が一定しなかったきらいがありましたが、現在は成績が向上してきており、歯科治療にはなくてはならない治療法の一つになりました。

 群馬大学医学部附属病院歯科口腔外科・歯科では一九九三年から、インプラント治療を取り入れ継続して行っています。現在は失われた歯根の代わりにチタン製の人工歯根を顎の骨に打ち込み、周囲の骨と骨性癒着させ、歯を支える土台として利用する方法が主流です(図1)。

 われわれは高度先進医療を推進する役目を担う大学附属病院の診療科という性質上、困難な症例を対象としてインプラント治療を行っています。すなわち、口腔外科的疾患で治療後に顎骨の広範な欠損を後遺した場合、顎堤(歯を支えている骨の部位)に高度な吸収が生じた場合などがこれにあたります。

●高度先進医療としてのインプラント義歯  群馬大学医学部附属病院は高度先進医療の実施を承認された特定承認医療機関であり、歯科口腔外科・歯科では「インプラント義歯」が高度先進医療として本年三月、厚生労働省より認可されました。適応症は、私たちがインプラント治療の目標としている、通常の義歯の装着が困難な、顎骨に大きな異常のある歯牙欠損症例です。高度先進医療の費用の負担は、一般の保険診療費に高度先進医療分(特別料金)が加算されますが、元来、インプラント治療は保険外治療であるため、全体としては安価になります。これらの適応症に該当しない患者さんでインプラント治療を本院で希望される場合は通常の保険外治療となります。

●主な症例について  治療対象症例は外傷、腫瘍、その他の疾患により歯が喪失したり、顎骨の一部が欠損した患者さんで、表1の症型1、2のように上顎、または下顎の歯が全くない場合、普通では総義歯が適応ですが、義歯を支える顎骨が欠損しているため義歯の安定が悪く、インプラントを義歯の維持に利用した義歯(オーバーデンチャー)を作成しました。症例としては補綴処置の極めて困難な症例で、通常では患者さんが満足する義歯の作成は不可能です。

写真1は症例2の口腔内写真です。交通事故で下顎の顎堤(歯を支えている骨と歯肉)と歯牙を失い、義歯の維持に役立つ顎堤は全くなく、平坦になっていました(上段)。そのため義歯の横揺れを防ぐ目的で手術的にインプラントを二本埋入し、その後、義歯を支える歯肉面の面積を拡大する手術を行いました(中段)。次いでインプラントを義歯の固定源として、取り外し式の総義歯を作成しました(下段)。手術後七年を経過しましたがインプラントは炎症をおこさず、現在でも義歯の良好な維持安定が得られています。

外傷による下顎顎堤および歯牙欠損への応用例(症例2)

 症例3は歯肉癌で下顎臼歯部の骨を切除した患者さんで、自家骨移植を行い、インプラントを埋入して臼歯冠を作成しました。

 症例4は前歯の歯周病で骨吸収と歯の脱落がみられた患者さんで、自家骨移植を行い、インプラントを埋入しました。

 症例5、6は外傷で歯を失った患者さんへのインプラントの応用症例です。

●術前診断としての次元画像診断の応用

歯科用3次元X線CT画像

 インプラント治療を成功に導くためには、インプラントを埋入する部分に必要十分な骨が存在することが用件で、骨が少ないとインプラントが動揺したり、感染の原因ともなり、不成功の結果となります。すなわち、われわれの対象は、もとより大きな困難を伴います。私たちはこれを克服するため、X線CTデータを顎骨専用の3次元画像診断ソフトを用いて画像化することにより、通常用いられている2次元X線画像に比べてインプラントを埋入する顎骨の状態をより正確に把握できるため、困難な症例に対しても正確にインプラント埋入手術を行うことができます(写真2)。

●今後の目標 現在、大きなトラブルもなく経過はおおむね良好ですが、特に下顎大小臼歯のインプラント埋入手術では、下顎骨内を走る神経障害の問題が依然として存在すること、インプラントが顎骨と理想的な骨性癒着を生じない場合もあること、さらに感染を生じる危険性もあります。手術手技を含め成績向上に努力するとともに、今後は患者さんの満足度をさらに上げるための質の向上、また今まで難しい症例として治療をあきらめざるを得なかった患者さんに対してのインプラント治療の新たな可能性についても検討していく予定です。


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