健康百科
心臓のはなし 狭心症・心筋梗塞について
群馬大学大学院医学系研究科 臓器病態内科学助
教授 長谷川 昭
狭心症と心筋梗塞は心臓を栄養する冠動脈の動脈硬化が進み、十分な血液が心臓に供給できなくなるために起きる病気です。心筋梗塞はがん、脳卒中と並んで3大死因の1つですが、年齢別の死亡率は治療法の進歩で横ばい、あるいは減少傾向にあります。今回は狭心症と心筋梗塞の診療手順を紹介いたします。
狭心症、心筋梗塞の基礎知識
冠動脈硬化
血液中のコレステロールなどが血管壁に進入・貯留して動脈硬化が進みます。動脈硬化の部分が破裂し、たまった物質(粥腫)が血管内腔に漏出すると血液が急激に固まり(血栓形成といいます)、血管を閉塞します(図1)。
胸痛
血液が不足した心臓は漠然と押さえつけられるような特有の痛みを生じ、のど元や左肩、左腕に痛みが広がります。
心筋梗塞と狭心症の種類
1. 急性心筋梗塞
粥腫の漏出で固まった血液が血管を長時間閉塞すると、心筋細胞が死に至ります(心筋壊死=図1)。心筋壊死が起きた場合を心筋梗塞といい、致死的不整脈や壊死部の破裂(心破裂)、重症心不全など致命的な合併症が出現します。年間約15万人が発症し、30%の人が亡くなるといわれています。入院中の死亡率は低下していますが、病院に到着する前に亡くなる方が多いのが課題です。
2. 狭心症
心臓は血液が不足しているものの心筋壊死になっていない状態で、次の3つのタイプがあります。
不安定狭心症
急性心筋梗塞と同様に動脈硬化の部位で粥腫の漏出が起き、血液が固まって血液の流れが制限されますが、心筋壊死は起きていない状態です。急性心筋梗塞に移行する危険性が高い狭心症です。
労作性狭心症
血管の壁が徐々に厚くなり血液の流れが制限された状態です。血液の流れは一定以上増加できないので、一定の運動で血液不足になり胸痛が出現します。
冠攣縮狭心症
動脈壁にある平滑筋細胞が過剰に収縮(攣縮)を起こし、血流が遮断されます。攣縮が起きていない時は血流は正常に保たれます。特に明け方に発作を起こすものは異型狭心症といわれています。カルシウム拮抗薬が良く効きます。
診断
診断の基準1
患者さんから話を聞きます(表1)
どんな痛みがいつからいつまで続いたかなど、患者さんの話を聞くだけで6割程度診断がつくといわれています。急性心筋梗塞や不安定狭心症では、死を意識するような漠然とした強い胸痛が突然出現し、冷や汗を伴うことが多いとされています。しかし、症状はいつも強い胸痛とは限りません。高齢の女性は症状が軽いことがあります。
診断の基準2
血液検査と心電図検査
心筋壊死になるとトロポニンなど心臓固有の物質が血液中に流出するため、血液検査で確かめます。発作中には血液不足を反映して心電図変化が認められますが、非発作時には認められないことがあり、心電図の解釈は慎重に行います。
診断の基準3
患者さんの話、血液検査、心電図などの所見から急性心筋梗塞、不安定狭心症、労作性狭心症、異型狭心症の診断を行い、さらに確定診断のための検査を行います。不安定狭心症や急性心筋梗塞は病状の変化が早いため、迅速な診断が必要です。
診断の基準4
糖尿病や高血圧など冠動脈硬化の危険因子を持ち、狭心症が疑われる場合は、マルチスライスCTによる冠動脈病変の検査が有用です(図2?A、B)。
確定診断のための検査と治療
検査と治療1
不安定狭心症あるいは急性心筋梗塞の可能性がある場合には、入院して診断・治療を行います。抗血小板薬、抗凝固薬、抗狭心症薬、血清脂質低下薬などの薬剤投与を行います。侵襲的検査であるカテーテルを用いた冠動脈造影検査(図2?C)で冠動脈の病変の評価を行い、確定診断と薬剤治療、血管形成術、冠動脈バイパス術などの治療方針を決定します。
冠動脈の閉塞が6時間以内の場合には、カテーテルによる血流再開術を行います。金属の網で閉塞部位を拡張するステント治療が有効と考えられています(図3)。入院後の急性心筋梗塞の死亡率は5?8といわれており、主な死因は心破裂、重症心不全などです。
検査と治療2
労作性狭心症は冠動脈造影検査で確定診断し、病変により治療法を選択します。異型狭心症では発作時の心電図を記録し診断します。冠動脈造影検査時にアセチルコリンという物質を投与して発作を誘発することもあります。内服薬が良く効くことから内服治療が原則です。
予防と早期治療、そして心肺蘇生術の習得を
心筋梗塞と狭心症の診療について概説しました。冠動脈硬化の危険因子を是正し発症を予防すること、異常に気付いたらなるべく早く医療機関を受診することが大事です。また万一、家族が心停止状態になっても心肺蘇生術が行えるよう、ぜひ救急蘇生術を習得しておきましょう。
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