講座紹介
患者中心の看護の提供と魅力ある職場づくり 群馬大学医学部附属病院 看護部
病院長補佐・看護部長 前田三枝子
看護部とは
群馬大学医学部附属病院は現在715床の入院ベッドを有する特定機能病院です。高度先端医療の実践、医療従事者の育成、先駆的な研究を総合的に行い、国民の健康の維持・向上とわが国の医療の発展に貢献することを目的として設立されています。
病院では、医師をはじめさまざまな人々が働いていますが、一番大きな組織が看護部です。現在約500人の看護職員が24時間、交代で患者さんの入院中のお世話や診療の介助に当たっています。
看護部の理念と方針
病院の理念である「患者中心の医療を推進する」を受けて看護部では、一.患者中心の看護を提供する、二.看護の発展に寄与する、を看護部の理念として掲げています。さらには、患者さんに安心と信頼をしていただける看護を提供させていただきながら、常に看護の専門性を追求し、高度な看護の提供ができるよう日々努力と研鑚を続け、地域を代表する看護教育や臨床研究の実践の場としての役割を果たすことを看護部運営の方針としています。
看護実践の基本となる「ケアリング」
どの専門職にもその職務を遂行する土台となる哲学が存在します。群馬大学看護部では「ケアリング」という哲学を看護の基本概念としています。「ケア」は日本語では「世話」や「気を配る」「面倒をみる」「手をかける」などと訳されますが、「看護ケア」や「心のケア」などカタカナでそのまま広く使用され、英語では"care"と書きます。それに進行形の"ing"をつけて、"caring"とし、「ケアリング」つまり「ケアすること」を私たちの仕事の倫理的、理論的根拠としています。具体的には、「ケアリング」は一.相手のためにする「行為」、二.相手の「可能性を引き出す」、三.相手と「共にいる」、四.相手を「知る」、五.「希望」を意味します。患者さんお一人お一人に関心を向け、人格を持つ人として向き合い、大切に気遣い、温かく見守りながら、24時間一番身近なところで、患者さんが持つ自然の治癒力を引き出し、お元気になられる過程を希望をもって時間と場を共有することです。
大学病院をおとずれる患者さんの特徴
特定機能病院である大学病院は、基本的には紹介患者さんの診療をさせていただいています。いったん開業医や他の病院で診察や検査を受けておられ、さらに大学病院で診てもらいましょうと勧められてこられた患者さん方が主です。より重症で、複雑な病気を抱えた患者さんが多く、大学病院を医療の「最後の砦」として選択してきていただいています。
患者さんやご家族は、様々な不安と期待を抱いておられます。命に危険が迫っているのではないか、病気は治るのか、痛みや苦痛はいつまで続くのか、果たして元通りの生活に戻れるのか、どのくらいお金がかかるのか、医師や看護師は優しくしてくれるのか、等々心配事をたくさん抱えておられます。
その一方、たいした病気ではない、なにかの間違いだ、すぐに治る、すっかり元通りになるなど、さまざまな期待も抱いておられます。右も左も分からない、慣れない入院生活に戸惑い、心細い思いをされ、眠れない夜を過ごされる患者さんもおられます。
病気のさまざまな症状や不快や苦痛を伴う治療・検査は体力的にも、精神的にも患者さんを疲れさせます。身体活動の制限や食事の制限などもつらさを増強します。身体に侵襲を与える手術や治療は人に本来備わっている抵抗力を弱めます。
臨床試験など新しい治療法の開発に参加される患者さんもおられます。
このような患者さんの一番身近で、24時間、寄り添っているのが看護師です。
看護師への道
看護師の仕事は、診療の補助と療養上の世話をすることと定義されています。看護師になるには、一般には高等学校を卒業後3年制の看護学校や短期大学、あるいは4年制看護大学を卒業した後、国家試験に合格し、看護師としての免許を取得しなければなりません。
助産師、保健師は、指定された科目を履修し、看護師の免許を持った人が、それぞれの国家試験に合格して免許を取得します。
看護学校では身体の仕組みと機能、病気の成り立ちや治癒の過程、薬の種類と作用幾序など、解剖生理学や薬理学、微生物学などの基礎医学はもとより、人間の基本的欲求や成長発達過程、病気に対する人間の反応、心理学、家族学、教育学など幅広い科目と専門看護学を学びます。看護は相手に変化を起こす実践学ですから、実際に患者さんの看護を行う実習が不可欠です。基本的欲求の自己充足を支援する援助技術をはじめとし、採血、注射、吸引、吸入などの診療関連技術の習得も重要です。
IT化が進む業務
医学がめまぐるしく日進月歩するように、看護もより高度な知識と技術を必要としています。医療器具も多様化し、ITが搭載された人工呼吸器や輸液ポンプ等の操作、心電図などの生体監視装置の操作と監視にも精通していなくてはなりません。看護の記録は携帯端末やノートPCを患者さんのベッドサイドに持ち込み、入力さえすれば体温表にグラフ表示されるようになっています。
ナースコールも携帯PHSと連動しているので、病院内どこにいても、誰が呼んでいるのかわかります。医療情報ネットワークシステムを駆使して、医師の指示は毎日看護ワークシートに印刷されてでてきます。
認定看護師・専門看護師の活躍
臨床看護も専門分化し始めています。創傷や人工肛門増設患者のケアを専門に行う看護師や手術を受ける患者さんへの援助を専門とする看護師、緩和ケアを行う看護師など、6カ月以上におよぶ卒後教育を受け、日本看護協会の試験に合格して活躍している認定看護師が増えてきています。群馬大学には現在4名の認定看護師が活躍していますが、19年度にはもう1人増える予定です。
働きながら看護の大学院に進学し、がんやホスピスケアといった特定領域の専門看護師コースの教育を受けている人もいます。研究者を育てる大学院博士課程在学中の看護師もいます。
経験の積み重ねだけでは専門看護の追求は難しくなってきています。大学ではより上級の看護教育を受ける看護師の支援を積極的に行っています。
固定観念を打破する看護師のユニホーム
病院では5年前から看護師のユニホームをカラフルなものに変えました。白い診察医集団の中にあっても、どこに看護師がいるのか一目瞭然です。白がアクセントとなった、明るく、活動的な柄物の上着と白のパンツルックやスカートの組み合わせです。
初めてご覧になる方は驚かれますが、親しみやすく、声をかけやすくなったとの良い評価もたくさんいただいています。カラーセラピーの概念を取り入れ、「癒やし」と「責任」をテーマとして群馬大学独自に製作したものです。職員の意識改革にもなっています。
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