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リレーエッセイ ドクターの呟記(つぶやき) 医療人の生きがい 西群馬病院院長 斎藤龍生
副院長時代13年、院長になって3年目を迎え、ここ10数年間の医療情勢の変化はめまぐるしいものがある。医療費抑制政策による病院経営への影響、新臨床研修制度の開始に伴う医師不足、看護基準による入院基本料改定に伴う看護師不足など、明るい未来がなかなか見えず厳しい状況が続いている。 「勝ち組」・「負け組」といういやな言葉も日常的に耳にする。各種診療報酬の新設と診療報酬改定により、いやがおうにも医療サービスと医療費抑制の方向に誘導されている。すばやく対応してやっと経営のめどが立つと、また次の診療報酬改定の高いハードルが目の前に立ちはだかってくる。 確かに、日本の病床数は多すぎるので病床数削減を狙った在院日数短縮化・社会的入院抑制は必要と思われるが、診療報酬誘導による短期間での強引な手法は、理想にたどり着く前に、地域医療の崩壊と医療人の疲弊化を招きかねない。医師の事務的な仕事量は膨大な量になり、マスコミの過剰なまでの医療批判によるストレスとあいまって、過酷な勤務医生活に耐えられずやめて開業する医師が後を絶たず、医師不足に拍車をかけている。これらの勤務医のなだれ現象的な開業に対して、虎ノ門病院の小松秀樹部長は、著書「医療崩壊」(朝日新聞社)のなかで、「立ち去り型のサボタージュ」と厳しい表現をしている。 世の中では、病院経営にも企業経営の考え方を積極的に導入することが当たり前のように求められている。そもそも企業経営の目的とは何であろう。 いわゆる勝ち組とされているIT企業の経営者は「顧客の満足と、株主への還元」と言うが、いまひとつ違和感がある。企業の従業員の幸せはどこに行ってしまったのだろうか。成果主義の導入は、企業の経営者にとって便利なのだが、企業を元気にしてくれているのだろうか。患者さんの満足と、医療人のやりがいを両立させる方法はあるのであろうか。簡単には解決ができそうもない問題が次々と出てくるが、解決のためのキーワードは「感性を磨く」というところにあるように思う。自分の思い込みによる見当違いの労力を最小限にするためには、患者さん一人一人が何を求めているかを的確に感じ取る「感性」が必要である。患者の望まないサービスは、患者さんの満足につながらない。労力が有効に評価されないのである。 医療従事者が持っている「病気や障害のある人の手助けをしたいという本来の志への労力」が、患者さんの満足につながれば、「医療従事者がやりたいこと」と、病院の理念や基本方針がマッチし、安全で質の高い医療の提供と、職員の満足度の双方が叶えられると思われる。その際に私たち管理職に課せられた課題は、職員の志と努力を無駄にさせないために、高い理想を持った病院の理念を言い続け、それを通じて職員に、「何のために自分は仕事をしているか?」を常に意識させる病院運営をしていくことであろう。
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