健康百科
乾癬のはなし 「感染」しない「乾癬」欧米でおなじみの尋常性乾癬とは?
群馬大学大学院医学系研究科皮膚病態学
安部正敏(文責)、石渕裕久、周東朋子、長谷川道子
「尋常性乾癬」という病気をご存じでしょうか?「かんせん」という発音から、伝染病のように思われがちですが、実際は全くうつらない病気です。日本ではあまり馴染みがありませんが、アメリカでは「アトピー性皮膚炎(前号参照)」と同じくらい有名な皮膚の病気です。
乾癬は皮膚の工場がフル稼働している病気
皮膚は外側から表皮・真皮(コラーゲンなど)・皮下組織(脂肪組織)の3層に分かれます。このうち乾癬の病変は表皮が主になります。表皮は
一番下にある基底細胞が19日ごとに分裂することで、新たな細胞が作り出されます。産生された細胞は徐々に上方に移動し、最終的には細胞死を迎え「垢」となって脱落します。この過程は約45日かかります。垢というといかにも汚いイメージがありますが、垢は外から押し寄せる埃や細菌などの異物を生体内部に侵入させない重要な役割をもちます。表皮細胞は自らの命と引き換えに我々を守ってくれているのです。ところが、乾癬病変部の皮膚では基底細胞の分裂が繰り返され、表皮細胞の増殖速度が亢進する結果、生まれてから垢となるまでが約4日に短縮してしまいます。言わば、乾癬は皮膚の工場の生産ラインがフル稼働している病気なのです。
乾癬の皮膚症状と頻度は?
乾癬の皮膚症状は、白色の鱗屑(たまってしまった垢です)を付着した発疹が全身に出現します。鱗屑は次々に剥がれ(蝋片現象)、最終的に紅
色の皮疹となり、時に出血(アウスピッツ現象)がみられます(図1)。皮疹は全身に多発しますが、日光にあたらない部位に多く、頭皮、肘頭、膝蓋などが好発部位です。皮疹の大きさ、数、形は様々で、発疹が癒合して大きな病変を作ることもあります。爪の変形や関節症状を伴うこともありますが、通常内臓を侵すことはありません。
我が国の乾癬の頻度は0.1%です(アメリカでは4%)。乾癬の原因はいまだ不明ですが、遺伝的素因に加え、後天的な環境要因が発症に関与すると考えられています。日本でも患者数が増加していますが、これは食生活の欧米化が関係するといわれています。実際、乾癬には高脂血症などの合併が多く、そちらが改善すると乾癬も良くなる場合があり、アメリカでは「日本食を食べなさい」と指導する専門医もいます。乾癬は風邪などの感染症、擦ったりする機械的刺激などで悪化します。乾癬の場合、皮膚症状による精神的、社会的な影響に加え、整容的問題から患者さんの生活の質を著しく低下させてしまい、大きな問題となります。周囲の方の病気に対する理解が求められます。
乾癬の治療は?
乾癬の治療は外用療法、内服療法、光線療法の3つが主で、これらを症状にあわせ適宜、選択することになります(図2)。しかし、一律な治療方針はなく、患者さんの病気の程度、生活環境に応じた治療法を医師と話し合いながら選択することになります。通常、外用薬が第一選択で、乾癬に特化して開発されたビタミンD3外用薬は副作用も少なく有効性も高い優れた薬剤です。内服薬は、レチノイド、シクロスポリン、メトトレキサートが主で、なかでもシクロスポリンは副作用防止のため定期的な血液検査が必要となりますが、高い有効性を期待できます。紫外線療法も有効性が高く、最近では発がん性の少ない紫外線療法(ナローバンドUVB療法)が開発され、主流となってきました。
また、最新の話題としては、生物学的製剤と呼ばれる、乾癬を引き起こす生体内の液性因子を中和してしまう治療が将来日本でも乾癬治療に認可される見通しで、現在群馬大学皮膚科でも治験を行っております。この他、群馬大学皮膚科が日本で最初に導入した内服療法(抗甲状腺薬内服療法)などもあり、乾癬治療の選択肢はどんどん広がっています。
注目すべき活動全国の乾癬患者友の会
乾癬は他人の目に触れる皮膚病であるため、患者さんの精神的ストレスは相当なもので、著しく生活の質を下げてしまいます。そこで群馬大学乾癬診療班は、少しでも乾癬を正しく知っていただくため、3年前から「乾癬患者勉強会」を開催しています。我々スタッフの手作りの会で、乾癬の病態・治療・日常生活の注意点を話し、質疑応答を行っています(図3)。無料開催で、患者さんだけでなくどなたでもご参加いただけます。医療側からのこのような試みは全国でも珍しく、その後同様の会が千葉県でも開催されるようになりました。
一方、患者さん主導の組織もあり、「患者友の会」が全国に結成されています。これは、患者さん自らが立ち上げるボランティア団体で、北海道に初めて誕生し、現在北から山形、茨城、東京、北陸、三重、大阪、愛知、大分に結成されています。そして今年1月全国で10番目となる群馬県乾癬友の会、通称「からっ風の会」が設立されました。今後は我々が行う「勉強会」と「友の会」の活動を融合した形で、全国トップレベルの乾癬医療サービスを群馬県で提供するべく二人三脚で努力して参ります。
まずはお近くの皮膚科専門医へ
群馬県では乾癬診療に関して、医療機関同士の連携に努めています。乾癬はどの皮膚科医でも熟知しています。お悩みの方はぜひ一度、お近くの皮膚科専門医へご相談ください。
群馬県乾癬患者勉強会・群馬県乾癬友の会などのお問い合わせは、はっとり皮膚科医院のホームページhttp://hattori-hifuka.com/をご覧ください。
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