|
||
|
|
||
![]() |
||
|
リレーエッセイ ドクターの呟記(つぶやき) 入院中の楽しみ 群馬大学医学部附属病院 釜萢 桂子
2年間の研修医生活を終えてみて、先輩方のすごさを日々痛感する毎日ではありましたが、研修医のたった一つの強みの、患者さんとじかに接する時間が長いということを通して、患者さんの内側の部分に少しだけ触れられたことは私にとって大きな幸せです。 特に強く印象に残っているのは、(もちろん同僚とは何度も練習し合いましたが)実は患者さんとしては初めて採血をさせて頂いた相手でもある方です。慢性のご病気をお持ちでしたが、県内の道路地図を常に持参されていて、院内で知り合った人にお薦めのレストランやお店を尋ねては「いつか行こう」と印をつけていらっしゃいました。見せていただいた地図にはすでにたくさんの印がされており、その一つ一つに店名が丁寧に書き込まれていました。入院中の患者さんのご出身はさまざまなため、院内で知り合った人に尋ねると、自然と県内各地の"名店"探索となり、逆にそれ以前に教えてもらったお店を同地域出身の人に教えてあげることもできるとのことでした。そんなすてきな交流がなされていたことを知り、ふわっと心が温かくなる思いでした。
それから、傷のためにベッド上安静が必要で、座位も禁止となっていた方が、横になったまま手鏡で窓の外の夜景を映して楽しんでいらしたのも印象的です。その方はいつも笑顔で、手術当日にも、手術室の入り口で待機中に、同じ日に手術予定の赤ちゃんの泣き声を聞いて「赤ちゃんは命の象徴のように思えるから私って運がいいんだわ」と話されていました。 いつも元気で明るく過ごせる人は多くはないと思います。むしろ、入院中の方々はどこかしら体に調子の悪い部分をかかえていらっしゃるわけで、きっと周りの人が想像する以上につらい気持ちをお持ちなことでしょう。でもそういう中で笑いのもとを見つけられたり、何かを楽しもうという気持ちを持ち続けられるということは本当に素晴らしいと思います。私たち医療従事者にできることは、患者さんが少しでもそういう気持ちを持ちやすいように、環境を整えていくことかもしれない、と改めて感じています。
|
| △TOP |