健康通信倶楽部
健康通信倶楽部
.
.
こころ・生活・食
« Back
.
.
large small

がんを知る

咽頭・喉頭がん
群馬大学大学院医学系研究科 聴平衡覚外科学
古屋信彦・二宮 洋Dr. Furuya, Dr. Ninomiya

生命維持に欠かせない「のど」のがんを解明
部位によって発症や治療も異なる

 「耳鼻咽喉科」という名前で、「咽喉」という部分は「のど」を表しています。この部分に発生するがんが「咽頭・喉頭がん」です。のどは、食事と呼吸という生命の維持に不可欠な機能を担っている臓器です。また、社会生活において重要な、声によるコミュニケーションをとるための機能も担っています。のどにがんが発生すると、生命の危険があるだけでなく、社会生活に支障をきたすことになります。ここでは、咽頭・喉頭がんについて、症状、診断、病期分類、治療、治療成績について説明します。

 一般に「のど」と呼ばれている部分は、解剖学的には「咽頭」と「喉頭」に分けられています。咽頭は鼻・口と喉頭・食道の間の部分です。上から「上咽頭」「中咽頭」「下咽頭」の3つの部分に分けられます。(図1)

 上咽頭は鼻腔の後方にあり、後鼻孔で鼻腔と交通しています。上方は頭蓋底で下方は口蓋の高さまであります。両側の側壁には耳管咽頭口があり耳管を通じて中耳と交通しています。自動車で山に登ったときや飛行機に乗ったときに、気圧の変化に伴って、耳がボワーンとつまった感じ(耳閉感)になることがあります。これは、中耳の気圧が鼓膜の外よりも低くなっているため、鼓膜が内側に凹んでいる状態です。そんな時には、唾液を飲み込んだりすると改善します。唾液を飲み込む(嚥下)ことによって、耳管咽頭口が開いて、中耳と鼓膜の外の気圧が同じになるためです。また、上咽頭は、鼻で呼吸する場合の呼吸道としての機能があります。

図2 正常な咽頭のファイバー所見  中咽頭は軟口蓋の高さから舌骨までの部分で、前方で口腔と交通しています。口を大きく開けた時に見える部分で「のどちんこ(口蓋垂)」とよばれる突起とその周りの軟らかい上あごの部分を「軟口蓋」といいます。中咽頭の左右には、「口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)」があります。その奥の突き当たりの壁を「中咽頭後壁」といいます。また、舌の付け根部分も「舌根」といって中咽頭に含まれます。中咽頭には、呼吸道だけでなく、食物の通る消化管の一部としての機能もあります。また、物を飲み込む嚥下機能や言葉を話す構音機能もあります。

 下咽頭は中咽頭の下方で、喉頭の後方にあり、食道入口部までです。下咽頭は食物が通る機能があります。 喉頭は、咽頭と気管の間にあり、いわゆる「のど仏」と呼ばれる甲状軟骨に囲まれた円筒状の臓器です。上方で咽頭とつながっていて、下方で気管とつながっています。喉頭には左右の声帯があり、これを振動させることによって、発声することができます(図2)。また、食べ物を飲み込むときには、喉頭蓋というふたが喉頭を閉鎖するとともに、左右の声帯も閉鎖して、気管へ誤嚥するのを防ぎます。

図3 上咽頭がんのファイバー所見 咽頭・喉頭は、人間の生命維持に不可欠な呼吸と食事に深くかかわっている場所です。また、社会生活における発声によるコミュニケーションをとるための機能として重要な場所でもあります。

上咽頭がん
 上咽頭がんは、上咽頭にできた悪性腫瘍です。台湾、中国、東南アジアなどの地域に多く発生しています。日本では、比較的まれな疾患であり、耳鼻咽喉科で診療をする頭頸部がんの約10%を占めています。男女比は、3対1と男性に多く、年齢は30歳〜70歳代に認められます。ほかの部位のがんに比べて、若年者にも発生することが多いとされています。組織学的には、低分化型扁平上皮がんや未分化がんが多く、早期から転移をきたしやすい特徴があります。病因として、EBウイルスの関与が推測されていますが、現在のところはまだはっきりと解明されていません。

(1)症状
図4 中咽頭がん・頸部リンパ節転移のCT(左)とFDG-PET(右)  上咽頭がんは頭頸部がんの中でも、早期に自覚症状が出ることが少なく、症状の現れた時には、すでに進行がんであったということが少なくありません。約30%の症例では、頸部リンパ節への転移による、首の腫れ物(頸部腫瘤)が初発症状となって受診しています。このような例では、患者が最初から耳鼻咽喉科を受診することは少なく、内科や外科を受診してもなかなか診断がつかないことも多くあります。このため、頸部腫瘤が現れた場合には、必ず上咽頭がんを疑う必要があります。また、耳管咽頭孔付近にがんが発生すると、耳管が開かなくなるため、中耳の気圧調整ができなくなり、中耳に滲出液がたまる「滲出性中耳炎」となります。症状としては、耳閉感、難聴、耳鳴りなどです。滲出性中耳炎は風邪などの後に起こることも多く、比較的ありふれた病気ですが、成人では時に上咽頭がんの初発症状である場合もあり耳鼻咽喉科では上咽頭の観察を行います。上咽頭の原発巣でがんが大きくなると、鼻で呼吸ができなくなり、鼻づまり(鼻閉)が続くようになります。また、がんの表面が粘膜で被われていない場合には出血しやすく、鼻血(鼻出血)や、血の混じる鼻水(血性鼻汁)が出る場合もあります。さらに、がんが頭蓋底の骨を破壊して大きくなってくると、脳神経症状を起こします。外転神経の障害により物が二重に見える(複視)、視神経の障害による視力障害、三叉神経の障害による顔の痛み、など多彩な症状が起こります。

図5 下咽頭がんのバリウム造影X線写真(左)とファイバー所見(右)(2)診断
 鼻の孔からファイバースコープを挿入して、上咽頭を観察し、腫瘍性の病変があることを確認します(図3)。そして、この部分から組織の一部を採取します。病理学的検査によってがんを確定診断とします。また、がんの進展範囲については、CTやMRIなどの画像診断が有効です。転移の有無については、ガリウムシンチグラフィーやFDG?PET検査などの核医学診断を用いて行います。

図6 下咽頭がんの遊離空腸による再建後のファイバー所見(3)病期分類
 頭頸部がん取り扱い規約に従って、原発腫瘍の進展を示すT分類、所属リンパ節(上咽頭がんの場合は頸部リンパ節)での転移に範囲を示すN分類、遠隔転移の有無を示すM分類のTNM分類を用いて病期分類(?期から?期)が行われます。数字が大きいほど進行しているとされます。

図7 咽頭観察(4)治療
 上咽頭がんはその解剖学的位置から、根治的手術によって原発巣を摘出することは極めて困難です。しかし、組織学的に低分化のがんが多いことから、放射線治や抗がん剤による化学療法の効果が高いと考えられています。このため、上咽頭がんの基本的な治療は、原発巣および頸部の転移リンパ節に対する放射線治療が主体となっています。近年では抗がん剤を組み合わせることによって治療効果の向上が図られています。放射線治療と同時に抗がん剤の投与を行う同時併用放射線化学療法や、放射線治療と化学療法を交互に行う化学放射線交代療法などが行われています。どのような治療を行うかは、画一的に行うのではなく病期に応じて、また患者の全身状態などを考慮した上で行われています。前述のとおり原発巣に対する手術を行うことはほとんどありませんが、治療によって消失しない頸部の転移リンパ節に対しては、手術を行う場合もあります。この場合はリンパ節を周囲の組織とともに摘出する頸部郭清術という手術が行われます。また、これらの治療が終了して、がんの消失が認められた後に、再発を防止するために、定期的な抗がん剤による全身化学療法を続ける場合もあります。

※頸部郭清術…頭頸部がんの頸部リンパ節転移に対して行われる手術です。転移したリンパ節だけを摘出するだけでなく、筋肉、血管、顎下腺、リンパ組織、脂肪組織などを一塊として摘出します。頸動脈、迷走神経、交感神経、舌下神経は保存します。

表1 咽頭がんの病期別生存率""(5)治療成績
 5年生存率は、全体で35〜50%。病期ごとでは?期:80〜90%、?期:60〜80%、?期:40〜60%、?期:20〜40%と報告されています。進行がんでは、局所や頸部リンパ節への再発よりも、肺、肝臓、骨などへの遠隔転移の頻度が多くなる傾向があります。


中咽頭がん  中咽頭にできるがんは、頭頸部がんの約10%といわれています。組織学的には扁平上皮がん、悪性リンパ腫、腺がんなどが発生します。この中で最も多い扁平上皮がんでは、男女比は8対1と圧倒的に男性に多く、好発年齢は50〜60歳代で、喫煙や飲酒などが大きな誘因として考えられています。部位としては、口蓋扁桃に発生するものがもっとも多い傾向があります。

(1)症状
 初期の症状は、のどの痛み、食べ物を飲み込む時の痛みやしみる感じ、違和感などですが、これらの症状のみでは、単純な咽頭炎として治療されていることもあります。中咽頭は、口を開けた時に見える場所なので、自分でも確認できることがあります。しかし、口蓋扁桃の周囲や舌根部にできたがんは、口から直接観察することが難しいため、早期に発見することが困難な場合が多いです。中咽頭がんの早期発見のためには、このような症状が出現した場合、耳鼻咽喉科医の診察を受けることが望まれます。がんが進行すると、のどの痛みが強くなり、食事がとれなくなったり、しゃべりにくくなったり、出血や呼吸困難が生じていきます。上咽頭がんと同様に、頸部リンパ節転移をきたしやすいため、のどの症状がなくて、頸部腫瘤が初発症状となる場合もみられます。

(2)診断
 耳鼻咽喉科では、口からの視診をまず行います。また、舌根部の観察には、ファイバースコープや間接喉頭鏡というミラーを使用します。疑わしい部分については、口から指を入れて触診を行い正常な部位との鑑別をします。その後、疑われる部分の組織を採取して、病理組織学的診断を行います。また、病変の広がりや頸部リンパ節転移の診断には、CTやMRIなどの画像診断も有効です。全身への転移の診断には、ガリウムシンチグラフィーやFDG?PET検査などの核医学診断を用います(図4)。

(3)病期分類
 TNM分類を用いて、病期を?から?期に分類します。腫瘍の大きさを示すT分類では、腫瘍の最大径が2以下をT1、2〜4をT2、4以上をT3、喉頭や周囲の筋肉・骨などに浸潤したものをT4としています。頸部リンパ節転移を示すN分類では、リンパ節の大きさや数によってN1からN3までに分類します。遠隔転移を示すM分類では、遠隔転移のあるものをM1とします。これらの、T分類・N分類・M分類の組み合わせによって、病期分類を行います。

(4)治療
 中咽頭がんで最も多い扁平上皮がんに対する治療法としては、手術療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法があります。以前は、早期がんに対してのみ手術を行い、多くの例では放射線療法が主体となっていましたが、近年では手術により摘出された部分を再建する方法が進歩したため、進行がんに対しても積極的に手術療法が行われるようになっています。また、抗がん剤を補助的に使用することも行われています。

 比較的小さながんの場合には、周囲を含めて摘出して縫い合わせることができます。しかし、広範囲にわたるがんを摘出した場合には、単純に縫い合わせることができず欠損部を生じてしまいます。例えば、軟口蓋にできたがんをすべて摘出すると、鼻と口の中が直接通じてしまうため、食べ物が鼻に逆流して飲み込めなくなり、声が鼻に抜けるようになってしまいます。手術によって、がんを治すことができても、中咽頭の機能が損なわれると「生活の質(QOL:クオリティー・オブ・ライフ)」の低下が起こってしまいます。これを防止するために、大きな欠損部に対して皮膚・筋肉などを移植して再建する手術が行われます。また、頸部リンパ節転移に対しては頸部郭清術が行われます。

(5)治療成績
 5年生存率は全体で50〜60%、病期別では、?期:60〜70%、?期:60〜70%、?期:40〜50%、?期:30〜40%、と報告されています。部位では舌根および後壁に発生したものが治りにくいとされています。また、からだのほかの部位にもがんが発生する「重複がん」の症例が、中咽頭がんの場合多いことが知られています。特にほかの頭頸部領域や食道、胃などに発生することが多く、これらの部位のがんの有無の検索も中咽頭がんの場合必須とされています。

下咽頭がん
 下咽頭がんは頭頸部がんの約10%を占めるといわれています。特に男性の罹患率が近年増加傾向にあると報告されています。原因不明ですが、疫学的には喫煙や飲酒の習慣とのかかわりが指摘されています。男女比は5対1程度で、年齢では50歳以降、特に60〜70歳代に多く認められます。頭頸部がんの多くは男性の発生頻度の方が高いですが、下咽頭がんの中で、輪状後部という部分に発生するものは、慢性の鉄欠乏性貧血のある女性に発生しやすいという特徴があります。組織学的には90%以上が扁平上皮がんです。

(1)症状
 食事や水を飲み込む時に、何かがひっかかる感じや痛みが生じます。明らかな原因がなくてのどの違和感を生じる「咽喉頭異常感症」という病気もありますが、この病気では飲み込むことと無関係に症状があることが多いという特徴があります。下咽頭がんがさらに進行すると、痛みが強くなり、耳の奥にも痛みが生じることがあります。これを耳への放散痛といいます。さらにがんが増大し喉頭にまで浸潤すると、声がれ(嗄声)が起こり、ついには呼吸困難となります。また、下咽頭がんも頸部リンパ節転移しやすいため、頸部の腫れ物が出現します。

(2)診断
 下咽頭は解剖学的に観察しにくい部分ですが、耳鼻咽喉科では間接喉頭鏡やファイバースコープを用いて下咽頭の観察を行います。確定診断のためには、組織の一部を鉗子で切除して、病理検査を行います。また、がんの進展範囲を確認するためには、バリウムによる透視X線撮影やCT、MRIなどの画像診断を行います(図5)。場合によっては全身麻酔をかけて、硬性食道鏡検査を行うこともあります。また、全身の転移の有無の診断のためには、ガリウムシンチグラフィーやFDG?PETなどの核医学検査が有効です。

(3)病期分類
 上咽頭がんや中咽頭がんと同様にTNM分類に基づいた病期分類(?期〜?期)を行います。?・?期を早期がん、?・?期を進行がんと呼びます。下咽頭がんでは、初診時に頸部リンパ節転移が認められることが多く、進行がんの割合が高いことが知られています。群大耳鼻咽喉科で過去15年間に治療した下咽頭がんの約90%が進行がんでした。

(4)治療
 一般的に早期がんの場合には、放射線照射を主体とした治療が行われ、進行がんの場合には、手術主体の治療が行われています。放射線治療の効果を高めるために抗がん剤による化学療法を同時に行うことが、近年では広く行われています。また、手術前にがんを縮小させる目的で化学療法を行う場合もあります。がんに対する手術では、がんの部分のみでなく周囲の正常な組織もふくめて摘出する必要があります。下咽頭がんの場合は、その解剖学的位置関係から喉頭と隣り合っているため、喉頭も摘出する必要があります。また、下方では食道に続いているため、食道の一部も摘出する必要があります。喉頭を摘出すると、声帯を失うため、発声ができなくなります。また、下咽頭から食道上部までの食べ物の通り道が摘出されますので、この部分の再建術が必要です。再建の方法としては、胸の部分の皮膚と筋肉を用いた大胸筋皮弁、小腸の一部の空腸を使って血管吻合の技術を用いて再建する遊離空腸などが行われます(図6)。また、食道にもがんが広く進展している場合には、食道も摘出し胃を用いて再建する方法もあります。どのような手術方法を用いるかは、がんの進展範囲や患者の全身状態などを考慮して慎重に決定されます。また、頸部リンパ節転移に対しては、頸部郭清術が行われます。

(5)治療成績
 下咽頭がんが頭頸部がんの中で最も治りにくいがんの一つであるといわれています。全体の5年生存率は、20〜50%と報告されています。早期がんでは、60〜70%ですが、進行がんでは30〜40%と報告されています。進行がんの場合が多いため、全体の5年生存率が低くなっていると考えられます。

喉頭がん
 喉頭がんは頭頸部がんの中で最も多く約25%を占めています。日本における喉頭がん罹患率は人口10万人当たり約3人です。年齢では、60歳代後半に最も多く発生します。男女比は10対1で、圧倒的に男性に多く発生しています。タバコとの関係が指摘されており、喉頭がん患者の90%以上は喫煙者で占められています。また、喉頭がんの中でも声門上がんでは、アルコール多飲の関与が指摘されています。組織学的には90%以上が扁平上皮がんです。喉頭がんは、その発生部位によって、「声門がん」「声門上がん」「声門下がん」の3つに分けられています。声門下がんの発生は他部位に比べて少ない傾向にあります。

(1)症状
 喉頭がんの症状は、がんの発生した部位により異なります。最も頻度の高い声門がんの場合には、初発症状として「声がれ(嗄声)」が必ず現れます。かぜによる喉頭炎でも、嗄声は起こりますが、この場合炎症がひけば嗄声が治ります。喉頭がんの場合には、1カ月以上の長期にわたり続き、治ることがありません。このような時には、早急に耳鼻咽喉科を受診する必要があります。がんの増大に伴って嗄声の程度も悪化していき、ついには声が出なくなる「失声」となり、呼吸困難が出現します。声門上がんでは、初発症状で嗄声はおこらず、のどの異物感、いがらっぽい感じや食物を飲み込むときの痛みがあります。がんが進行して声帯にまで達すると嗄声や呼吸困難が出現します。声門下がんでは、初期は無症状ですが、進行すると声門がんや声門上がんと同様に嗄声や呼吸困難が出現します。

(2)診断
 喉頭の観察には、間接喉頭鏡検査と喉頭ファイバースコープが用いられます。間接喉頭鏡検査では、患者はいすに座り、口を開いて舌を出します。医師は、左手で舌を持ち、右手で間接喉頭鏡というミラーを口の中に入れて、喉頭を観察します。喉頭ファイバースコープは、直径3〜5の細いファイバースコープです。鼻の中を表面麻酔した上で、鼻の孔からファイバースコープを喉頭まで挿入して観察します(図7)。また、がんの発生した部分は声帯の振動が悪くなっていることから、声帯の振動を観察するために、ストロボスコープという特殊な検査を行う場合もあります。これらの方法により、がんの存在が疑われた場合(図8)には、確定診断のために組織を採取する必要があります。のどを十分に表面麻酔した上で、間接喉頭鏡で観察しながら鉗子で病変の一部を採取する方法、観察用よりもやや太い処置用喉頭ファイバースコープを用いて採取する方法があります。これらは、外来で可能ですが、咽頭反射(のどの観察中に「ゲーッ」となってしまう)が強い場合やより詳細な観察が必要と判断された場合には、入院の上、全身麻酔をかけて、喉頭直達鏡を用いた喉頭微細手術を行います。喉頭直達鏡は円筒形の金属の管で、これを口から声帯直上まで挿入し、顕微鏡を用いて喉頭を観察します。そして長い鉗子を用いて病変の一部を採取します。採取された組織は病理組織学的診断を行い、がんが確定します。咽頭がんの場合と同様に、病変の広がりや頸部リンパ節転移の診断のために、CTやMRIなどの画像診断、遠隔転移の有無の診断のためにガリウムシンチグラフィーやFDG?PETなどの核医学検査を用います。

(3)病期分類
 咽頭がんと同様にTNM分類に基づいた病期分類(?〜?期)を行います。声門がんでは、初期から症状が出る場合が多いため、?〜?期の早期がんが多く、声門上がんでは、早期に頸部リンパ節転移を認めることが多く?〜?期の進行がんが多い特徴があります。

(4)治療
 早期がん(?・?期)に対しては放射線治療が主体であり、進行がん(?・?期)に対しては手術治療が主体となります。喉頭がんに対する放射線治療は、外照射という体の外から放射線を当ててがんを治療する方法です。1日1回で、30〜35回放射線を照射します。のどの粘膜の炎症が起こるため、徐々に痛みが生じますが、通常は鎮痛剤を使用することにより対処可能です。治療後には痛みは消失しますが、のどの乾燥感が残る場合があります。また、声帯を切除しませんので、治療後もほぼ元通りの声が出せるようになります。抗がん剤を放射線治療と同時に使用する方法も行われており、治療後の再発率の低下が報告されています。不幸にして再発を来した場合には、従来は後述する進行がんの治療と同様の喉頭全摘出が施行されていましたが、近年では声帯をある程度まで残すことのできる喉頭部分切除術が行われることもあります。喉頭の進行がんでは、初診時にすでに、喉頭が、がんのために狭くなっていて、呼吸困難が起きていることも少なくありません。このような場合には、がんに対する直接の治療を開始する前に、空気の通り道をまず確保する必要があります。喉頭よりも下方の気管に孔をあける「気管切開術」が行われます。進行がんに対する根治的手術として「喉頭全摘出術」が行われます。この手術では、喉頭を構成している軟骨や筋肉をすべて摘出することになりますので、声帯を失うことになります。喉頭よりも下方で気管を直接頸部に開き、これを永久気管孔といいます。術後は、永久気管孔から呼吸することになり、食べ物の通路と呼吸の通路が分離されます。元の声はまったく出すことができなくなるため、身体障害者(音声・言語障害)3級が認定されます。しかし、代用音声を用いることによって会話できるようになります。喉頭全摘出後の代用音声には、食道発声法、人工喉頭(タピアの笛、電気喉頭)、気管咽頭瘻形成術などの種類があります。

(5)治療成績
 頭頸部がんの中でも、喉頭がんは比較的治りやすいがんとして知られています。群馬大学の成績では、15年間に治療した喉頭がん232例での5年生存率は85・0%でした。病期別では、?期93・6%、?期90・8%、?期85・7%、?期57・6%でした(表1)。早期に発見されることが多いため生存率が高いと考えられます。

終わりに
 咽頭がんは、従来から治りにくいがんとして知られていましたが、近年の治療法の進歩によって、治療成績が向上してきています。ただ、現在でもあまりに進行してしまった状態で発見されることが少なくありません。喉頭がんは、初期に発見されることが多く、治る可能性の非常に高いがんです。いずれのがんの場合にも、進行がんでは命を救うことができても、声や食事などに障害が残り「生活の質」の低下をきたしてしまいます。初期症状が出現した時に、耳鼻咽喉科医による適切な診断を受けることが重要です。

 群馬県内の耳鼻咽喉科については、日本耳鼻咽喉科学会群馬県地方部会のウェブ・ページを参照してください。 (http://med.wind.ne.jp/orlgunma/index.html)


健康通信倶楽部トップページへ戻る



△TOP



Copyright © Jomo Shimbun, Inc. All rights reserved.