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健康百科

すいみんのはなし
Dr. 須賀 群馬大学医学部附属病院 
呼吸器・アレルギー内科 須賀達夫

睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome:SAS「サス」)は、だいぶ知られた病気になりました。SASとはどのような病気でしょうか。「睡眠中に呼吸が止まり死んでしまう病気」でしょうか。無呼吸以外の症状を知っていますか。

ある朝の食卓にて
 「お父さん、いびきがうるさくてしょうがないよ。夕べみたいに酔っぱらって寝ると最悪だよ」

お母さん 「うるさいだけじゃなくて、とても苦しそうだったわよ。いびきが静かになったと思うと、息を止めてもがいているときもあるわ。もしかしたら、睡眠時無呼吸症候群じゃないの」

お父さん 「違うよ。睡眠時無呼吸症候群というのは、もっと太った人の病気だよ。お父さんは、お腹は少し出ているけれど、そんなに太っちゃいないよ。いびきをかくのは、鼻が悪いからで、学生のころからだよ。苦しくないから平気だよ」

図1 「のどの奥」は狭くなりやすい。いびきが起こり、無呼吸になる(左)。CPAP治療により空気が送られて狭くならず、無呼吸にならない。お母さん 「この間の健康診断で、血圧が高めで、コレステロールも高くて、糖尿病に注意って言われたわ。それに最近毎朝、疲れが取れない、眠った気がしないって言っているでしょう。なんだか心配だわ」

 「休みの日はいつも昼間からテレビをつけたまま寝ているわ。それでも疲れがとれないの。この前は、車を運転しながら居眠りしそうになったし」

お父さん 「疲れが取れないのは仕事が忙しいからだよ。働き盛りは仕方がないんだよ。同僚だってみんな同じさ。まだ45歳、そんな病気を心配する歳じゃないよ」 

 こうした会話、あなたの家では聞かれないでしょうか。毎日一生懸命働いているお父さんはいつも疲れている、というありがちな風景に思われます。

 しかしこの会話には、SASを疑う症状と診断の手掛かりがいくつもかくれています。いくつ指摘できるでしょうか。

図3 睡眠時無呼吸症候群を疑う手がかり。「疲れがなかなかとれない」などの症状も見逃せない。睡眠時無呼吸症候群の症状と診断の手掛かり
「呼吸が止まる悪いいびき」には要注意
 いびきは、吸った空気が舌や口蓋垂(のどちんこ)で囲まれた「のどの奥の狭い場所」を通るときに発生します(図1)。仰向けに寝ると重力の影響でさらに狭くなり、お酒でのどの筋肉の緊張がとけても狭くなります。そして「肥満」により「のどの奥」の周囲に脂肪がついても狭くなるのです。「うるさいだけのいびき」はともかく、「呼吸が止まる悪いいびき」は深刻で、SAS(閉塞型)はこのタイプに含まれます。

いびきが止まると「呼吸も止まり苦しそうにもがく」
 ご主人の無呼吸がとても苦しそうなので、奥さんが寝ずの番をしてその都度揺り起こしていたケースがあります。パルスオキシメーター(図2)で調べると、呼吸停止により「酸素飽和度」はしばしば80%以下になります。酸素飽和度は健康人で97%前後、患者に酸素吸入を勧める目安が90%です。息こらえが得意な人も、80%以下まで我慢することはまずできません。しかしSASでは、目が覚めている時には耐えられないほどの重い酸素不足が一晩中繰り返し起こります。

「昼間眠くなってしまう」、これが重要な手がかり
 「睡眠中に繰り返し起こる酸素不足」のため、睡眠の質は悪化します。眠ると無呼吸が起こり、苦しいため眠りが浅くなります。呼吸の再開で酸素不足は一時的に改善しますが、睡眠が始まるとまた無呼吸になるので、深く眠れません。こうして慢性的な睡眠不足のため昼間眠くなります。大事な会議中や運転中でも眠ってしまう人がいます。「SAS患者が交通事故を起こす危険は5〜7倍」といわれ、社会的にも大きな問題です。

図4 CPAP治療の実際。小型の機械が室内の空気を鼻マスクから送り込んで無呼吸を防ぐ。図1の右の図も参照高血圧症、糖尿病などを合併する
 「SASには、糖尿病、高血圧症、高脂血症(コレステロールが高い)、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳血管障害(脳卒中)などが多い」ことは重要です。いわゆる生活習慣病と密接な関係があります。「SASの治療で高血圧のコントロールや糖尿病の血糖コントロールが良くなった」などのケースがあります。

「高度な肥満とは限らない」「鼻が悪い」も危険
 肥満がSASのリスクとはいえ「高度な肥満の人ばかり」ではありません。「のどの奥」の形には遺伝的な個人差があり、「首が短い・あごが小さく引っ込んでいる」などが「のどの奥」が狭い人の特徴です。ですから「体重はそう多くない」「極端には太っていない」という人も安心できません。また「鼻の通りが悪い」「扁桃腺が腫れている」などもSASのリスクです。

「疲れが取れない」「目覚めたときに爽快感がない」これも重要な手掛かり
 SASの症状には、強いいびきと無呼吸、日中の眠気のほか、恐ろしい夢をみる、トイレが近い、起床時の頭痛・頭重感などがあります(図3)。「疲れが取れない」「目覚めたときに爽快感がない」という症状も、SASの症状の場合があります。

 日本には人口の1〜2%、約200万人のSAS患者がいると推測されています。決して他人事ではありません。

睡眠時無呼吸症候群の診断と治療
 ここまでの話から、「自分は(お父さんは)SASかもしれない」と心配になった方もいるでしょう。

 外来ではまず「パルスオキシメーター」で、睡眠中の「繰り返す酸素飽和度の低下」を調べます(図2)。SASが疑われると、入院して詳しい「ポリソムノグラフィー」検査を行います。

 治療はまず生活習慣を改善し、肥満があれば食事・運動療法により減量を図ります。高血圧症、糖尿病などの治療にもなります。無呼吸には「鼻マスク(Continuous positive airway pressure:CPAP〈シーパップ〉による補助呼吸療法」を行います(図2・4)。

 無呼吸が起きそうになると、器械が室内の空気(酸素ではない)を鼻マスクから送ります。すると空気の通り道が保たれ、無呼吸にはなりません。効果は劇的で「こんなによく眠ったのは久しぶりだ」などの感想が聞かれます。慣れるまで時間がかかる場合もありますが、継続によりSASのさまざまな合併症が改善されます。軽症のSASの場合は口腔内装置(マウスピース)を使用する方法もあります。

おわりに 
 今夜の食卓で、ご家族でSASのチェックをしてみましょう。お父さんのいびきは大丈夫でしょうか。


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